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人類誕生の歴史 #2 ~化石人類の系譜~

第一回の記事ではヒトを含めた大型類人猿の進化の系統樹を紹介しました。人類とチンパンジーが袂を分かったのは約700万年前。今回はその共通祖先から現在のヒト・チンパンジーへと分岐していく系譜を概観していきます(分量が多いので次回もこのテーマの予定です)。
まぁ手紙でも残しておいてくれたらラクなんですけど、文字もなければ文明もない時代なので手がかりは化石だけになります。死んだら骨だけしか残りませんからね。。今回は、ヒト属きっての好奇心旺盛な暇人である人類学者の皆さんの研究成果を紹介します。

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人類の祖先と考えられる#万年前の人骨が発見されました。

こんなニュースたまに見かけますよね。だいたい、へ~ってタイトルだけ見て終わりなんですけど、今回はこれを真面目にとりあげます。何より気になるのは、なんで人骨だっていえるんだろう?という所です。だって名前とか書いてないじゃないですか!全身がミイラ化されて残っていたなら、どうみても人の骨ですけど、数百万年前の化石なんて今にも風化しそうなカケラですよね。石ころと区別つかないですよ私。いや目の前に落ちていても見つけられない自信があります!だから、本当に人類の骨の一部だったとしても、どうやって見分けるんだろう?って思いました。
年代推定の方法はなんとなく分かりますが、それでも我々が考えるよりは大変らしいです。基本的には、見つかった化石標本からではなく、見つかった化石の地層年代を調べるそうです(そのほうが確実らしい)。本当にその時代のものなのか流されてそこに留まっただけなのかを区別する必要があったりとこれまた苦労がたえないようです。
閑話休題。
鳥の骨でも、馬の骨でもなく、人類とチンパンジーの間の骨である!という確証はどこにあるのでしょうか?
見聞色の覇気使いだ!とか言われても困るじゃないですか・・
大学の授業でも受けていれば言葉の定義のような説明があるのでしょうが、私は人類学も考古学の授業もとらずにおっちゃんになってしまったので自助努力が必要なんです(悲しい・・いや大学行ってたんですけどね・・)。
メールで問い合わせようかとも考えましたが、とりあえず調べたことをまとめます(間違ってたらどなたか訂正お願いします)。
色々調べていたら、
太田博樹 (著) 『遺伝人類学入門』ちくま新書 (2018年)
の中に、その答えらしきものが見えたので以下まとめ。そんなこと書いてね~よってお叱りがあるとちょっとツライですが。。少し話は変わりますが、すぐに戻ってきます。

人類は猿人→原人→旧人→新人というプロセスで進化したというのは間違い。

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この辺の常識はすでに皆さんもご承知かとは思いますが、違うんだったら実際はどうなってんだよ!ってなりますよね。税金で飯食ってる研究者は働いてんだろうな~っていう怖い台詞が聞こえてきそうですが、彼らの結果が下の図になります(Bernard W. Nature (2002)から改変)。

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わかんねーよ!って怒られそうですが説明します。
それぞれの四角形は、どこかの場所で見つかった化石の結果です。縦軸が推定された年代で下にいくほど古い時代になります。左上には現生人類であるヒトが、右上には現生チンパンジーが配置されています。だから左よりの化石はヒトに近く、右よりの化石はチンパンジーに近いことを意味します。右下の三点はおいといて、それ以外を見たら400-200万年前ごろには様々な種が混在していた情景が浮かびますよね(実際に出会うことはほとんどなかったでしょうが・・)。さらに中間型からヒトやチンパンジーへと進化していく様子も見て取れると思います。
問題は横軸の定義です。
ヒト寄りとかチンパンジー寄りとかはどうやって決まっているんだろう?というのが、先ほどの疑問に対する答えになりうると考えました。彼らが使っている指標は、脳の容量歯(とくに犬歯)の大きさ、そして二足歩行が可能かどうかです。それをまとめたのが次の図。上と同じですが、こちらがオリジナルの図により近いものになっております。オリジナルにはそれぞれの四角形に対応する種の名前が記入されてます。

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色分けするとヒトとチンパンジーの間の特徴を持っている赤のグループからヒト、チンパンジーの特徴をもつグループへと年代を重ねるごとに進化していく様がわかるのではないでしょうか。

なんで人骨だっていえるんだろう?
という疑問に戻ります。そうなんです!人類学者の頭の中にはヒトの特徴が先にあり、その特徴を持っている化石をヒトの人骨とみなしていたんです。だから、小さいカケラとかは化石かもしれんがヒトかどうかわからんから却下されたり、特徴的な部位の化石ではないから決定打とはいいがたいなどとなってしまうわけです(この辺の職人芸に関する話はジャワ原人とかの話題でまた触れる予定です)。ヒトの特徴も、始めは脳の容量が重要だと考えられていたのですが、色々と発見が進むにつれ、どうも大事なのは直立二足歩行と犬歯の発達だと考え方が変わっていったそうです(脳の容量だけで同じようなグラフを作ると年代を経るごとに脳の容量が増えていく、とはならない)。

えっ、ご都合主義の出来レースですか!?って衝撃を受けました。もちろん科学の目標は、少ない原理原則で多数の事象を説明すること(オッカムの剃刀)なんで、仮設が恣意的なのは仕方ないんですけど、ちょっと違和感がありました。

おまけ

ここで引用した図は、今までで一番古い人類の化石が見つかったョ!という2002年のNature(最も権威のある科学雑誌のひとつ)に発表された論文のニュース記事から引用しています。論文の内容が右下にある三点の外れ値のひとつになります。ほぼ20年前!きっと、この図も改変されてより分かりやすい状況になっているとは思いますが、その辺はおいおい調べる予定です。まずは基礎固めから。

まとめ

猿人→原人→旧人→新人というプロセスで人類が進化したという考え方は間違いです。実際は、ヒトとチンパンジーの中間的な特徴を示すグループが数百万年前に複数存在し、それらが異なる進化をとげていくことで現生人類とチンパンジーに到達したというのが事実になります。

予告

次回はこの最古の人類の特徴を整理する記事を書こうと考えております。
化石人類の発見の歴史について知りたい方は、以下のアメリカ自然史博物館によるYoutubeをご覧下さい(6分ほど)。これより出来のいいのは私ごときでは作れません。英語サイトですが喋って解説するというよりは図で示すタイプのやつなので分かりやすい(はず・・)。英語がわからなくても絵で説明してるから何とかなる・・?んじゃないかしら。まぁ英語できたほうがいいですけど。。日本語のサイトは?って言われそうですけど、私も日本語が母国語だし英語はクソみたいなレベルだからそのほうがいいんですけど、なんかあんまりいい解説動画を探せませんでした。私も文字じゃなくこういう動画で説明したいですが、技術的にも投資できる時間を考えてもムリです。


参考資料

(1)  Escher. Metamorphosis
(2) 太田博樹 (著) 『遺伝人類学入門』ちくま新書 (2018年)
(3) Bernard W. Nature 418, 133-135 (2002)
(4) American Museum of Natural History.
(5) 尾田栄一郎 (著)『ワンピース』(1997年ー連載中)

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