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わたしの本棚113夜~「ゴッホのあしあと」

 ゴッホと林忠正を描いた、原田マハさんのベストセラー小説「たゆたえども沈まず」の副読本!と帯にあります。この本は、小説ではなく、ゴッホの伝記部分と「たゆたえども沈ます」創作の過程での原田マハさんが感じた疑問、苦労したところなどを書いています。ゴッホのあしあとをたどる旅として、彼に関連した場所を原田さんが旅し、その印象も書いています。最大の謎であるゴッホの死について、原田さんの見解は自殺であろうとのことです。文庫本値段は令和2年初版のものです。

☆「ゴッホのあしあと」原田マハ著 幻冬舎文庫 500円+税

 ゴッホは謎の多い画家です。「狂気と情熱の画家」と形容されますが、はたしてそうだろうか、と。「耳切り事件」、癇癪もちが、狂人説に拍車をかけ、精神病院へ収容されてしまいますが、原田さんは、事実をきちんと分析していきながら、努力家で淋しがりやであったけれど、異常はなかったと。衝撃的なのは、ゴッホの死について、「最後に自分の勇気をためした」というのが原田さんの結論だそうです。弟テオを自由にするために自分はどこまでできるか。ゴッホは死にたくなかったかもしれません(P111)この文章を読んだとき、胸が痛みました。弟にこれ以上迷惑かけれないと自分の死をもって、弟を開放したという考え。なんと繊細な神経だったのでしょう。

2016年、アメリカで「ファン・ゴッホの生涯」という評伝が出版され、新説の「ゴッホ他殺説」は全世界に衝撃を与えました。筆者のステイ―ヴン・ネイフ、グレゴリー・ホワイト・スミスのコンビはピユ―リッツア賞を受賞しました。

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2017年10月に日本で公開されたドロタ・コビエラ、ヒュー・ウルチアン監督の「ゴッホ最後の手紙」は油絵を使ったアニメーション作品で、わたしも公開時に観ましたが、ゴッホは他殺でした。

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2019年10月に日本で公開されたジュリアン・シュナ―ベル監督の「永遠の門、ゴッホの見た未来」も、公開時に観ましたが、この映画でもゴッホの死は他殺です。

「たゆたえども沈ます」から「リボルバー」へ。ゴッホの謎多い生涯を描く原田マハさんの小説はどれも面白くて好きです。そして、小説を書く上で基本となる、事実としてのゴッホの歩みを書いたこの本は、小説を読んでいく指針にもなりました。小説のこの部分はフィクションなんだな、とわかります。最終章(五章)での、ゴッホに関する場所をめぐる旅の紀行文は、読んでいて、いつか訪れたくなりました。圧倒的な美術の知識と取材と、そして、ゴッホへの愛を感じる原田さんの小説、その副読本であるこの本、わたしが好きな一冊です。

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