往復書簡#1「不本意な始まり」 俳優 A→ウトユウマ


秋の夜長に知り合いから
いきなり往復書簡を     
やらないかと連絡が来た。

そもそも往復書簡という
言葉にあまりピンと来ず
やるもやらないも返事に困った。

とりあえず分からないが

やる。と返答した。

そして往復書簡たるものを調べてみる。


テーマによる、多数の書簡(手紙)を収録、編集して、書籍にまとめたもの。特に、特定の2人の人物の間でやり取りされた書簡を収録する場合には、往復書簡集という。

こういうことらしい。

なぜ知り合いが「往復書簡」というものに
取り憑かれてるのかが分からないが

交換日記みたいことがしたいのかな。

だがその知り合いは男だし
秘密を打ち明けるような会話は
既にしているので
隠すことも何も無い。
後は裸を見ること位であろうか。

全く関係無いのだが

交換日記って昔してたなぁ。

小学生の頃に。

クラスメイトの女子3人と男子僕1人の
計4人で。

「誰々が今日誰々と話してて
多分あそこは好き同士っぽい感じがしました!」

みたいなスパイ的な要素を持った
4人がひたすらに人と人との繋がりを
報告する。全く面白味もないやり取り。

そのやり取りはいつの間にか終わっていた。

今回もそんな気がする。

誰かと何かをすることが僕は
あまり好きじゃない。

こういう事しようって言ってる人から
勝手に燃え尽きて辞めるから。

だから最初は真剣に向き合って来たけれど
いつからか僕は共同でやることに
テキトーに向き合うようになった。

いま少し腹が立ってる。

やろうと。連絡して来た知り合いから
最初のターンは君ね!

みたいなテンションでメールが来た。

ふざけるな。
お前がやりたいって言ったんだろ。
俺はやりたいなんて一言も発していない。

こんな言葉のやり取りになんの意味があるのか。

さらにそいつは。

お前からの方が面白くなる気がするんだ!
なんて調子良いこと言ってくる。

さらにさらに追い討ちに

1000文字目安で!

ふざけるな。

なぜ1000文字の文を週2回も
考えてあんたと交換日記を
しなきゃいけないんだ。

溜まったもんじゃない。

なぜこんなにも僕は今
憤っているのか…

起こされたからだ。

寝てて起こされて
このメールが来て
腹が立ったから
その勢いに任せて
1000文字書いてやろう。
ってノリで携帯のメモでガムシャラに
親指を動かしている。
あ、1000文字越えたみたい。

なるほど。
1000文字の壁はさほど難しくは
ないのだな。

ただ今は相手の
ターンを伺うしかないだろう。


なぜなら先手だから
後手の様子を伺うのは
当然である。

言い出しっぺが
どれほどの物を返してくるのかで
僕の次の一手は決まる。

僕はこういう人間だ。
攻めない。
いや攻められないのか。
よく言えば俯瞰して様子を
伺っているのだ。

まぁしかし

この先どうなることやら。
「往復書簡」っぽいなぁ…

なんてしみじみ一杯やりながら
呟く日が来るのだろうか。
考えてみるだけで恥ずかしい。

ターンエンド。

追伸 あの頃やっていた交換日記
   僕は多分好きだった。
   こそこそやるのって
   なんかワクワクするもんなぁ。

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