棚田の田植えは、昔ながらのかけごえで。
少し前に、棚田の田植えをした。
棚田オーナー制度といって、田植えや稲刈りや脱穀と、時々の草刈りだけをするという、ちゃっかりさん用のしくみを利用している。
その他の作業は、地主さんにすっかりお世話になってしまうのである。
だから、田植えをしたというのも、おこがましすぎて、ついつい小さい声になってしまうほどの、ちゃっかりシステムである。
地主の皆様、毎年、ありがとうございます。
そんな活動も、いつのまにか、7年目をむかえた。
常連さんたちとも、顔なじみになり、
地主さんたちにも、顔を覚えてもらい、
年に数回の出会いにも関わらず、親近感はなかなかのものになっている。
このオーナー制度には、地元の滋賀だけでなく、京都や大阪からも参加されていて、年齢も職業も様々な人々の集まりになっている。
その中には、子どもたちもいて、
毎年、その成長ぶりには、目をみはるものがある。
何度も会ううちに、だんだんと慣れてきた子どもの中には、
「家どこ?
はは~ん。あのへんか~。
今度、遊びにいこっかな~~。」
なんて、言いにくる子もいる。
こんなおばちゃん、いや、おばあちゃんの家に遊びに来て、いったい何をするつもりなんやろうか。
まあ、ええけど。
ほかにも、
「3月24日から27日まで、何してた?」
と、きいてくる子がいて、
「え~~~。覚えてへんなあ。
仕事に行ったり、家のことをしてたり、いつもと変わらへんかなあ。」
と答えると、
「ふ~~~~ん。」
と、思わせぶりな返事が返ってくる。
「何なん?その期間になんかあったん?」
と聞くと、
「じゃ~~~ン。シンガポールに行ってたんだよ~~~ん。
行ったことある?
えっ?ないの?え~~~っ!
えっ?ごはん?
そりゃあ、美味しいよ。決まってるやん。」
と、こうきた。
おもしろ過ぎである。
「シンガポールって言うたら、あのマーライオンとかいうやつがおって、ゲロはいてるところやろ?」
と、夫が反撃すると、
「なっ、何を言うん。ゲロって。
ひどいこと言うなあ。
(小さい声で)
まっ。たしかに、ゲロみたいやけど・・・・。」
と、ちょっと夫の反撃にひるむ子ども。
その後、田植えも佳境に入り、だんだんと初老夫婦は、疲れが出てきた。
手植えなので、腰をかがめるたびに、夫が、
「よっこらせ。おいっしょ。うっしょ。」
と、ついつい声を出してしまう。
そうでもしなければ、身体の動きに勢いがつかない。
それを、聞いた先ほどのマーライオン少年が、
「ふっ。よっこらせっって。
ふっ。江戸だな。江戸時代だな。」
と、ちょっと小ばかにしたように笑う。
「江戸時代って言われてるで~~~。」
と、大笑いしながら、夫にそのことを伝えると、疲れがなかなかピークに達してきている夫は、かなりムッとしている。
おいおい。
大人げないぞ。
私の田植えも、そろそろ終わりに近づいてきたので、身体を起こして、自分の植えた苗の列を見る。
まっすぐに植えられるように、ちゃんと目印となる棒を使っていたのに、なんだか、山道のようにぐにゃぐにゃしている。
思わず
「ありゃりゃりゃりゃりゃりゃ~~~。」
と、叫んでいると、後ろの方から、
「ふっ。
ありゃりゃりゃりゃって、まるで昭和だな。」
と、再び、小ばかにしたような声が聞こえてきた。
昭和って、そんな昔なんか~~~~~~~~~~。