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「少年の君」を観て

 香港出身のデレク・ツァン監督作品です。香港・中国合作となっています。冒頭と最後に、中国当局をたたえたような道徳的な字幕が入って、格差社会、受験戦争、いじめ問題を取り扱った社会派映画となっていますが、一方で、まぎれもない純愛で、ラブ・ストーリーとしても秀逸な作品でした。(画像は、eiga.comさんより借りました)

1.主要な登場人物

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☆主人公・チェン・ニェン(チョウ・ドンユィ)

地方都市の進学高校に通い、北京大学を目指しています。母子家庭であり、母親は出稼ぎにいき、化粧品を売っていますが、いかさま商品であり、客からのクレームや借金取りにあう底辺の生活。彼女自身、後半で、「ここからこの生活から抜け出したいだけだ」と刑事に叫ぶ場面があります。格差社会において、生活をかえられるのは学歴だけだと、猛勉強する内向的な性格の少女。いじめられていた級友の死をきっかけに、遺体に服をかけたこと、刑事の質問に答えたことからいじめられる展開になります。

演じたチヨウ・ドンユイは、チャン・イーモウ監督作品でデビューした女優さんで、「13憶の妹」と形容されるほど、童顔で可愛らしい方でした。撮影当時26歳だったそうですが、高校の制服姿が愛らしかったです。日本でいえば、永作博美さんや加護愛さんを彷彿させる女優さんでした。内向的な繊細な表情が上手くて、助けてあげたくなりました。

☆シャオペイ(イー・ヤンチェンシー)

恋人ができた母親に捨てられ、社会の底辺で生きているチンピラのシャオペイ。イケメンだとまわりから言われてますが、ストリートチルドレンとしての生き方しか知らず、殴られていたところを、たまたま通りかかったチエン・ニエンが通報してくれたことから、淡い交際が始まり、やがて、献身的に愛する展開になります。「痛くない」と喧嘩の傷を気遣ってくれたチエン・ニエンの言葉に、「そんなこと言われたことがない」と孤独だったことを打ち明ける少年でした。

演じたイー・ヤンチエンシーは、中国の人気アイドルグループの一人で映画初主演とのこと。喧嘩シーンが多く、満身創痍になりながらも熱演でした。


2.感想と願い

今月、最も感動した作品です。わたしのなかでは傑作です。香港出身の監督で、格差社会の不条理を上手く書いています。ただ、中国との合作の手前か、最初と最後に説明的な見解が入ります。中国政府の指導でいじめはなくなった・・・などと。
 とにかく主役を演じたチエン・ニエン役(チュウ・ドウイ)とシャオペイ役(イー・ヤンチュンシー)の二人が素晴らしかったです。格差社会、受験地獄、いじめなどの問題を扱っている社会派映画と思いきや、まごうことなく、純愛です。無償の愛に心震えます。「金もない。頭もない。ぼくに何もないけれど、好きな子がいる」というシャオペイのセリフに号泣です。
 どうか、香港の映画人の方々、中国に統治が変わっても、こういった作品は世界に発信してほしいです。そして、それを評価できる世界であってほしいと願っています。

3、小さな映画館

 シネリーブル梅田で観ましたが、小さなコルクボードに、コロナ禍で大変な中での上映への応援メッセージが観客によって書かれてました。大阪は緊急事態宣言が出され、また、上映時間が短縮されるようですが、大変な経営のなか、がんばってほしいです。ミニシアター好きなわたしは、ここで上映された映画にたくさん元気を頂いてきました。併設される地下のレストランの数店舗が閉店になり、ダイコク薬局も閉店になりました。冬にはドイツクリスマス市場なども催され、中庭の緑、隣接するホテル、屋上の空中庭園・・。小さな映画館ですが、わたしの好きな場所です。

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