価値観は自発的に変わらない

胃薬の副作用と思われる31日間の心身ダウンを経て、人間の命や暮らしに対するわたしの思いが多少変わった。体は半分以上よくなった。体重は5.1kg ほど減った。あれから半月経つ。今では好きな物を食べることができる。それは結構なのだが、わたしは人生観を変更する。

あのときわたしは、入院しなければ死ぬと信じて泣いた。それでもクリニックからは相手にされなかった。案外長く生死の淵にあったため、日々の暮らしのすべてがかけがえのないもの感じられた。今は違う。

▽わたしの命は軽く、取るに足りない。
▽当たり前のことの積み上げが日常を構成する。
▽毎日の生活における、あらゆることが特別とは言えない事象だ。しょうもない事柄(快適な睡眠・休養、豪勢な食事、正常な排泄、必需品や贅沢品の余りある所有、人々との関係性の充足、申し分なく充実した時間の過ごし方) を最低ラインに考える。
▽恵まれた暮らしをいちいちありがたがっていたら体が持たない。

仮にあのまま死んでいれば、わたしの命と暮らしの価値はもっと大きく、重く評価されたはずである。31日間の地獄にはそれなりの意味を認めたい。しかし、わたしは早くあの過去を忘れるべきだろう。残された時間を執拗な回想と過剰な感謝で失うことのないように努めねばならぬ。

ありがたいことです。目に留めてくださった あなたの心にも喜びを。