詩「雲は泣く鳴く」 2018 5 16
長男が友達に石を投げた
前から公園で仲間外れにされていただけでなく年下からもバカにもされていた
今日もそんな感じで腹が立って石をなげたらしい
そうしたらその年下の子に石があたった
一応友達だ
妻からその話を聞いた
長男を連れてスーツを着て謝りにいった
相手方の玄関を開けたら下が血まみれで
お母さんが出てきて「全然大丈夫ですよ」って
「全然大丈夫ですよ」って
そして「うちの子がいつもひどいことを言っていてごめんなさい」って
相手の子をみたら頭にガーゼをはってTシャツが見事に血まみれで
相手のお母さんが「全然大丈夫ですよ」って
長男はごめんなさいって言えなかった
俺は長男に何も言えなかった
このお母さんは前から息子が俺の長男をバカにしていたのを知っていたに違いない
ひたすらに頭をさげた
お互いに
俺は身長が高いしスポーツもできた
だから次男がこんなに小さく育つなんて思いもしなかった
こんなに運動オンチだとは思いもしなかった
キャッチボールしてもボールがどこかにとんでいく
決定的に打てない
たまたまさっきの公園でお友達と一緒にサッカーをした
俺も珍しくそこにいた
新しいサッカーボールを買った日
俺も長男も次男も喜んで思いきり公園に走っていった
それをみかけた近所の子が集まってきてみんなでサッカーになった
どの子も体が大きくて
次男なんてけちょんけちょんで
そうしたら次男が泣くんだよ
新しい僕のボールに僕は触れないって
相手はちゃんとサッカーをプレーしている
その公園の誰一人として悪い奴はいない
俺は次男に何も言えなかった
うっすら聞いてはいた
妻は中学校のとき壮絶ないじめにあっていた
それでもかたくなに自分を変えずに変えるすべを知らずにいじめられたまま学校に通った
妻は美しい
普段は話し方も落ち着いている
そして「いじめ」や「バカにされる」というような言葉にヒステリックになる
息子たちが絶対にいじめられないように
祈り豊かに見守ればいいものの
少しでも息子がけなされた話を聞くと相手の家にクレームの電話をする
まずまずのもめごとになる
そして息子たちは友達を失っていく
息子たちは人生を考えるチャンスを失っていく
俺は妻に何も言えなかった
妻は一方的にゆがめる
愛という名のもとに
雲が泣く鳴く空の中
雲が泣く鳴く空の中
独りぼっちな雲もいる
くるくる回る雲もいる
低く高く
薄く厚く
雲は泣く鳴く空を行く
雲は泣く鳴く空を行く
雲は無理せずそこにいる
雲はさだめを知っている
姿をかえ
形をかえ
俺といえば好きなようにやってきた
欲しいものは全て手に入れるために強引にやってきた
それが正しいと思っていたし当たり前だと思っていた
仲間外れになったことはある
でもそれは俺のやりすぎで人が離れていっただけのことで
そのやりすぎにはそこそこ自分で気づくことができた
制裁を受けるところではしっかりそれをかみしめてきた
交友関係は良好だと自分では思っている
という言い訳で
長男や次男や妻のことを俺はなんとなくわかっていたのだけれど
そこには触れないようになんだかタブーというか
いやそんなことじゃない
俺はカッコーの群れの中
自分がトンビだと勘違いしていただけだ
そして家族を捨てた俺にかける言葉なんてない
雲が泣く鳴く空の中
雲が泣く鳴く空の中
独りぼっちな雲もいる
くるくる回る雲もいる
低く高く
薄く厚く
雲は泣く鳴く空を行く
雲は泣く鳴く空を行く
雲は無理せずそこにいる
雲はさだめを知っている
姿をかえ
形をかえ
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最後まで読んでいただきありがとうございます。あなたに会えて幸せです。
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