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近未来の管理会社を考える(その6)

 今回のシリーズでは、「DX」により大きく変革を遂げるであろうと思われる「近未来の管理会社」「近未来の委託管理」の姿を「AI」・「ブロックチェーン」・「メタバース」といった技術を題材に考えたいと思います。

 今後の(通信を含めた)技術革新が進めば、近い将来に私たちの日常に入ってくる可能性が高いのでは?と思います。
 これらの技術が管理委託の中に取り入れられると・・・どんなマンションライフになっていくのか?考えて行きましょう!

 前回解説した「NFT」や「ブロックチェーン」の技術をマンション管理運営に生かすとどうなるのか?マンション管理運営に活用できないか?(もしかしたら、それって夢想?)みたいなことになるかもしれませんが・・・お話したいと思っています。

 でもその前に・・・今回は、多くのマンション管理組合が資料を紙媒体で保管していること(=「NFT」や「ブロックチェーン」のアーリーアダプターの若者からすると、原始人の世界かも?(笑))について、「保管」の意味と共に考えたいと思います。

前回の記事は、こちら!   
 「近未来の管理委託を考える(その1)
 「近未来の管理委託を考える(その2)
 「近未来の管理委託を考える(その3)
 「近未来の管理会社を考える(その4)
 「近未来の管理会社を考える(その5)

「電磁的方法」を考える

「電磁的方法」って?

 国土交通省の「標準管理規約」では、管理組合が保管すべき資料を紙ベースではなく電子データで保存することを「電磁的方法」と表現しています。

 ちょっと古臭い(イケてない)表現ですが・・・国土交通省に敬意を表してタイトルに「電磁的」という表現を使わせていただきました。(笑)

電磁的方法 (標準管理規約(定義) 第2条 第十号)
 電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次に定めるものをいう。
(1) 送信者の使用に係る電子計算機と受信者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法であって、当該電気通信回線を通じて情報が送信され、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報が記録されるもの
(2) 磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに情報を記録したもの以下「電磁的記録」という。)を交付する方法

標準管理規約(単棟型)及び同コメント (PDF)(最終改正 令和3年6月22日 国住マ第33号)

マンション管理組合の保管資料には

 例えば、管理規約&細則関連・契約関連・総会&理事会関連・建築図書関連・名簿関連・会計関連・保守点検関連・修繕工事&履歴関連・・・等々、多岐に渡ります。(結構な分量です)

 当たり前ですが・・・保管資料は年数に比例して増えていきます。
 仮に1年間の保存資料の幅が50cm(=たぶん平均以下)だとしても・・・10年で5m、30年で15m分の保管場所が必要になります。

 保管された資料を活用することは希だけど、保管資料を捨てる訳にはいきません。(この置場に苦労されている管理員さん・・・多いです(笑))
 仕方なく、管理員室の吊戸棚とか、集会室の押し入れとか、エレベーター機械室の中とか・・・色々なニッチな場所(笑)に資料が詰め込まれた光景を目にすることが良くあります。

そもそも「保管」とは?

 「保管」とは「管理(コントロール)された保存」を意味します。
 簡単に言えば・・・「単に保存するだけでなく、確認したい時に容易に確認できる・閲覧できる」ということです。
 マンション管理組合では、これがナカナカできていませんね・・・

 ここで、ある管理組合の理事会に先日参加した時の実話をご紹介します。
 それは・・・バルコニーの使用方法に関し居住者から届いたクレームに対して審議が行われた時の話です。
 「そのルールは確か10年位前の総会で決議されてたはず」とか「そんなルールあったっけ?」みたいな会話が飛び交い・・・話が前に進みませんでした。結局、次回の理事会まで(に確認することにして)持ち越し(=結論を1ヵ月先延ばしに)することになりました。
 この時、管理組合資料が適正に保管されていたら・・・その場で総会資料等を確認できたので、持ち越しにはならなかったはずです。

 ただでさえ審議事項の多い理事会の効率が悪くなる(時間が長くなる)だけでなく、クレームをされた方も(理事会からの対応や回答が2ヵ月以上遅れるので)何も改善しないことにヤキモキされ・・・「管理組合は何もしてくれない!頼りにならない!こんな理事会には協力できんわ!」みたいな誤解をされるかもしれません。

私の「電磁的方法」保管事例

 以前にもお話しましたが・・・管理会社は(「マンション管理適正化法」という法律で)マンション管理組合(=理事長)に対して毎月の業務報告を翌月末日までに行わなければなりません。これを「月次報告」と言います。

 でも・・・この「月次報告」は、理事役員さんにとって見慣れない書類です。難解な部分やとっつきにくい記載もあるので、精読する理事長は皆無だと思います。
 なので役員で回覧してもハンコ押すだけ、誰も封を開けずに管理員室の吊戸棚へ!(笑)・・・みたいな管理組合も多いのでは?と思います。

 私が理事会をサポートしているマンション管理組合の多くでは、管理会社から「月次報告」のPDF(電子)データをメールで送ってもらいます。毎月開催の理事会に「月次報告」のトピックをまとめたレポートを提出&報告するためです。
 なお毎月管理会社から送ってもらう資料には、会計報告だけでなく、各種の点検報告書や小修繕工事の完了報告書等々もあります。
 私はこれらの資料を・・・全てアーカイブしています。
 ・・・やっぱり、「電磁的方法」って表現するより「アーカイブ」の方がしっくりくるわ~(笑) 

アーカイブとは?
保存記録や公文書という意味をもつ英単語ですが、コンピュータ分野におけるアーカイブは、消してはいけないデータを長期保存するために、専用の保存領域に「安全にデータを保存すること」をいいます。

I D C Frontier 用語集|アーカイブより引用

 そして、スマホ等から、ネットに繋がれば(いつでもどこでも)閲覧できるようにしています。(私は自宅のサーバーを使っていますが、クラウドサービスを利用すれば誰でも簡単にできます)

アーカイブ資料の保管活用法

 理事会のサポート業務が長くなると・・・アーカイブデータがどんどん蓄積されていきます。そうすると管理運営上有意義なことが生じてきます。

 例えば、1年に1回実施される排水管清掃が翌月に実施されるとすると・・・アーカイブデータを確認して、「前回未実施住戸」とか「○年連続未実施住戸」なんかをあぶりだすことが容易にできます。
 あぶりだしができると・・・理事会で「該当住戸には管理員にお願いして念押しのチラシを入れてもらおう」みたいに話し合うことも可能ですし、実施後も「前回より未実施戸数が減った!増えた!」みたいな確認も簡単にできます。

 私が送ってもらう資料は、管理組合が保管すべき資料のごく一部に過ぎませんが・・・それだけでも、かなり有効だと実感できています。

 もし仮に、全ての資料をアーカイブできたら・・・「(年度毎にメンバーが変わる)理事会が同じミスを繰り返さない」ための強い武器になるのでは?と思います。
 アーカイブ内で「キーワード検索」や「タグ機能」を活用できると、最強でしょう。(私の場合は、管理会社から送ってもらうPDFなので、できない場合が多く・・・残念)

こんなに便利なのに・・・

 標準管理規約に「電磁的」という言葉が(オプションとして)登場したのは10年以上前になると思いますが、マンション管理組合に「電磁的方法」は普及しているようには思えません。
 私の事例のとおり、とても有効で便利なのに・・・多くのマンション管理組合では、旧態然の紙ベースから脱皮できていないと思います。

 その原因には、マンション管理組合の役員の中に「電磁的方法」の技術に対して馴染めない「レイトマジョリティ」や「レガード」の方が多いこともあると思いますが・・・

電子データの信ぴょう性

 私は、「電磁的方法」の信ぴょう性に課題があると考えている人が多いから?という側面があると思います。
 個人的には、こちらの課題の方が大きい要因と感じています。
 紙の場合は、記名押印等によって、筆跡や印影によって「これがオリジナル!」と主張することができますが・・・電子データの場合は、それがとても難しいようです。(権利関係において、もっとも厳密な文書管理をしてくれている法的機関1つに「法務局」がありますが・・・電子データの場合、そんな法的機関はありませんよね)

それは何故か?・・・答えは簡単!

 電子データは、オリジナルと全く同じコピーをいくらでも作成できるので・・・「これがオリジナル!」と主張することが難しいのです。
 例えば「電磁的方法」で保管しようとしているマンション管理組合でも・・・結局は、その横に紙ベースの議事録がファイルされているようです。

 マンション管理組合の保管資料とはいえ・・・「信ぴょう性」を担保しようとすると、結局は「やっぱり最後は紙でないと無理!やっぱり紙が安全!」となるのでは?と思います。

ここで登場「NFT」!

 「NFT」技術を応用すると、オリジナル性が担保されるはずです。電子データの安全性や信頼性は(法務局レベルくらいまで)向上するでしょう。

 次回は、マンション管理組合の保管資料を「NFT」技術を使うとどうなるのか?(資料保管だけでなく、総会の議決権行使等についても)妄想したいと思います。(笑)  (つづく)

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