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コロナが生んだまさかの連続

少し前、妹がコロナになった。

「人生には上り坂・下り坂・まさかの3つの坂があります」という昔の結婚式のスピーチで使われるような表現があるが、本当にその言葉が当てはまる「まさか」な出来事だった(今は完治して後遺症もなく元気だ)。同居家族である私たちはPCR検査の結果が陰性だったものの、健康観察期間として突然の外出自粛2週間という地獄の日々を過ごした。

連日、NEWSでは東京で過去最高1日800人を超えて〜などと報道されているが、冷静に考えると東京の人口は約1300万人なので、それはたった1%にも満たない人数である。だからこそ誰しも自分が「まさか」なる訳がないと思っているし、その考えこそ感染拡大がおさまらない最大の理由だろう。もちろん妹もその考えの1人だったので、このご時世に大人数で旅行した故に感染してしまった。

毎日保健所から健康状態確認の電話がくるため、2週間一歩も家から出ずに過ごした。職場にも連絡、友人との予定も全キャンセル、検査結果が出るまでの家の中は不穏な空気が流れ、ストレスは募っていく一方だった。最後の方は慣れてきたものの考え事をする時間が増えたこともあり、ふと前から検討していた「ひとり暮らし」をするのは今かもしれないと感じた。

都会に実家があるため家賃補助も出ないこともあり、ここまで親に甘えまくって過ごしてきた私だったが、親から次にコロナになる可能性があるのはお前だと言われた時、これがタイミングというものではないかと思った。

私は1度決めた事はやり通さないと気が済まない性格かつ、気になった事はとことん調べ追求する性格だ。暇過ぎるくらい暇だった自粛中、秒ごとにSUUMOを見ていた私は自粛明けすぐに家を決めた。人生において決断する時はいつだって突然来るのかもしれない。とってもワクワクした。

本当は別に1件気になっていた物件があり、初家探しは自分の目で確かめるのが一番だと思っていたから入念な内見チェックリストまで作って張り切っていた。しかし実際は契約済みだったので諦めることになった。もう1件狙っていた所は入居中で内見できないのが唯一の欠点であった。散々リストまで作っていたのに、一早く家を出たかった私は結局リストなど全てかなぐり捨てて自分の直感で即決するという暴挙に出た。それが今の家だ。
我ながら「まさか」過ぎた。

契約から入居まで2週間もなかった。インスタを見まくって部屋の配色を考えたり、家具にもこだわりたいなどと思っていたらあっという間に入居の日を迎えた。自粛で街探しができなかったこともあって実家の隣の駅なので、親や友人に引っ越しを手伝ってもらいなんとか引っ越しが完了した。

ひとり暮らしが始まってやっと2週間経つ。まだ部屋は閑散としている。

自分なりに生活費のことを考えて決断した結果ではあるが、その計算は本当に甘かったと既に思った。予想以上に東京で1人の人間が生きていくのにはお金がかかる。恥ずかしながら私は、水道が2ヶ月に1度の請求であることすら知らなかった。

いつも家で使っていた物たちは親が買いに行ってくれたからそこにあるわけで、ご飯も洗濯物も自動的に出てくる物ではない。お腹空いたなーなんかないかなーと冷蔵庫を開けても、買い出しに行かない限りそこには冷たい空箱があるだけだ。仕事から帰っても家の中は寒いし、真っ暗だ。

という当たり前過ぎることをこの歳で初めて経験している。自分の無知加減にも絶望したし、今までどれほど好き勝手生活していたのか痛いくらい実感した。今までみたいに遊びに行けないかもしれないし、欲しいものをすぐに買えないかもしれない。こんな大変なことを若い時からやってきた皆さんには頭が上がりません。
心から尊敬します、本当にすごい。

実家が目と鼻の先にあるのにあえて高い家賃を払って1人で住む必要ある?家賃もったいなくない?とよく聞かれる。私だってそれくらいの事はもう何周も考えたし、未だにこれ意味あったのか〜ととてつもなく不安になる日もある。貯金した方が良かったのではないかと思う事もある。日割りにすると家賃だけで数千円/日かかると気付いた時は絶望した。

でも、何でもそうだけどやっぱりやらない後悔よりやった後悔だと思う。

現にやってみないと知らなかったことが数え切れないほどある。おかげで家族の温かさや人と会う楽しさを無茶苦茶感じた。大嫌いな会社もたまに出社する位が丁度いいかなとまで思った。今までの私はただ会社に勤めて働いていただけで自立のじの字も出来ていなかったのだ。

コロナをきっかけに始めたひとり暮らし、勢いで家を飛び出したものの正直、金銭面が不安で不安で堪らない。なんせ私は自分だけのひと月の光熱費も食費も知らないのだ。

私の親は本当に寛大で、無理になったら帰ってくればいいと言ってくれた。料理だって洗濯だって日々のお金のやりくりだってまだ始まったばかりだ。これを優しさと取るか甘えと取るかは人によると思うが、とりあえずできる所まで自分で頑張りたいと思う。

けど、意地を張って生活できなくなっては意味がないので、いざという時はプライドと恥を捨てて実家に帰る事になるだろう。
「まさか」もう帰ることになるなんて、と思う日が来るのはいつになるか。

考える暇があるなら、とりあえず晩御飯を作ろう。

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