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珈琲、嫌な感じの話

 小2の時分にはいつも、学校から帰るとすぐにイカサキ君の家へ遊びに行った。そうしてウルトラマンごっこをしたりプロレスごっこをしたり絵を描いたりした。おやつの時間には食卓へ招かれてお菓子と珈琲をいただいた。
 小学生に珈琲というと今では何だか奇異に感じるけれど、あの頃は別段珍しくもなかったと思う。
 自分が初めて珈琲を飲んだのがいくつの時だったかは覚えてないけれど、イカサキ家で出された時に「うちと一緒だ」と思ったのは覚えているから、きっと小1ぐらいから飲んでいたろう。

 ある時、いつものように彼の家で遊んでいて、珈琲と一緒にカシューナッツをいただいた。酒のつまみに売っているやつで、塩気が利いていて美味かった。イカサキ君はこれが大いに気に入ったらしく、もりもり食べた。
 それから夕方になり、『帰ってきたウルトラマン』の再放送を一緒に観た。その日はメイツ星人の回だった。地球で身寄りのない少年と一緒に暮らす優しい宇宙人が、人間から迫害されて死ぬ話で、随分どんよりした。

 翌朝一緒に登校しながら、イカサキ君が「昨日の話は気色が悪かったねぇ。僕は君が帰ってからゲロを吐いたよ」と云った。
 それはきっとカシューナッツの食べ過ぎで、ウルトラマンは関係なかったろうと思った。

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