劣等感で苦しくなる。劣等感で強くなる。

Nakasoneは劣等感が強い。
隣どころか世の中の芝は大概、青く見える。
自分自身の不器用さや、能力がない事に強い劣等感を抱く。
勉強も苦手だったし、実技系も下から数えた方が圧倒的に早い。
足も遅ければ絵も下手である。

そのくせ口が悪いので青い芝生を羨んでdisりまくる。
性格も悪い残念仕様。

しかし、羨むだけでは何にもならない事を分かっているNakasoneは、「なんとかならんか。」と、いろいろな事に手を出す。
一通り興味のある事には手を出してきた。
写真も、映像も、音楽ソフトも、3Dプリンターも〝少しだけ〟さわれる。
「Nakasoneって割と器用な方じゃん」と、よく言われたりするが、違うのよ。
それっぽく見せてるだけなのよ。
ごまかして繕うのに全力を出してるだけなのよ。

学生時代、モノづくり系を学んでいたNakasoneは、世の中の優秀な人たちの本やインタビューを割と読む方だったように思う。
その度に「高い山やなぁ」とつぶやいた。
学内でも隣を見れば、よくできる同期がいた。
「くやしい。何もできないのが悔しい。できるだけの、できる事をやるしかない」
そう考えたNakasoneは、とにかく目の前に出された課題を提出日まで向き合う事を続けた。
1週間くらいの納期1課題につきスケッチブックを1冊以上埋めようと決め、考えて考えて、向き合った。

そうしていると
「お前、いつも実習室にいるなぁ」
と言われれるようになり、そのうち「実習室の地縛霊」と呼ばれるようになっていった。
その呼び名については、面白がってくれていたのかどうかは分からないけれど、Nakasoneはできる限り向き合った。

「悔しいけど、何の力もないんだよ私は」
Nakasoneはコーラを飲みながらポツリとつぶやく。

ある頃から自主制作映画を作り始めたNakasoneは、自分が思っていた以上に自分の作品の完成度が低い事を実感した。
映画祭に落ち続けていたのも分かりやすい判断材料になった。
しかし、それでも続けている。

「Nakasoneってなんで自主制作映画ずっと続けているの?」
「いやー、なんか自分自身で許せないんですよね、こんなに出来の悪いの作っちゃう自分が」
「なんだそれ」
「なんか、できない自分自身を見返してやりたいんですよね。もしかしたら自信がねぇだけかもしれんのですが」
「え、じゃあ今のところ1番自信のある作品てどんなの?」
「映画祭で受賞したのもあるけど…うーん、次回作かな」
「なんだそれ」
「次よ。次こそみんなをビビらしたるわ」

Nakasoneの創ってきた自主制作映画の実感として。
昔より技術は上がったように感じる。
話も多少おもしろくなったと思っている。
映画祭の審査も昔に比べたら通るようになってきた。
結局のところ、続けてきたから〝多少〟できるようになってきたのだと思う。

「続けられるのって最強の素質よな。あと素直なのも。」
Nakasoneは喫茶店で知人にそう語った。

Nakasoneは自分が忍耐強くて素直だとは思っていない。
世の中にはもっとスゴい人が沢山いらっしゃる。

でも、だから続ける。
勝とうとは思わない。
逃げようとも思わない。
でも、続ける。
そこには今のNakasoneが過去のNakasoneを見返したい想いがあるのだろう。
他人を見下し続ければ、自分はそれ以上に見下される。
どんどん自分が残念になっていく事に気がついていなかった。

劣等感が強いから、劣等感に潰されそうになりながら、劣等感で続ける。
劣等感と仲良くなって「自分は何やってもダメなんだよね〜」とはなりたくない。
劣等感を含めて自分自身なのだ。
自分で自分を甘やかした所で、喜ぶのは世の中でNakasoneしかいない。

でもそんなの、つまらないじゃない。
誰かに伝えたいから、誰かを喜ばせたいから、誰かを驚かせたいから続けるんじゃん。
最近のNakasoneは、そう語る。

劣等感を持ちながら、劣等感を寄せ付けないように、劣等感に潰されないように。
Nakasoneはアイスコーヒを飲みながら、そんな事を思うのだった。

ではまた。

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