響き、文法
短調の春風が迎える不埒な碧雲
静寂を濫造する白雪が偏執した石畳に、延焼を免れた月光がほろほろと降
り積む
川面で遭遇した燃え殻と弾頭は、緩やかに密約を飛散させた
破倫の鑑定家が開局した庁舎より発せられた空電に感応する梧桐
至上のシラブルを謹んで貢ぐ晦の月食へ、変転する空文は濃やかな靄を
纏わせる
ラグランジュポイントにおける永訣
主語を喪失した語族が土煙をあげて侵襲するため、文献学者は色消しレン
ズと軽水を兌換する
代名詞の迷宮
重力の井戸で綴られた短文には、感官の行く末を遠望する資格が無い
抒情の扼殺による細密な編曲
完熟した長虫が貞潔な弔文を読み上げ、邪慳にされた灯火を撒き散らす
辺境への途上にある面妖な墨染は、不法にも理詰めで歓楽を解き明かした
稜線に沿って走り抜ける原色の花信風から、帯電した弦楽が鳴り渡る
許された固有の暦の葛藤
海峡に剥き出しとなった亀裂を揺るがす強風も、不遜な唯識の訪れを見逃さない
不意の濡れ衣に図らずも竦んだ古兵が、不器用に宿世の所業を低吟した
北方で、五感の転倒が幕を開ける
雲母の寂滅
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