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不安な朝をスタバで過ごした日々を想う

初めて転職したところは、外資系の小さな会社だった。新卒採用をやっていなかったので、私は社会人2年目にして、飛び抜けて若手だった。同期どころか、年の近い人もいない。

就活のときに良く耳にした『社風の違い』というものを、転職して初めて実感した。1社目のときの癖で、始業の1時間以上前には会社についていた。ただ、みんな、全然来ない。始業の10分前にやっと揃いだす。『出社時間は早ければ早いほど良い』ということを、1社目で無意識に学んでいた私は、少し拍子抜けした。

当時、私がいつも早く出社するので「業務量は大丈夫?」という具合に、周りから声をかけられた。あんまり早く出社すると、どうやら心配されるらしい。

それからは、最寄り駅について会社に直行せずに、近くのスタバで朝の1時間を過ごすようになった。本を読んだり、英語の勉強をしたり。ちょうどみんなが出社する、ほんの少し前に会社に到着するために、時間つぶしのつもりだった。

続けることで、日課になり、習慣になった。新しいお客さんとの打ち合わせで緊張しているときも、どうしようもなく不安なときも、朝の時間のおかげで少し気持ちが和らいだ。

会社では弱気だったけれど、朝の時間は違った。『次は、あの本を読もう。久々に次のTOEICでも受けてみよう。もっと海外のニュースを読みたい。』という具合に、やりたいことが浮かんでくる。ノートとペンを出し、想像する未来を書き起こして、これからの作戦を立てることもあった。

寒い季節に、布団から出られず、朝の時間をスキップしたこともある。そんな時は、帰りにスタバによって帳尻を合わせる。とにかく、自分で自由に過ごす時間がなくならないように、そんな気持ちだった。今思うと、それが、心のよりどころだった。

転職して1年が過ぎた頃、ようやく仕事に慣れてきて、気軽にランチに行ける先輩も増え、1人の外出も(相変わらず緊張はしていたけれど)当たり前のように任されるようになっていた。少しずつ、会社が居心地がいいと思えるようになったのが、嬉しくて、驚きだった。

これに反比例するかのように、朝1時間の習慣は、自然と無くなっていった。決して朝が得意ではなかった自分が、それでも、朝1時間早く電車に乗っていたのは、仕事への不安や、自信の無さの表れだったと思う。弱気だった自分が、心のバランスを保つための、大事な時間だった。

これが、だんだん、必要じゃなくなっていった。

その会社は、初めて、仕事が楽しいと思えるところになった。

あの時のノートは、まだとってある。過去の自分を思い返すと、少し切なくなるから、頻繁には見返さない。それでも、たまにスタバに行くと、不安一色だった頃の自分を思い出す。


どうにか、あの時の自分に話しかけてあげられないかな。


大丈夫だよ、全部、大丈夫だよって。



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一人で不安げにスタバにいる就活生とか見かけると、無性に声をかけたくなってしまう。余計なお世話かもしれないけれど。








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