『だから、もう眠らせてほしい』を読んで

Twitterで西智弘先生の「だから、もう眠らせてほしい」の記事を見て

「これは、絶対に読まなくては」と思い、この本を購入した

最近は本を購入する機会も減っていたが、この本はどうしても手にとって読みたかった

本を注文してから届くまでの間に、「医師2人による安楽死事件」が起きた

自分にとってタイムリーな話題で驚いたと同時に、届いた本を直ぐに読み終えた

本の感想の前に、「安楽死事件」については怒りと悲しみを覚えた

事件についての詳しいことは分からないけど、

分かっている範囲では、主治医ではなく、初対面の人間が自殺幇助を行ったこと、金銭の授受があったこと

そこでどんなやり取りがあったかは分からないが、SNS上でしか知らない赤の他人がその方の最期を見届けた(かも分からない)ことが悲しかった

西先生と同じように、私も「世界から安楽死が無くなればいい」と思う

だけど、「安楽死」については否定も肯定もしない

むしろ「安楽死制度」はあってもいいと思う

今回のような事件があれば尚更

そもそも「死」はパーソナルな問題で、良し悪しで決められるようなものではないと思う

最近では俳優の三浦春馬さんが自ら命を絶って亡くなられたけど、自ら死を選べる人と、そうでない人がいることは「不平等」にも感じる

「死」を選ぶ理由は人それぞれだと思う

病気だから死を選ぶのではなく、そこに「耐え難い苦痛」を伴うかどうか、または「耐え難い苦痛に打ち勝つ何か」が見つからない時、人は死を選ぶのだと思う

私の父親は胃癌で亡くなった

「StageⅣ」と診断を受けてから闘病生活は2年間続いた

食べることが好きだったのに、胃の切除術をしてからはろくに食べることができず、抗がん剤治療が開始されてからは四六時中吐き気が続いていた

亡くなる1ヶ月前からは激しい痛みに襲われて、レスキューと呼ばれる医療用麻薬を使用していた

父親の弱い所など見たことがなかったけれど、亡くなる1週間前は家族に「怖い」と話すこともあった

実母には「自分の家族を頼む」と泣きながら話していたことを亡くなった後に聞いた

周囲から見ても「耐え難い苦痛」というのは明らかであったけれど、それでも最期まで「生きたい」と願っていた

最期まで家族のことを心配し、子供の成長を誰よりも楽しみにしていた

「生きる希望」が「耐え難い苦痛」に打ち勝っていたのだと思う

だから「安楽死」の基準を病気の「重症度」で決めつけることはできないし、「病気だから死にたい」のではないと思う

これまでの個人の価値観だったり、環境だったり、立場だったり、経済力であったり、

それ以外の要因の方が大きいと思う

問題は「その判断を見ず知らずの他人にできるのか?」ということ

少なくともSNS上で知り合っただけの他人にできることではないと思う

「安楽死制度」の前に、自分自身がそうであったように、「死」についての教育をほとんど受けてこなかったことも問題だと思っている

映画や漫画の中で「死」を意識することはあっても、核家族化が進み、「死」と向き合うことは少なくなっているのではないか

私自身、父親が亡くなるまではあまり深く考えたことが無かったかも知れない

亡くなってから「死」について考えるようになり、それらについての本もたくさん読んだ

だからそれぞれの立場の人がそれぞれの意見で「安楽死」について賛成か反対かを決めるのではなくて、きちんと教育を受けた上でそれぞれの意見を話し合わなければいけないと思う

人工呼吸器一つにしても医療についての知識は一般的にはほとんど知られていない

例えば、自分が難病やあるいは癌と診断されたらどうするのか

人工呼吸器は?点滴は?胃ろうは?

それらの知識がないままに、医師の説明を聞いて自分や家族の生死に関わる問題を決めなくてはならない

時間が十分にあれば、調べることもできるが、そんな時間や体力は本人にも家族にも残っていない

吉田ユカさんは家族や医師、看護師とそれができたのだと思う

もしかしたらご本人にとっては苦しい時間だったかもしれないが、

必要な時間であったはず

スイスで安楽死を遂げた女性にしても、家族との十分な話し合いがあったからこそ、家族も彼女の死を受け入れることができた

日本には医療保険制度があるおかげで安心して暮らせる一方、健康や病気に対する意識が低いのかも知れない

特に日本では「ピンピンコロリ」と言われる思想があって、「人に迷惑をかけたくない」と考える人も多いと思うが、

私が出会ったALS患者さんは「自分にできなくても、誰かに手伝ってもらってできることが大切」と語ってくれた

とても考えさせられる言葉だった

映画「こんな夜更けにバナナかよ」の主人公(鹿野さん)は筋ジストロフィーという難病を抱え、人工呼吸器をつけながらも人生を楽しんでいるようだった

キャッチコピーは「体は不自由、心は自由!」だったけれど、その通り、心は誰よりも自由だと思った

車いすの天才科学者スティーブン・ホーキング博士もALSという難病を患いながら重度障害者意思伝達装置を使ってスピーチを行う姿を見て(しかも冗談まで)、「病気や障がいがあってもその人らしく生きることはできる」と改めて思った

本の感想から話が脱線したが、

当たり前のことだけど「死」は自分や大切な人、誰にでも起こり得ることだから、慌てない為にも事前の準備は必要だと思う

その為に、勉強して、話し合う必要があるのではないか

最後に、

私の中で、死生観やQOL(Quality of Life;生活の質)に関わると思う映画を紹介します

・こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話(2018)

・長いお別れ(2019)

・世界一キライなあなたに(2015)

・エンディングノート(2011)

・湯を沸かすほどの熱い愛(2016)

作品を通して何かを考えるきっかけになればと思います

この記事が参加している募集

読書感想文