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海、心(2023/10/13)

 少し遠めの地域へ直行して店回りすることになっており、いつもと同じ時間に出るつもりでいたけれど、うっかり二度寝して1時間ばかり遅くなった。よほど疲れているらしい。
 それでも別段遅刻はしないから、普通に飯を食って家を出た。

 終日店回りをしていると7割ぐらいが移動時間になる。その間はYouTubeで怪談などを聴きながら運転しているだけだから、何だか仕事をした気がしない。
 社用車で海沿いの道を走りながら、きれいさに感心した。
 自分は瀬戸内で生まれ育ったものだから、「見渡す限りの水平線」というのをあんまり見た覚えがない。瀬戸内ではどうしたって島が視界に入る。
 横浜のパスタ屋で仕事をしていた時分、店を閉めた後でバイト数人と由比ヶ浜へ行ったことがある。
 午前3時過ぎで真っ暗だったから水平線は見えなかったけれど、海とも空ともわからない真っ暗な遠くから、白い波が小さく見え始める。あの白いやつの下側が水平線だとわかった。
 白浪が幾重にも続いて、段々近づくにつれて大きくなる。それが延々繰り返されるのを見て、やはり外国へ繋がっている海は大したものだと、大いに感動したのを覚えている。

 帰宅すると娘が風呂から出たところだった。髪を乾かすのにわざわぞテレビをつけて『スパイファミリー』を観ながらだらだらやる。テレビを消せと云うと、何だかウダウダ云う。リモコンで消してやったらふてくされた。
 級友の一人が「おじいちゃんが寝たきりになった」と云ったら、周りの女子が「よぼよぼじゃん、きゃは★」とネタにして笑ったそうだ。
 娘は祖父が晩年ずっと病院で寝たきりだったものだから悲しくなって、そういうのは云わない方がいいと言ったら、「は? 何言ってんの?」と、随分冷たくあしらわれたのだという。

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