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父になる
先日、妻が一人で出かけたものだから、久しぶりに娘と二人で外食した。
幼い頃にはよく一緒にうどん屋とかマクドナルドへ行ったけれど、プチ反抗期が始まった辺りからはあんまり行かなくなっていた。
娘は行く店ごとに、いつも注文するメニューが決まっている。この日はガストへ行ったから、チーズインハンバーグを食べた。いつも同じ物ばかりで飽きないのかと問うても、飽きないのだと云う。
あんまり冒険をしたがらないところは自分に似たのかもしれない。
※
自分は幼稚園に上る前、父の勤め先の社宅4階で暮らしていた。
ある日、夕暮れ時に窓から外を眺めていたら、こちらを見上げてニヤニヤしている男がいた。男はニヤニヤしたまま社宅の敷地へ入り、階段口に向かって歩いて来る。
このまま放っておいたらきっとうちまで来るに違いないと思ったから、台所にいる母に急いで「何か来るよ!」と伝えた。
母は晩ごはんの支度をしながらちょっと振り返り、「何が来るの?」と言った。随分のんきな調子だった。
そこへドアがガチャリと開いて、さっきの男が、ぬぅと入って来た。
自分は、あぁとうとう来てしまった、と思ったけれど、母は顔色一つ変えず、あらお帰りなさいと言った。
父の顔をはっきり認識したのは、この時からだったように思う。
よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。