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わたしの本棚36夜~「掃除婦のための手引書」

関西現代俳句協会のホームぺージのエッセイ(2020年2月)に書いた文章を本の紹介部分だけ、加筆・訂正したものです。

 毎年、12月、自分への1年のプレゼントとして、本屋さんで本を買うことにしています。日頃は、図書館で借りたり、手軽にアマゾンで買ったりするのだけれど、師走のはじめ、本屋さんで、その年の数冊を選びます。
 この習慣は、知人の元北新地のママさんから、年の瀬に、祇園に着物や小物を自分自身への褒美として買いに行くという話を聞いて、いいなあ、と思い、わたしも5年前から始めました。彼女に比べると、ずいぶん安上がりの女だけれど、街の大きな本屋さんで買っておいた本を、綺麗に包装されたのを紐解き、冬休みに読むのは、わくわくと楽しい。今年の1冊は、ルシア・ベルリン著・岸本佐知子訳の『掃除婦のための手引書』にしました。

☆「掃除婦のための手引書」 ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳    (講談社) 2420円(税込み)

2004年に68歳で亡くなったルシア・ベルリンは、生涯76の短編を書きました。生前は無名のアメリカの作家だ。彼女の小説は、ほぼ全てが実人生に材をとっています。3度の結婚離婚をして、4人の子どもをシングルマザーとして育て、アルコール中毒と闘いながら、掃除婦、学校教師、刑務所の講師、電話交換手、ERの看護師として働いて、生きました。
 本著は、24編の短編を納めています。アラスカで鉱山師だった父親のもとで生まれ、アルコール依存症の母親とチリ、メキシコに渡り、アメリカ各地で暮らした経験を土台にした小説は、彼女の行動力や物事の感じ方、台詞が破天荒で情熱的で面白いです。

 人生は理不尽なことが多い。辛いことがあったり、思うようにいかなかったり、意地悪な人がいたりする一方、優しい助けがあったり、サプライズがあったりもする。ひとかけらの希望は案外、近くに落ちている。だから、人生は捨てたものじゃないよ、と読み終わったとき、気づかせてくれるような本でした。

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