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台風、ウルトラマン、安い傘

 台風の雨と風の音で、夜中に一度目が覚めた。

 小学校1年生の時、台風が来ている日にテレビでウルトラマンを見た。ミイラ人間の話だった。
 外の風が随分激しくなったのが気になり、ベランダのドアを開けたら強風で持って行かれてドアのガラスが割れた。
 自分も驚いたが妹も驚き、「熱が出るから寝る」と言って寝室へ逃げた。ちょうど風邪が治りかけているところだったのだ。
 母が飛んできて、割れた部分にビニールのテーブルクロスをガムテープで貼り付けた。翌日ガラス屋を呼んで直してもらった。

 小3の時、台風の接近で授業を切り上げて下校させられた。
 いつも下校時は友達と喋りながらだらだら歩くのだけれど、授業切り上げというのはいかにも非日常で、何だか怖かったから急いで帰った。
 家に帰ると、母が花屋へ行くからついて来いと云う。何で台風が近づいて来ているのにわざわざ花屋へ行くのかと思ったが、母は平気の平左であったから、まぁそういうものかと思ってついて行った。
 近くの花屋は随分大きく洒落た建物だった。吹き抜けの2階で母が花を選んだのを覚えている。
 店を出ると、風が強くなって家々のテレビアンテナが揺れている。やっぱり危ないじゃぁないかと思ったのだけれど、母はそれでも平気な様子で「風が強くなってきたねぇ」と云った。

 大学1年の時、台風の雨の中をずぶ濡れになりながら学校へ行ったら授業は全て休講になっていた。
 当時はネットなどなかったから、休講情報は学内の掲示板を見なければわからない。こんな時にこれではいかにも不親切だと思ったら、入学時に配布された冊子に「台風が来ているときは休講」と書かれてあるのを後から見つけた。

 帰りは傘の布地から雨が滲みて手元へ垂れてきた。さすが台風の雨は違うと感心したが、単に傘がしょぼいだけだったろうと今は思う。

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