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CSF(重要成功要因)とKGI/KPI

今回はCSFを取り上げたいと思います。CSFとはCritical Success Factorといい、重要成功要因や決定的成功要因などと訳されます。これはあるべき姿の成功に必要な定性的な要素であり、ITコーディネータ作成のプロセスガイドライン3.1のIT経営実現領域でも頻出する用語です。今回はCSFを説明しながら関連するKGI(Key Goal Indicator)、KPI(Key Performance Indicator)も併せて説明したいと思います。

なお、あるべき姿(AsIs ToBe)については以下を参照していただければと思います。

1.CSFとは
CSFは1961 年にマッキンゼー・アンド・カンパニーの顧問だった D. Ronald Daniel が提唱し、John F. Rockart が体系化し、「重要成功要因 (Critical Success Factor)」と名付けて、「Harvard Business Review」に 記事 を寄稿したのが始まりです。またCSF以外にもKSF(Key Success Factor)などともいわれますが意味としては同じです。CSFは企業(事業)の戦略やプロジェクトの成功に影響を与える要因で柱となるものです。そのCSFはいきなり出てくるものではなく、経営理念やドメイン、外部・内部環境分析などから課題導出を行う必要があります。よって企業やプロジェクトではこのCSFをもとに経営資源を適切に割り当て、KGI、KPIなどの指標に落とし込み管理する必要があります。


現状分析からKGI・KPIまでの流れ

2.CSFの導出
CSFは企業の戦略目標やプロジェクトの達成に大きく影響する指標です。つまり企業が目指すあるべき姿(AsIs ToBe) の達成には、まず企業環境や現状の問題を的確にとらえ課題を導出する必要がありますが、CSFはその課題が解決した状態として「○○年後に××になっている」、「○○年後に××ができている」という状態表現で考えていきます。大事なのは○○で「いつ」を意識することで、例えば「5年後に精度の高いAI需要予測システムを利活用できている」このような状態表現を用いて表します。これが戦略の柱として経営ビジョンやビジネスモデル要素となります。実際にCSFを導出するためには導出した課題をカテゴリに分け、そのカテゴリごとにCSFを導出していきます。カテゴリは、商品・サービス、販売・マーケティング、購買・物流、人材・組織などがあり、課題をそのカテゴリに分類します。各カテゴリには複数の課題が入ったり、ある課題が複数のカテゴリに入ることもあります。


CSFの導出

3.KGI/KPI
CSFはあるべき姿の達成に重要な要素ですが、同時にKGIやKPIなどの定量的な指標にも影響を与えます。これらはCSFを起点にブレークダウンして最終的な目標数値であるKGI、そしてそのKGIを達成するために必要な指標であるKPIを定義していきます。KPIは日々管理する指標として変数で定義します。例えば売上目標を設定した場合、

売上=平均単価×量(顧客数)×受注率

上記のようなかたちで算出できますが、KPIとして定義するのは管理ができる、変動する(変数)でなければなりません。この例では顧客数と受注率が当てはまります。平均単価は基本的に変動しない定数ですのでKPIとしては好ましくありません。そして、さらに量と受注率どちらをKPIにするかを考えます。これは複数のKPIが存在した場合、どれが影響を与えたかが分かりづらいことや、1つに絞った方が注力できるなどがあります。ただ実際には複数のKPIを設定することはあります。

4.KGI/KPIの定義方法
例えばKPIを受注率にした場合、その定量的な数値とアクションプランを考えますがこのKPIはCSFと関係していなければなりません。では前述のCSFの例である「5年後に精度の高いAI需要予測システムを利活用できている」を起点にKGI、KPIを定義するにはどのようにすればよいでしょうか。

まず、このCSFが導出された背景として、商品を仕入れて販売する企業で需要予測について従業員それぞれの勘や経験に頼っているうえ、その精度が低くニーズに合った商品が販売できていない(売り上げが伸びない)場合を想定してみましょう。これは問題点ですが、その課題としては精度の高いAI需要予測システム導入が考えられます。そしてCSFは「いつ」を意識する必要があるので、5年とし、さらにAI需要予測システム導入後それが十分に利活用できていることとなります。つまりAIによるデータに基づいた需要予測システムを利活用することで顧客ニーズをキャッチアップし、結果的に売り上げが伸びるというストーリーができます。その場合のKGIは売上高で、前年比110%など具体的な目標値を設定します。そしてKPIは需要予測システムの活用率となり、目標率は90%と定義できます。

いかがでしたでしょうか。KGI、KPIはよく耳にする言葉ですが、実際はCSFを起点に考える必要があり、この3つの要因、指標を活用してあるべき姿を決定できるようにしていただければと思います。

次回はCSFや課題を導出するために必要な、分析手法(フレームワーク)を説明したいと思います。