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#清世さん
【絵から小説その②】なんでもないひとときを
「今日さ、ちょっと寄り道しない?」
私が教室に入ってくるなり彼女は楽しそうに言った。
どうやらいつもの店に新作が入ったようだ。
私は仕方ないなと言いながらも内心思いっきりはしゃいでいた。
放課後が待ち遠しい。
彼女は私の席に座ると後ろの暑い暑いと言いながら少し行儀悪く、制服をパタパタとあおぐ。
彼女と後何回、こんなやりとりが続くのだろうか。
もう来年にはお互い別々の道を歩む。
「あー、夏
【絵から小説】見つめたその先には
黄昏時、この高台に来るのが好きだった。
辛い時、悲しい時、嬉しい時、ここに来るとホッとした。
私はある一点を見つめていた。
街には徐々に灯りが増えていく。
明日からはもうこの景色は拝めないだろう。
視界がぼんやりと歪んだ。夕日が目に染みたのかもしれない、いや、きっとそうだろう。
全部夕日のせいだ。ごしごしと乱暴に擦る。
「ありがとう、さよなら」
私はそれだけ言うと深々とお辞儀をし、踵を返し