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春告花

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菊崎知冬と桜井海音の話。小説家になろうやTwitterからの転載。出掛け先での体験をネタにしています。
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2021年4月の記事一覧

〈春雪〉海音

 仕事が終わる頃に雨が降っていた。スマホを見てメッセージを確認する。
 明日は休日だ。それを把握している知冬に、一緒にご飯を食べようと誘われている。隣の街だが車で飛ばせば大した時間はかからない。ああだこうだ考える前に、気持ちは行くと決まっていた。
 行き当たりばったりな知冬だ。家まで行ってみれば何を食べたいか聞かれ、寒いし鍋がいいと言えばこれから材料を買いに行くと言われた。一人で買いに行かせるのも

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〈散歩〉知冬

「今日はマイペースに行こう」
「いつもマイペースだろ」
 いつもならいつどこへ遊びに行くと前もって決めるけれど、今日はたまたま僕と海音の暇が被ったので、ノープランで僕の家に来てもらった。
 とりあえずくつろいでもらおうと、お菓子とお茶を用意する。
「よいとまけか」
 海音が紅茶に口をつけながらお菓子を見た。僕が自分で食べようと思って買った、よいとまけのはんぶんこ。
「嫌いだった?」
「食ったことな

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〈キクザキイチゲ〉知冬

あれから僕は転職して休みの多い仕事についた。
稼ぎが無くなったので車は手放した。
代わりにあっちこっち行って花の写真を撮りまくる休日を手に入れた。
他にも小説をめちゃくちゃ読むようになった。本屋に並んでいるものからネット小説まで。
それで、見つけてしまったんだよね、彼の小説。

ふらっと旅に出た少女がたくさんの美しい花を見て、それらを写真に収めて、綺麗な瞬間を綺麗なまま永遠に切り取る楽しさを知る話

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〈桜〉海音

どうしてこうなった。
あいつの運転する車に追いつけずに、呆然と見送る。
連絡してくれと教えられた電話番号は使われていないものだった。
「なんでだ」
ぐちゃぐちゃの胸のうちから出てきた声は思ったより静かなものだった。
もう会えない。二度と。
これは裏切りだ。

思い出される今日の思い出。
そう、全部今日のことだ。午前二時に桜の樹の下で出会ってから朝七時の現在まで。
それまでに俺たちは共に飯を食い俺の

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