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短歌

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2019年8月の記事一覧

中島裕介に応えて(4)

「詩客」に掲載された「短歌時評alpha(3) 権威主義的な詩客」について述べたい。

1. ミューズ発言について シュルレアリスムという文学運動が女性アーティストに与えた影響は、功罪相半ばするものであった。女性アーティストの社会・家庭からの自立の契機となりながらも、一方で「ミューズ」という語に象徴されるように女性を過剰に讃美し、それが芸術における自立の妨げになった。概括すればそうなるが、個々のア

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中島裕介に応えて(3)

 中島の短歌時評「ニューウェーブと『ミューズ』」は「問題として何より根深い」のは「水原に対して『ミューズ』という語を用いたこと」であるという。Twitterで、水原紫苑をニューウェーブのミューズだと発言したことは、時代錯誤の妄言であるというほかない。二重三重の錯誤がある。
 まず第一に、これは私個人の回顧であり、ニューウェーブの仲間たちには全く関わりのないことである。「フォルテ」同人の中で異彩を放

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中島裕介に応えて(2)

「言葉を危機に 『びあんか』をめぐって」という評論の初出は「フォルテ」4号(1990年発行)である。水原紫苑は、3号から同人になった。「フォルテ」は、ニューウェーブの拠点となった同人誌である。
「フォルテ」4号で、特集「水原紫苑『びあんか』の世界」が編まれた。坂井修一、中山明、穂村弘、大塚寅彦、小澤正邦、荻原裕幸、加藤治郎の7名が寄稿している。
 この4号刊行時点で『びあんか』は、同じく「フォルテ

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中島裕介に問う(1)結社と選歌

結社とは何か。選歌とは何か。現代における結社の存在理由とは何か。
小文は、「中島裕介に応えて(4)」の「3.権力について」の延長線上にある。
https://note.mu/jiro57/n/n30895f97efff



中島裕介が短歌結社誌「未来」に「月に一首だけ出す」理由が示されていた。伊舎堂仁のnoteに掲載された「山﨑修平インタビュー 20190705」にある。つまり、山﨑が中島に問

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『いちご杏仁』

第62回短歌研究新人賞応募作品です.
佳作に選んでいただきました.
「短歌 原稿用紙 書き方」から検索した,初めての連作.
大切な記念として残しておきます.

『いちご杏仁』

セックスが大事と言ったきみはいま背中を向けて寝息をたてる

どうしてかいつも平たい爪をした男にばかり抱かれてしまう

このからだ産む産まないが産めないになっていくまでただ血を流す

ベランダによくわからないハーブとかすくす

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左手の中指の先でボロボロにはがれたマニキュアみたいな人生