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劣等

手首に線を引かないようにピアスを開けていた。ピアスを外さなければならなくなって、代わりに手首を切った。人を殴らないように、悪いのは自分だと戒めるために、罰するために、本当に死んでしまう決心は、到底持てなかったので手首を切った。やがて、手首を切らないように絵を刻んだ。青の花。誰かの言葉。惑星ではなくなった星。それでもどうしても、何にもなれなかった。わたしは誰にも、何にもなれなかった。生きにくい身体が手に入った。己の身体への、ほんの少しの愛と共に。

「変わったね」

そんな身体を見て、言葉の少なくなったわたしを見て、笑顔が下手になったわたしを見てあなたたちは示し合わせた様に言う。それは事実だし、間違っている。わたしは変わっていなくて、変われなくて、あなたたちがちゃんと大人になっていくのに、わたしはついていけなかっただけで、わたしだけが変われなかったんです。大人になれなかったんです。大人のあなたたちが、厭に眩しく映るんだ。酷く惨めだ。順応できなかったから、わたしだけが酷く変わったように見える。これから先50年を、どうやって生きればいいのだろう。どうすれば、あなたたちのように大人になれるのだろう。分からなくて、もどかしいから死にたいのに、誰もやり方を教えてくれはしない。年齢だけが大人なのに、どこで教わったかも、もうわからない。

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