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書籍解説No.1 「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」

こんにちは。
前回の投稿はこちらからお願いいたします。

今回は、初めて書籍について綴ります。
自身にとって読書は単純な趣味ではなく、精神安定剤的役割を果たしており、疲れているときや物事へのモチベーションが低下している時には、とりあえず本を開いてそれに没頭する時間を創ります。また、仕事の合間や余暇を利用して活字に触れ、月に12~15冊のペースでまったりと読み進めています。
文献には当たりはずれがもちろんありますが、そのなかから感銘を受けた、あるいは影響を受けたものについて、ここでは紹介していきたいと思っています。

第一回目は「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略 著:リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット」です。

キーワード:長寿化、移行、資産(有形・無形)、自己投資、余暇、人的ネットワーク

「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略 リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット」

本書は「長寿化は厄災か、それとも恩恵か」というテーマを軸に、展開されていきます。

教育、医療、科学などの発展に伴って世界的に平均寿命は延び、とりわけ日本においては100歳を超えて生きる人がそう珍しいことでもなくなりつつあります。寿命が延びることで、老後に不安を覚える人も多いと思います。老後の蓄え、介護、年金など、不安材料は少なくありません。
このように、自身の将来を悲観的に捉える人も多いかもしれませんが、準備をしておくことで長寿化は「恩恵」へと変えられると本書は訴えています。

【時代に合わせたキャリア形成】

定年退職の一つの目安は60歳ないし65歳です。端的にいえば、80歳まで生きる人であれば、引退を迎えるまでに余生(20年ほど)の蓄えをしておけばいいということになります。
しかし、世界的に長寿化が進んでいる現代。もし、あなたが100歳まで生きるとしたらいかがでしょうか。60歳に引退したとして40年分の蓄えをしなければなりません。

今までは「3ステージ(教育・仕事・引退)」のキャリア形成が一般的でした。しかし、長寿化の進む現代でこのロールモデルに沿った人生設計をすれば、老後に支障をきたす可能性があります。通例通り大学を修了し、就職し、引退しても、引退後の人生が多く残ります。年金や保険に頼るにも、世代構成の変化も進んでいますから、老後に十分な額がもらえるかという不安は依然として拭えません。

そのため、この「3ステージ」のモデルを刷新する必要があると本書は訴えます。そこで提案されるのが「マルチステージ(より多くの移行を経験)」のキャリア形成です。寿命の延びは、翻すと教育への投資期間も延ばすことができるということになります。それによって選択肢の探索や創造の幅を広げることができ、更には多くの移行に備えて柔軟性を養うことが可能になります。
また、健康寿命の延びにも注目しなければありません。20年前の80歳と、今の80歳では、相対的にどちらがより健康的でしょうか。時代により「老いている」「若い」の概念は大きく変わります。来る長寿化の波に備えて、教育に費やす期間(大学?大学院?社会人入学?)、引退の年齢(60歳?80歳?)、パートナー同士の関係(片働き?両働き?)などを含めて新たな生き方を試みなければなりません。

【2つの資産】

「資産」という言葉は日常的に使う言葉ではないかもしれません。しかし、この要素は100年人生を生きるうえで欠かせないものです。
ここで述べる資産は有形資産無形資産の二つに分類されます。

【有形資産】
お金、家、収入、貯蓄など、目に見えて確認できるもの。

無形資産は以下の3つに分けられます。

【無形資産】
お金には換算できないもの。
①生産性資産 (スキル、知識、生産性)
②活力資産 (健康)
③変身資産 (好奇心、柔軟性、創造性)

100年人生を生き抜くうえで、無形資産は人生のあらゆる側面で極めて大きな役割を果たします。しかし、無形資産への投資が不可欠とはいえ、それには金銭的資産の減少は避けられません。
そのためにはセルフ・コントロール(自己抑制)が求められます。これは、目先の欲求に屈しない忍耐力や辛抱強さとも言い換えられるでしょう。無駄な出費を抑えて貯蓄をすることは、現在から未来へお金を移すことにつながるのです。「恩恵」を未来得られるように、今厳しい決断をする必要があるというわけです。

このように、有形資産と無形資産は切り離せるものではなく、両者はいわば相互関係にあります。有形資産は無形資産の形成を強く後押しし、無形資産は有形資産の形成を強く後押しします。
つまり、両者のバランスを取り、相乗効果を生み出す必要があるということです。

【余暇の過ごし方】

上述したようなマルチステージの人生、つまり多くの移行を経験する時代には、余暇の使い方も変化していきます。

単純に時間を消費するレクリエーション(娯楽)ではなく、無形資産を高めるためのリ・クリエーション(自己の再創造)に努めなければなりません。リ・クリエーションはいわば自己投資であり、自身のアイデンティティを変えるため、新たなライフスタイルを築くため、新しいスキルを身に付けるための投資です。

レクリエーション(娯楽):YouTubeを眺める、無計画に友人と出掛ける、無駄な買い物をする。
リ・クリエーション(自己の再創造)
:語学学習をする、資格を取得する、健康のために運動する。

長寿化の時代には、家族と友人、スキルと知識、健康と活力などの無形資産を充実させることの重要性が高まり、その投資が必要になります。

まとめると、寿命の延びによって必然的に余暇の時間が増え、これらの投資に費やせる時間も増えることになります。そのため、長寿化の恩恵を受けるには、自己投資(再創造)のために、目先の快楽(娯楽)を我慢しなければならないケースも出てきます。

【人間関係と評判】

ハーバード大学の「グラント研究」によると、有形資産が重要であることは間違いありませんが、人生に満足している人に共通する際立った要素の一つは、生涯を通じて強力な人間関係を築いていることでした。人生の幸福度は、お金よりも人間関係によるともいわれています。

こうした強力な人脈や人間関係を築いている人は、他の人の知識を容易に取り込み、自身の生産性を向上させ、イノベーションを促進できます。また、相互の信頼で結ばれたネットワーク内では、互いに似たようなスキルと専門知識を持っていることが多く、職業上の成長を支え合うことができるといいます。

更に、無形資産を築くうえで、高い評判を確立することは極めて重要であるといいます。評判とはいわば自らのこれまでの行動の資産です。評価をするのは常に他人であるために自身でそれをコントロールすることはできません。価値のあるスキルや知識を持っていても、利己的に行動したり他人を騙したりしてきた人は好ましい評判を得られず、それらを生産的に活用することはできません。
公正さと誠実さ、実行力、柔軟性、そして信頼性に関する高い評判は、様々な役割や職で価値があるため、多くの移行を経験する「マルチステージ」のキャリアにおいてはこうした自身のブランドと評判を管理しなければなりません。

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