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御岳山(奥多摩) △登山の魅力△(0028)

山頂の武蔵御嶽神社はオオカミ信仰と結びつき、最近では犬連れの愛犬家登山者も増えています。東京・奥多摩の前衛の山。
(本記事/ 文字数:約6200字、読了:約12分)


<概要>

山岳名: 御岳山(みたけさん)
所在地: 東京都青梅市
奥多摩の代表的山岳のひとつ。木曽御嶽山と区別するために”武蔵御岳山”・”武州御岳山”と呼ばれることもある。標高は約929m。
古くから山岳信仰が盛んであり、関東では御岳講などが営まれている。
花の百名山(オケラ)、新・花の百名山(エイザンスミレ)。

<御岳山の魅力>

(1)動植物など自然が豊かだが気軽にハイキングを楽しめる。
”花の百名山”と”新・花の百名山”の両方に登録されているとおり、花の種類も多いです。とくにカタクリ、イワウチワやレンゲショウマなどを見ることができます。
また、ロックガーデン(岩石園)の渓流の苔も見応えがあります。苔むした渓谷といいますと屋久島や八ヶ岳などが有名ですが、規模は小さいもののそれに似た雰囲気があります。
動物ではとくにムササビが有名ではないでしょうか。ムササビといいますと高尾山が有名ですが、御岳山でも見ることができます。とくに御岳山では巣箱が設置されており、運が良ければ昼間でも、巣箱の穴から顔を出して昼寝(?)をしているムササビを見かけることができるかもしれません。
(2)東京の登山の山としては代表的であり奥多摩登山の入門的な山
東京都の山として最も有名な山はおそらく「高尾山」ですが、それに次ぐ代表的な山が「雲取山」(東京都最高峰)と「御岳山」ではないでしょうか。
高尾山と同じくケーブルカーがありますので、山頂まで気軽に登ることができます。
ロケーション的にも青梅市にあり、奥多摩のなかでは手前(都心寄り)に位置しますのでアクセスも比較的便利です。


<登山コース>

※標準的タイムによる目安(休憩含まず)
(1)御岳山~大岳山周回コース
御岳山ケーブルカーで上がり、武蔵御嶽神社(御岳山・山頂)とロックガーデンを経て、大岳山(奥多摩三山)に登頂し、また御岳山ケーブルカーの駅に戻るピストン・ルート
ケーブルカー「御岳山」駅⇒ 武蔵御嶽神社/御岳山山頂(20分)⇒ ロックガーデン(岩石園)⇒ 綾広の滝(50分)⇒ 芥場峠(40分)⇒ 大岳神社(40分)⇒ 大岳山(20分)⇒ 大岳神社(15分)⇒ 芥場峠(30分)⇒ 綾広の滝(40分)⇒ ロックガーデン⇒ ケーブルカー「御岳山」駅(60分)
歩行時間/ 5時間10分程度
標高差/ 450m程度

(2)御岳山~日の出山コース
御岳山(武蔵御嶽神社)から東側の日の出山を経由して、あきる野市の武蔵五日市方面へ下るルート。下山先に「つるつる温泉」がある。
ケーブルカー「御岳山」駅⇒ 武蔵御嶽神社/御岳山山頂(20分)⇒ 日の出山・分岐(30分)⇒ 日の出山(20分)⇒ 滝本(50分)⇒ 「日の出山登山口」バス停(30分)
※本コースの「滝本」は上記コース(1)の”滝本”とは別です。
歩行時間/ 2時間30分程度
標高差/ 550m程度

[登山道の特徴]

ケーブルカー「御岳山」駅から武蔵御嶽神社の間はほとんど簡易舗装されています。
ケーブルカーの駅と神社の間に「御岳ビジターセンター」があります。御岳山の自然が解説されていたり、職員の方にお話を聞いて情報収集したりできます。
ビジターセンターから先に御岳山の山上集落”御師集落”があり、宿坊や土産物店などが軒を連ねています。
御岳山の山頂は武蔵御嶽神社の境内にあります。本殿・拝殿等の建物の裏側(奥ノ院遙拝所あたり)に標柱が立っています(知らないと気が付かないかもしれません)。奥ノ院遙拝所からは奥ノ院のあるピーク(「甲羅山」とも呼ばれる)が見えます。
神社からロックガーデンへ行く途中に長尾平展望台があり、麓の展望が開けています。ベンチ・テーブルもいくつかあります。長尾平では売店が営業していることがあります(土日祝の営業だけのようです)。
ロックガーデンには苔むした岩が転がる渓流沿いの道になります。
大岳神社の手前、大岳山の山頂下に岩場・鎖場がありますが、難度や危険性はあまり高くありません(山頂下の岩場はすこし長い)。
大岳山荘は閉業したようですが、週末などはドリンクや菓子類等を販売していることもあるようです。
大岳山荘の隣はヘリポートでしたが、現在は崖に張り出したテラスのような展望スポットになっています。
大岳山の山頂(標高/約1266m)はすこし広めで眺望もよいです(富士山が見える)が、登山者も多いので週末などは混み合います。
武蔵御嶽神社から”日の出山”へ向かう場合、宿坊・土産物店が並ぶ参道の途中で脇に入る道が分岐になります(指標あり)。
”日の出山”の標高は約902m。御岳山側からは下り基調ですが、山頂手前では登り坂になります。
”日の出山”は山頂も広く、またその名の通り東側の展望が大きくあります。
”日の出山”から”つるつる温泉”へ向かって下山する場合、登山道途中の”クロモ岩”とその周辺で道がいくつかに分岐します。滝本へ至る、”日の出山ハイキングコース”を進みます(”旧道”と”新道”がありますが、新道の方が簡易舗装の林道部分が長いです)。
”日の出山”から下山してバスに乗る場合、バスの起点が”つるつる温泉”になるため、温泉に立ち寄るかどうかは別として、「つるつる温泉」バス停まで行った方がバスに乗りやすいかもしれません(5分程度歩く)。
●水場やトイレなど
登山道に水場はないと考えておいた方がいいです。
トイレは要所にあります。

[難易度・危険個所など]

とくに大きな難所や危険個所はほとんどありません。
大岳神社・大岳山の手前に岩場と鎖場がありますが、難易度は高くありません。

[アクセス]

JR青梅線「御嶽」駅から路線バスで「ケーブル下」バス停(終点)に下車して、そこからケーブルカー(御岳登山鉄道)で「滝本」駅から「御岳山」駅で降車。
《補足》
ホリデー快速おくたま号の運行態様が2023年春に変更になりました。新宿方面から乗車する場合、いったん「青梅」駅で乗り換えが必要になります。

[国土地理院地図]

御嶽駅

[コースマップ]

西武鉄道からコースマップが提供されています。
リンク先:
西武鉄道で行くハイキングコース24選「奥多摩 御岳山」 (西武鉄道)
西武鉄道で行くハイキングコース24選「奥多摩 大岳山」 (西武鉄道)
日の出山ハイキングコース (日の出町)

<こんな方にオススメ>

(1)花などの自然豊かな森を歩きたい
(2)滝が好き
(3)歴史のある神社仏閣に興味がある


<補足情報>

[売店等]

ケーブルカーの駅それぞれに売店があります。
武蔵御嶽神社の参道に土産物店が複数あります。

[日帰り温泉など]

生涯青春の湯 つるつる温泉 ※公式サイト ”日の出山”の登山口近く
梅の湯  JR青梅線「河辺」駅

[お食事処]

玉川屋 /日本蕎麦 ※公式サイト 御嶽駅
東峯園 /ラーメン等中華 (青梅観光ガイド) 御嶽駅
武蔵御嶽神社参道の土産物店で食事を提供しているところもあります。
”つるつる温泉”内には食堂があります。
JR五日市線「武蔵五日市」駅周辺には食事処が複数あります。

[山小屋などの宿泊施設]

武蔵御嶽神社には宿坊が複数あります。
御岳山商店組合 ※公式サイト
「東京の天空宿 御岳山宿坊ガイド」 (青梅市観光協会)※PDF/9.82MB

[名産品]

澤乃井 /日本酒 (小澤酒造)
こんにゃく
柚子

[付近の山]

大岳山
高水三山
御前山
関東ふれあいの道
青梅アルプス

[お天気情報]

御岳山/山の天気 (tenki.jp)

[そのほかの補足情報]

「御岳」駅となりの「沢井」駅そばに小澤酒造があり、酒造見学ができます。また施設内にお食事処もあります。
御岳山と”日の出山”だけの山行では歩き足りない場合、ロックガーデンの”綾広の滝”まで往復でプラス2時間弱です。
”日の出山”の山頂直下にある「東雲山荘」は宿泊可能ですが事前予約制です(常時営業しているわけではなく予約が入ったときだけ営業をする)。
ケーブルカーを利用せずに御岳山へ登ることもできますが、舗装道路の坂道を1時間弱、上がることになります。
●大岳山
大岳山は”日本二百名山”、”花の百名山”(イワウチワ)に選定されています。
大岳山から北西に伸びる尾根を進むと鋸山に至り、さらにその先の鋸尾根を下るとJR青梅線「奥多摩」駅に辿り着きます(プラス3時間強)。
●御岳ビジターセンター
御岳山周辺の自然環境等の解説展示あり。各種資料の備置あり。周辺登山道の情報収集可能。各種イベントを開催しており、親子等の家族でも参加できるイベントがあります。
●武蔵御嶽神社
武蔵国の御嶽神社(源流としては奈良・吉野山の金峯山)。ヤマトタケル伝説に由緒があり、そこから派生してニホンオオカミともされる大口真神(おいぬ様)を祀っており、最近は犬連れの参拝客が増えている。


<私的な雑感>

御岳山は、東京の山としては知名度が高すぎる高尾山の陰に隠れてちょっとマイナーな印象。
私は、登山を始める前は存在こそ知っていましたが行ったことはありませんでした。高尾山へは東京の小学生の多くは遠足などで一度は登ったことがあるのではないでしょうか。
しかし、自然の豊かさ、そこに根付く歴史や文化は高尾山に引けを取りません。魅力的なオリジナリティがあると思います。

御岳山の最大の魅力のひとつは”武蔵御嶽神社”ではないかと思われます。
オオカミ信仰と結びついているだけにその狛犬の姿は”勇壮”の一言。個人的には「もはや”犬”というよりは”獅子”のようだなー」と感じています(ライオンだと猫になっちゃいますが)。

また12月から1月の時期(降雪前)には、御岳山周辺で”氷の花”(”氷華”ともいう)を見ることができます。地面ではなく草の茎の周囲に環状にできる霜柱の一種なのですが、その独特の形容と美しい造作から「氷の花」と呼ばれています。
様々な特殊な条件が必要なため、ほかの山域ではなかなか見ることができない稀少な現象です。私が初めて御岳山へ行った理由のひとつでした(高尾山でも見ることはできますが)。
”氷の花”は陽に当るともちろん解けて消えてしまいますので、午前中に観に行った方がいいと思われます。

御岳山に初めて行ったとき、山頂のことをすっかり忘れていて(というよりもまったく気付かなかった…)、大岳山に登って帰ってきてから、「あれ、御岳山の山頂てどこだったんだろう?」ということがありました。

また、以前に御岳山の宿坊に宿泊したことがあります。食事は精進料理が提供されるものと勝手に思い込んでいたのですが、出てきた料理は普通の旅館のような食事(魚・肉あり。もちろんバラエティ豊かで美味しいお料理でした)。「なんで?」と思ったら、神社さんなのでお寺さんとは違って「精進」の制約はないとのことでした。「なるほど。たしかに、そりゃそうだ」と自分自身に苦笑してしまいました。

12月にもなると、「今年の登り納めはどこにしようかなー」「来年の登り初めはどこに行こうかなー」などと考えます。
その年1年の登山の無事のお礼に、または年始めの初詣がてらにお寺や神社のある山へ行くことが多いのですが、私にとって、御岳山はそんな場合のお気に入りの候補のひとつです。


<備考>

武蔵御嶽神社 ※公式サイト
書籍「オオカミの護符」 (新潮社)
御師集落に関する記事 (東京新聞 TOKYO Web)
「御岳講」に関する説明 (武蔵御嶽神社)
氷の花 (東京都環境局)
オケラ (Wikipedia)
エイザンスミレ (みんなの趣味の園芸/NHK出版)
イワウチワ (Wikipedia)
「東雲山荘」利用案内 (日の出町)

<リンク先>

御岳ビジターセンター ※公式サイト
奥多摩ビジターセンター ※公式サイト
みたけ山観光協会 ※公式サイト
おうめ観光ガイド ※公式サイト
青梅市観光交流センター ※公式サイト
関東ふれあいの道 (東京都環境局) ※コースマップあり
山と高原地図「24.奥多摩 御岳山・大岳山」 (昭文社)
御岳登山鉄道 ※公式サイト
西東京バス ※公式サイト
青梅警察署 ※公式サイト
五日市警察署 ※公式サイト


<関連記事>

御岳山(奥多摩)周辺の登山に関する上町嵩広の関連記事です。一部、外部サイトの記事もあります。



<バックナンバー>
バックナンバーはnote内マガジン「登山の魅力」にまとめております。

[奥多摩]
0004/三頭山  0009/御前山  0010/雲取山  0020/浅間嶺と浅間尾根
0028/御岳山
[丹沢・箱根]
0005/大山  0030/塔ノ岳  0035/金時山
[秩父・奥武蔵]
0023/金峰山  0026/棒ノ折山  0032大菩薩嶺
[八ヶ岳]
0001/編笠山  0007/飯盛山  0014/天狗岳  0017/北八ヶ岳周遊(冬)
[北アルプス]
0012/燕岳~常念岳  0024/涸沢カール  0033/立山
[南アルプス]
0011/北岳
[関東そのほか]
0006/赤城山  0008/大楠山  0018/一ノ倉沢(冬)  0021/男体山(日光)  0025/那須岳  0031/鳴虫山  0034/戦場ヶ原  0036/奥高尾縦走路
[東海]
0016/城ヶ崎海岸  0019/幕山  0027/沼津アルプス
[山梨県そのほか]
0022/三つ峠
[長野県そのほか]
0029/黒斑山
[その他の地域]
0002/雨飾山  0003/宮之浦岳  0012/大杉谷~大台ヶ原  0015/苗場山


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(7) カバー写真と、今回ご紹介した山とは、関係はありません。
(8) 情報は掲載日時点の内容です。
(9) 登山道等の状況については、適宜、現地の観光協会、ビジターセンターや山小屋などの各関係機関にあらかじめご確認くださいますようお願いいたします。
(10) 自治体により登山届や各種装備の義務化などの条件がありますのでご留意ください。詳細は各自治体や警察等にご確認くださいますようお願いいたします。
(11) 今般の新型感染症の影響で各種施設等の利用については制限などが行われている可能性があります。ご利用の際には詳細について事前に各種施設等へご確認などをお願いいたします。

(2022/12/07 上町嵩広  改訂:2024/01/02)


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