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災害と電気自動車【2/2】BEVのお陰で人もペットも生き延びられる可能性が格段に上がる!

最初に。
記事中にある写真や投稿は実際に被災地に居た知人に許可を得て掲載しています。転載等はご遠慮ください。
またこれまでの災害時の画像、映像などが出ますが予めご了承下さい。
※苦手な方は閲覧をお控えください。


2024年1月1日16時10分、能登半島を震源とする地震が発生。
最大震度は7、マグニチュードは7.6、震源の深さは16kmで震央は珠洲市。
この時、電気自動車(以下BEV※1)に乗る仲間が石川県七尾市にて被災しました。幸い、数日後には無事に被災地域から出る事が出来ましたが彼がSNSで言っていたことからは当事者だからでた言葉、リアルが伝わってきます。
BEVに関しては冬の立ち往生や電力使用量の増加等、少し間違った情報も伝わってしまっています。今回はそんな中でも災害時にBEVは何が出来て、何が出来ないのか。
この辺りを経験者のSNS投稿を実際に幾つかピックアップしながら、私の実経験も交えて『災害の多い日本で電気自動車(BEV)が担える役割』を書いていきます。



災害が起こったらライフラインはどうなる

最初に復旧するインフラはなに?

ここまでを前半パートでお送りしました。まだ読まれてない方は以下から前半を読んで頂きそれからこの後半パートを読んで頂ければより理解が深まります。
前半パートリンクはこちら

それでは後半へと進んでいきます。
後半は実際の災害時はもちろんですが平時も含め何故BEVが優れているのか?どんな利点があるのかをお話ししていきます。

移動できるエネルギー

ガソリンなど内燃機関用の燃料も移動ができるじゃないか!との声が聞こえて来そうな話ではありますが一つ違います。この”一つ”の違いが大きく影響します。
「電気が来ている=配電網が寸断されていない=どこかしらの発電所と繋がっている」
つまり二次被害などが無い限り供給が切れる可能性が少ないという事です。ひとたび災害が起きると道路を始めインフラが被害を受けそれらが回復するまで当該地域は文字通り陸の孤島と化すわけです。そのなかで外部と送電網が繋がっているというのは非常に大きな役割を担います。この状況であればBEVを充電し運用するのに不安は大分少なくなります。他方、燃料は内部備蓄がなくなる前に配送されれば問題ないですがこれまでの災害状況からは中々難しい面もありますね。付け加えるとそもそも停電しているとスタンドも機能がダウンして給油が出来ません。
災害発生の瞬間から少し経った後、さらに時間を進めてみましょう。人はどんな時でもお腹が空きます。状況によっては食欲は出ないかもしれませんが生きる為、確実に身体は求めてきます。その時に暖かい食事があればとても安らぎ落ち着きます。そういった研究ももちろんありますが何よりもこう言葉に出てしまいます。

食器にビニールなどをかけるのは洗い物を減らし水使用を抑制する為

私も令和元年台風で被災した時同じように感じました。人のぬくもりと同じように「暖かい/温かい」というのは食べ物においてもとても大事です。非常時ならなおのこと、美味しいのはもちろんですが不思議に落ち着くのです。
この温める行為に使うのは燃料か電気になります。やはりここでも外界と遮断されているか否か、このたった”一つ”が大きな違いとなります。

災害発生時に今回のように電気が通じていた場合はそこに行き充電が可能で自分の居る場所が停電の場合でも、隣町や極近隣に電気が来てる場合も同様です。後述する台風被災時に道路を一本挟んで電気がついている状況に出会いました。
このことからもやはりたった”一つ”の違いは大きな違いになると思います。


2019年千葉全域ブラックアウト

さて前項からさらに先へ進みます。
ここでは令和元年に起こった台風被害にて実際に被災した私だから言える、感じる事を書いていきます。
この台風の概要や被害状況などは以下に内閣府が公開している防災白書を上げておきますのでどんなものだったかはこちらをご覧ください。

1-2 令和元年房総半島台風による災害

(1)概要

令和元年房総半島台風(台風第15号)は、令和元年9月7日から8日にかけて小笠原近海から伊豆諸島付近を北上し、同月9日3時前に三浦半島付近を通過して東京湾を進み、同日5時前に強い勢力で千葉市付近に上陸した。その後、同日朝には茨城県沖に抜け、日本の東海上を北東に進んだ。台風の接近・通過に伴い、伊豆諸島や関東地方南部を中心に猛烈な風、猛烈な雨となった。

 内閣府HP防災情報のページ、令和2年版 防災白書|特集より

移動できると他に何がメリットになるでしょうか?燃料と電気の違いはここでも現れます。
「暖める/温める」が大事と言いましたが燃料は基本これしかできません。ところが電気は冷やしたりもできるわけです。家にあって冷やすものと言えばまずは冷蔵庫、次にエアコンあたりでしょうか。能登地震は真冬,、東日本大震災も3月初旬と寒い季節でしたが私が被災した令和元年台風は9月とまだ残暑厳しい季節です。これらが使えずに熱中症になり災害関連死と言われる事象が多く発生しました。これを解消できるのは電気です。
※一部内燃機関を用いるものもありますが一般に普及はしていないのでこの場合は考えません。
前編で少し触れましたがインバーターを使って12V電源(シガーソケットなど)から電気を取り出し家庭用の電化製品などは動かす事が出来ます。コンセントが付いている車両であればもう少し大きな家電も動かせます。車両にもよりますが1500w上限と家庭用コンセントと同じような出力に設定されていることが多いです。

左 ←当時の東電発表停電地域 右→停電し車から電源を取る様子

PVは屋根に乗っていたので実は昼間の電気は使えたのですが夜は当然のように使えません。V2H機器も購入済みでしたが機材の生産が追いついておらずこの時点ではまだありませんので夜間は電気自動車からの給電で賄っています。画像の車両は日産のe-NV200というBEVで1500Wのコンセントが装備されています。我が家のリビングは200Vエアコンですが寝室はあえて100Vエアコンにしています。この100VエアコンとスマホやLEDランタンの充電、扇風機などと使います。そしてさらに大事な水の確保の為、井戸水ポンプ用の電源へ回します。

①井戸水ポンプへの給電 ②100Vエアコン ③LEDランタン
④被災直後のQC充電の様子 ⑤左がPVからの非常用コンセント、右は通常時用
⑥夜間LED照明下、我が家のコーギー

※V2Hは全負荷利用可能なのでエアコンやIHなどの200V機器も使えますが故障など万が一のリスクヘッジでもあります。この辺りの災害を意識した住宅設備環境の話も一度詳しくお話しした方がよさそうなので次の記事にで書きます。気になる方は探して下さい。
閑話休題
これで残暑厳しい9月に起こった令和元年房総半島台風を何とか乗り切る事が出来ました。BEVがあることによる災害時の安心はICEVの比ではありません。
これまで挙げたBEVの有利な点を纏めると
・インフラ復旧の一番早い電気がエネルギー源となる
・自宅や避難先等、任意の場所に移動することが可能
・移動先で電化製品が使える
・ICEVのように音や振動、排気ガスが出ない

といった事があげられます。
特にタイトルにもした通り我が家のようにペットが居る場合は電気が使えることは非常に大切です。おかげで残暑厳しい時期の被災、ブラックアウトでも最低限の冷房環境は確保できました。人は我慢出来たり涼しい施設に入れたりしますがペットはそういうわけにいきません。近年、動物連れでも入れる避難所などが開設される例もありますがまだ極少です。災害時は基本的に『自助』が基本です。まずは自身のことは自身で、足りない事を近隣と共に、最後どうにもならないことは国などの公共に頼る
『自助・共助・公助』
聞いたことあると思いますがコレです。意味も順番も大切です。この自助において大変大きな役割を果たすのがBEVという事です。
ちなみにこの時、隣町には電気が来ていましたので一度だけQC(急速充電※3)をしました。被災直後はBEVへの充電量が少なかったため。その後は自宅の太陽光発電設備にて充電していました。

最後に、今回記事のサムネ画像の中にある文言。
無事です。
やばい。
神に生かされている気がした。
これは能登半島地震で被災したEV仲間の彼が投稿した言葉です。最初の投稿、二番目の投稿、究極に短い言葉尻から緊迫した状況が伝わります。そして三つめは一月ほど経ってからのもので、少し離れたところから冷静に振り返るといかに大変な状況だったかが伝わる言葉です。
災害の多くは予測し回避することが難しいです。神に生かされたその後、さらに少しでも生存の可能性を高められるよう読者の皆さんの一助になれば幸いです。



注釈

※1 BEV Battery Electric Vehicleの略。EV(Electric Vehicle)はより広義の意味でプラグインハイブリッド(PHEV)や燃料電池車(FCV)も含みますが本記事ではより狭義のBEVを用います。
※2 ICEV Internal-Combustion Engine Vehicleの略。ガソリンや軽油などを燃料とした内燃機関を動力源として走る車の事です。
※3 QC QuickChargerの略。対してNC(NormalCharger=普通充電)があり出力より分けられる。日本ではおおよそ10㎾以上の出力がQC、それ以下はNCとされることが多い。

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