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aiverの音楽的な遍歴について

はじめに

 aiverは僕が大学院に在籍していた頃に結成したバンド/アートコレクティブです。バンド/アートコレクティブとは言っているものの、DJセット+VJで演奏する場合もありますし、バンドのみで演奏する場合もあります。以前投稿した記事に記載してある通り、"テクニカルな技術とサンプリング発想をベースとした【音楽/映像/デザイン】表現を試みる共同体"という表現が最も簡潔で、かつ具体的かと思いますが諸々の便宜上バンド/アートコレクティブと表記しています。実際問題音楽を中心に色々とやる人達、くらいの認識をしていただいてもあまり問題はありません。

公開することについて

 この投稿(ないし連載)では僕らがどのような考えに基づき制作しているか、実際にどのような創意工夫を凝らして制作しているのか、ひいては何故制作をしているか、まで赤裸々に記述するつもりです(あくまで自己認識的に捉える範囲内で、ですが)。
 往々にしてアーティストは秘匿性を一つの演出装置として用いる場合が多いことも重々承知はしていますが、それでも尚僕らは少なからずはこうして開かれた場所で僕ら自身のことを語るつもりです。その理由を簡潔に述べると下記の通りです。

1.オープンソースの思想に共感するため
2.思想を展開した上で共感してくれる協力者が欲しいと思っているため(特にエンジニアリングに強い人を求めています)
3-1.設計思想と制作過程、両方向からの視点をトレース可能なテクストを提供することで、作品への「巻き込み」を最大化したいため。
3-2.根幹での設計思想を共有しながらも、相互のサンプリングによるプログレッシブな制作過程にも等しく価値を置いているため

 このような理由に基づき、これまた簡潔ではありますが1stシングルから最新作の『silver wave』までの流れをまとめてみました。

~aiver,fake clarity

 2018年3月に初のライブをアートスペースであるBankArt Studioで行って以降編成や演奏手法などを試行錯誤しながら7月頃までライブ活動を行っていました。ライブ活動は大変ですし、そのまま続けていてもあまり活動の幅が広がらないな、と感じたため一旦ライブ活動のペースを緩め楽曲制作に集中することになり、2019年3月末にようやく1stシングルをリリースすることになります。

 1stシングルの『aiver』のデモ自体は2017年春頃に自分が制作しておりますが、その当時僕が主に考えていたことは機械的なリズム/生成と身体的なリズム/生成との境界をいかに融和するか、であり、その観点に基づくとバンドアンサンブルに則った上でシンセサイザー(多義)を用いることは妥当な選択でありました。分かり易くはRadiohead、downy、shobaleader one、NERVなどがレファレンスとしてありましたが、ちょうどライブ活動を終えた頃の2018年の8月付近に、徐々にこの方針と発想では自分の求めている音楽は作れない、と感じ始めました。

 (そういった考えとはまた別軸で)大学院で行なっていたサンプリングについての研究を進める中でアンビエントミュージックや、DJ、ビートスイッチングなどを考察し始めた結果、楽曲構造が持ち得る支配性や固着性(端的に言えば物語性の強調感)に懐疑的になり、制作手法を変更しました。僕が制作したデモを幾人かがアレンジし、アレンジしたトラックをグループ間で交互にサンプリングして断片化していく、そして楽曲に存在する(僕の)所在を剥ぎ取っていく作業を導入し、制作された習作が1stシングルの『aiver』、そして2ndシングルの『fake clarity feat.marina seo』です。

chandelier,silver wave

 上記の手法を導入して以降少しずつ手応えが生まれてきたため、その方針を推進しようと考え、極度にその方向性を推進した作品が『chandelier feat.rowbai』、逆にその方向性が肉体化されていることを信じ、コンセプトを言語的なものからイメージに転換した作品が『silver wave』になります。

 これらの作品では
・現実世界をシミュレーションする
・コンテクスト重視のサンプリングばかりを過剰に重要視しない
・自らの先入観を自覚した上で、冒険的にサウンドをコラージュする
・僕らが聞いたことのない音楽を作る
などといったマインドセットを前提的に持って制作に臨んでいます。この辺りの話は非常に入り込んでいる部分もありますし、それ自体語るための記事があってもいいとは思っているのですが、なんにせよそんなテンションで制作しています。
 ただ(音楽制作における)大凡の思想背景は僕の論考『サンプラー的身体』からきています。非常に長くて申し訳ない、のでいつかまとめようとは思いますが、まとめた所で膨大になりそうなのが悩ましいです。とは言え深く興味がある方は是非冒頭だけでも読んでみてください。

 またaiverの音楽制作チームは
1.(大体の場合)僕がデモを制作
2.他のメンバーからのレビューを受ける
3.レビューを受けてアレンジ/ミックスを進める
4.再度レビューをし、僕の最終レビューを貫通すればマスタリングする
といったワークフローで制作を進めているため、どうしてもリリースペースが遅くなってしまいがち(僕が多分に気分屋であることも大きな要因な気もします)ですが、今年はまだ作品が幾つか出る予定です。それも是非楽しみにしていてほしいなと思います。

 最後にですが、『chandelier feat.rowbai』、『silver wave』などをリリースする中で多くの方からコメントなど頂けており、大変嬉しく思っています。僕らはエクスペリメンタルなインディーミュージックのシーンが国内で活性することを強く望んでいます。そしてまた、音楽家/芸術家の活動領域,活動可能性を拡張することにも意欲的です。なので、応援であったりポジティブなリアクションは当然ながら励みになっていますし、もし上記のような考えに共感いただける場合は今後ともサポートしていただけるとaiver一同大変喜びます。それではまた次の記事で。


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