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デザインの投資価値って?

テクノロジーに投資する人は相変わらず増えており、日本では少ないながらもデザイン面に投資する人も少しずつ増えてきていると思います。

ただ、常に最新のITニュースを追っているようなリテラシーの高い人以外は、まだまだ「デザイン=見た目をきれいにする」の認識がかなり多いのが現実。。

2020年のいま、改めて「デザインにお金かけて何になるの?」を整理して見ます。

① 見た目をかっこよく、かわいくする


「かわいいから買っちゃった!」とか「かっこいいから欲しくなる!」みたいな、見た目が良ければ買う(使う)人ターゲットにしているなら、見た目を整えることの投資価値は高い。
C向け製品、すでにコモディティ化している商品・サービスに効果がある。
競合がデザインに投資していれば、ユーザーはその基準が当たり前と認識するので、競合よりも整っていなければ一目で振られやすくなる。

SNS全盛期のいま、インスタ映えするビジュアルは拡散されやすいので、広告を出さなくても自然と認知されることもある。
個人がSNSにアップするような有形商品なら、ビジュアルを”いい感じ”にすることで、広告費分の投資価値はあると言える。

B向け製品では、「かわいいから導入しちゃった!」いうことはまずないので、
見た目を”いい感じ”にするのデザインだけでは、そこまで価値を生まない。

② ”ブランディング”

見た目を良くするのとセットでよく挙げられるのが、「ブランディング」である。

見た目の良し悪しで購入が決まる商品は、見た目が良いと値下げ競争から逃れやすくなる。
また、その外観に至るまでの紆余曲折ストーリーや込められた思いは、ユーザーにスペシャルな印象を与えられることもある。

ただ、ブランディング=見た目の良さ+@ ではない。
ブランドを表すのが見た目であり、見た目が良ければブランディング、ではない。

ブランドの正体は保証書の役割を一目で示す記号である。
ブランドに関わることは、自分が特別な製品を使うに値する、特別な存在であることを実感させ(ステイタス感)、それを人にも見せびらかせる。
収入がいくらなのか言わなくても、通帳を見せなくても、それなりの財力を持っている価値の高い人間だということをパッと示す目印になる。

もしブランド価値がわかりやすく示されていなければ、それは説明しないとわからない。
また、万人に良いと認められる保証もない。
もしも価値のわからない人に自慢してしまったら、「えっどこがかっこいの?ダサっ。」などと言われかねない。
それを言われる心配がなく、たとえ言われたとしても、”価値の保証書”があれば「この価値がわからないなんて、センスがないのはお前の方だ」と強く言い返せる。
センスという見えない感覚も、目印があるだけで、水戸黄門の紋章のようにスムーズに認めさせることができる。


B向け製品での”ブランド”は、担当者の責任逃れを助ける。
他社に広く認められているという保証があれば、自分でその保証や判断をしなくてもいい。
絶対に確実に安心できる材料を精査するのは面倒なので、”保証書”があればその手間が省ける。
「何か問題が起こったらどうしよう。大丈夫かな。。」と疑いながら恐る恐る橋を叩くのではなく、「これならみんな使ってるし大丈夫だろう」と期待から始められる。
企業は個人と違い、確実性・堅牢性が求められるので、その安心保証マークがあることで、選択肢から除外されにくくなる。

また、企業の”ブランド”(コーポレートブランディング)は人材採用にプラスにはたらく。
ネームバリューもブランドの一つである。
誰もが良いと認知している企業は、親や友人に話すとき、一言でその価値が認められる。業績や株価を詳しく解説しなくても、パッと価値が伝わる。

ただし、B向け製品は機能自体の良さ(品質)や、成功事例、優れたカスタマーサポートなどが揃っていることが前提となる。
ビジュアルだけあっても中身がなければ保証するものがないし、誰にも認知されていないブランドは”自称イケメン”と同じである。

そういうことで、お金を払えば明日すぐ作れるようなものではないので、その分模倣されにくく、他社との差別化が図りやすくなる。
マーケットのシェア1位にならなくても、ユーザー数No.1にならなくても、オンリーワンのポジションを築ける。
(ここで1曲はいります)
特に、レッドオーシャンの事業なら投資価値は高い。

くり返すが、重要なのは「文字やマーク・雰囲気などの記号を使って、何を保証するか」という点である。
「文字やマーク・雰囲気」は中身を伝える声にすぎず、中身のない音声は道路工事の作業音と同じ、ただの空気の振動でしかない。

③ 使いやすさ


工業製品やアプリなど、”道具”として使う製品は、基本的に、いかに少ない手間で、ラクに目的を達成できるかが基準になる。

この”手間”は、たとえばオンラインサービスだと、クリック数・入力数といった物理的な動作の手間と、
思考の手間(「このボタンを押すと何ができるんだろう?」「〇〇をするためにはどれとどれを使うか...」など)がある。

使いやすいか使いにくいかは、加点ではなく減点対象になる。
少しリテラシーの高い人は、デザインで使いやすさが左右されることを知っているので、要件に「使いやすさ」を入れるが、実際のところはまず「使いにくさ」の排除からはじまる。

おしゃれなインテリアの部屋におしゃれなゴミ箱を置いても、使いにくかったら、たちまちスーパーのレジ袋に置き替わってしまう。
(そしてその後おしゃれなゴミ箱が復活することはあまりない)

※ただし、「使いにくさ」の基準は、使う人や使うシーンによって異なるので、ターゲットユーザーの目的や性質・普段の行動に合わせる必要がある。


使いにくい製品は、シンプルに使われなくなるか、競合に移りやすくする。
B向け製品なら、便利にするために作ったものが、結局使ってくれずに、従来の形に戻るか、オペレーションへの負荷、導入コスト(チュートリアル作成や学習プログラム・コンテンツの作成)の費用が増える。

機能が良く、顧客のニーズにも答えているのに解約率が高いSaaSは、「使いにくい」ことが結構多かったりする。
また、なぜ使いにくくなってしまうのかというと、多くの場合、ユーザーの行動パターンに合っていないからである。
(それを考えて設計するのはUXデザインの役割で、その設計を形にするのがUIデザインであり、こういう時は大抵それっぽいUIデザインしか当たっていない)

したがって、使いやすさの投資価値は、使いにくさを埋めるためのサポートコストとの兼ね合いになる。
サポートコスト(多くは人件費)のが割安なら一応問題ないが(何のためにツール化するのかはさておき)、そのコストを下げるなら使いやすさへの投資がないと、最終的には解約率の高さになって返ってくる。


④ 体験


トレンドのテクノロジーを追いかけているような、さらに意識の高い人だと、UXデザインは体験を良くすることで、なんとなく必要だと認識している人もちらほら出てくる。

ただ、キャンペーン的な特別な体験を作ることだと認識している人が多いような印象を受ける。

「体験」と言ってもがピンと来ないのは、言葉通り指す範囲が広いからに尽きるが、一言で言うとUXとは「ユーザーはその製品/サービスに関わる中でいつ何をどう思うか」で、それをコントロールするのがUXデザインである。

印象的なキャッチフレーズを作り、興味を持ってもらうこともUXデザインだし、親切な店員さんの接客で居心地がよかった^^もUXだし、今まで時間がかかっていた作業から解放された!もUXだし、友達に褒められた!もUXだし、温度や空間、音、人の雰囲気、文字の大きさ、フォント、トラブルサポート、すべてがUXの範囲になる。

つまり、UXデザインとは、ユーザーが関わる全体であり、企業の組織体制とか会計・資本政策・事務・経営面など顧客が関与しない部分を除き、事業のほぼ大部分に該当し、顧客の感情と提供者のねらいをくっつけてコントロールするものである。

その設計のもとに、どういうビジュアルだとどう思われるか、どういう設計をとすると使いやすいのか、などの方向性が定まる。

ビジュアルデザインに限った投資は、先述①のとおり、ターゲットと商材によって価値が異なるが、UXのデザインはほぼ事業全体への投資とも言える。
したがって、どのぐらい投資すべきかは、どのぐらいリターンを求めるかということになる。


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事業戦略としてのデザイン>をお手伝いしています。
どの部分にどういう方向性でどのようにデザイン投資するべきかは、売るもの・買う人・市場によって決まります。
この場合はどうなの?何をすればいいの?という方はぜひ一度ご相談ください。

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