カキヌマ

掃溜プラスチックラブ

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    大切な誰かとの距離を感じた時に生まれる複雑な感情に、透明でおだやかな蓋をする。

    誰かの変化や、誰かの心が離れていってしまう予感がしたときの、悲しみや寂しさ、怒り、その複雑な感情に、透明でおだやかな蓋をする。 以前の私は、目の前からいなくなった人は死んだも同然だ!と息巻くほどの、かなりの喪失過激派だった。 それは物理的な距離に限らず、目的や信念の違いから生まれるような心情的な距離でもそうだ。 今生の別れとの区別はつけど、心や考えが離れていくことで生じるすれ違い、それで生まれる距離、それすらも死なのだと、歪に考えてきた。 でも、今思えば結局、その鬱陶し

      • ひるまの太陽は見れない

        感情が溢れる。 得体の知れない力が解き放たれている。 その力はまぶしくて、まぶしくて、昼間の太陽のように見えない。 感情の力は太陽のように、暗闇を照らし、暖め、時には成長を促す。 太陽が放つ、感情が放つ光は本来美しいもので、それはどんな気持ちが織りなすものでも変わらないはずだ。 しかし、その光が誰かに向けられた時、 その光は美しいだけではなくなる。 光は、明るい場所にいた人たちに影を落とすことだってできる。 それを受けた人の視覚を奪い、 ジリジリと痛みを与えることだっ

        • コインランドリーとタンゴ

          買ったばかりの青いジーンズを縮めてやろうと思い、コインランドリーにきた。 平日の昼間、洗濯機と乾燥機がぎゅうぎゅうに並んだ都会のそれじゃなくて、 東京から何時間か電車に乗った先のベッドタウン、県道沿いによくある広くて明るいコインランドリー。 大小様々な洗濯機では、色とりどりの布がくるくると回っていて、洗濯物を畳む用の大きくて綺麗なテーブルが複数並んでいる。 お客はわたししかおらず、唯一ひとけを感じられるものは、洗濯機と、管理室と書かれた扉の向こうに聞こえる足音と紙をめく

          • 新しい定規

            二十三歳になってしまった。毎日つけているゴールドのネックレスを触りながら思った。これは3年前、ハタチの記念に買ったものだ。 夏に生まれた子供らしく、肌はもとから小麦色だった。白くなろうと心がけた時もあったが、いくら家に引き篭もっていても黒いままで、でも、ゴールドのアクセサリーがよく似合っていると、我ながら思っていた。 このネックレスを買って3年、私はまだ家具の配置すら変わらない、同じ部屋に住んでいる。 変わったことといえば、大学を卒業したことぐらいだろうか、体重も身長も

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            “許せないこと”を大切に

            どうなりたいか。が明確でない時、大切な指標になるのは、”許せない事”だと思う。 私は入社して一ヶ月で会社を辞めた。 プライベートの自分の目標みたいなものはあった。ただ、会社におけるやりたい事や目標がなかった。自分の目標と会社における目標を繋げることもできなかった。 入社したばかりの頃、と言ってもとても最近のことだけれど、私は偽りの希望や夢を大いに語った。相手の夢にも称賛し、目を輝かせ、同じものを見ているフリをした。 このまま軌道に乗れば、きっと私もそう思えると思っていた

            黒い渦ばかり見える時

            少し前に、私の絵本がYouTubeのネタにされていると、友人から教えてもらいました。 そんな話、私にはきてなかったし、まあ世の中的に勝手に記事にしたり、勝手に何かにしたり、なんて良くある事なので、フラーっと、URLの先を見に行きました。 動画の内容は、かなり脚色され、多分ほかのエピソード(他人の)も盛り込まれ、私が勝手にお客さんに誘われたみたいになってました。正直私は、気持ち悪くてその後二度とその動画を見る事はありませんでした。 普通に怒ってますが、無視する事にしました。

            いつかの

            食傷した毎日に飽き飽きして、部屋の大部分を占めていたごく普通のカーペットを捨てた。 いい椅子を買いたいのは、良い本を読みたいからではなく、このダラダラと続くワンルームでの生活を抜け出したかったから。 雨が落ちる静寂の中に鳴り響く救急車のサイレン。 なんてことない私の平穏な夜は、誰かのどうしようもないくらい不安な夜と隣り合わせに座っている。 2年前、実家にいた猫が死んだ。一人っ子だった私は兄弟のようなその猫の死が悲しくて泣いた。 2年間ふとしたときにその猫を想

            2020/02/08 にっき

            インスタグラムとTwitter、誰からも来るはずのないLINEを一通り見ることを1回転として I に代入する。 Iを5回ほど繰り返したところで、金曜の夜に家にいる事が急に悔しくなり、Iから抜け出してウーバーイーツを開く。投げやりに強く画面を叩く反抗的な指先。もちろん夜中なのでどこもやってない。透過のかかった黒が私を出迎えた。 昼間には、あれだけ真面目に生きようと思っていたのになんという心の変わりようだ。私はこのひどく寒い夜に楽しんでいるであろうひと、 もしくはもう布団に

            麻袋

            誰もしらないよ 爪を立ててるなんて 誰もみてないよ 目に溜まる海なんて 出来なくてもいいよ 止まった時は重力があるし 大きい歯車が動かしてくれるかもしれないし 他力本願なんて言わないよ 流れるだけ どうしようもないの 砂のような僕たち ひと粒転がったところで 誰も見やしない 誰も気にも留めないの 生きる為に行きているのに 生きた心地がしないわ 進まなきゃと 進めないの間のお散歩 青と緑 強くも優しい風 こんな新しい空なのに五月蝿いのはなんで

            いぬになれなかったねこ

            大きく吠えれないのなら、 体を丸めて隠れていればよかった。 お腹を出して、優しいところだけを触って。 背中は見せないで、喉を鳴らして。 地面から1番近い所で空を見る。 湾曲した壁は私を囲い、屋根は暗く覆い被さり、 月の光が屋根を撫でる。 鋭く尖った歯は、苦しさを噛み砕き 長く伸びた爪は、私を傷つける 小さな心臓は、大きな愛を生み 長い尻尾が空を隠した。 鼓膜に広がるうねる音が 本当は自分のものだってことはわかってた。 強くいられないから、 今日も

            排泄とゴミとひとりとしあわせ

            お酒を飲んで限界だった。電車から降りて改札手前のトイレに行った。30ミリくらい残された流行の飲み物の容器や着た事のない服屋の紙袋が捨ててあった。用を足し、人感センサー機能がついた便器は立ち上がっただけで真っさらになった。 自宅よりもちょっとだけ広い洋室のトイレの中、ゴミと便器だけが綺麗だなと思った。 手を拭くはずだった伊勢丹で一枚千円のタオルはどこかに置き忘れたようだった。あまり好きではないけれど、空気圧で水を吹き飛ばすやつで滴をはらった。 定価四万円の服を一万で

            過去の夢

            僕たちはもう終わりだよ。と言った先に何か見えると思う? 僕は何も見えないと思うんだ。それどころか、 何も見えないどころか、先はない。終わりの先は暗闇すらないんだ。過去も幻想になる。幻想は夢になる。寝る時に見る夢と同じになるんだ。 僕たちはもう終わりだよ。それはきっと君のせいでも、僕のせいでもない。どちらも、良くも悪くも無かったんだよ。最初からね。 僕と君が顔を合わせなくなったら、思い出は僕の幻想になる。僕の脳の中だけに残っている、ただの信号になる。 君は笑うと八重

            日常の会話で生まれる言葉は軽い

            残念だけど日常の会話で生まれる人々の言葉は軽い。深く考えることもなく発せられる、傷つけも、癒しもしない言葉達は、言葉を受けた人の心に少しずつ溜まっていき、最後の1つで破裂する。軽くて無意味なものだった言葉達は、一瞬で凶器になることがある。 普段の生活で飛び交う言葉は、一見優しそうに見えるのに、悲しみの引き金を引いてしまったり、良かれと思って伝えた事が、相手を長い目で苦しめてしまっていることがあるはずで、 例えば、 断る事にあまり慣れていない人に、少しずつ無理を言ってしまう

            休日の天井

            今日がもう終わりを迎える夜10時。一日中天井を見て過ごしていた私に降りかかったのは漠然とした寂しさだった。 人と関わることを避けて、休日に遊びに行くことをしなかったのは、家から出るのが億劫になってしまったからだけど。毎回休日のこの時間になるとそうしなかった今日の自分を恨んだ。1日中何もしないでいようと思ったわけではない。やることは、めいいっぱいあったはずだった。昼前に起きて今まで、一体何をしていたんだろう。 今日は4つの天井を見た。リビングの天井をみて、空のお風呂

            19/05/12 合コン

            はじめまして〜。 何飲む?とりあえずビールの人!はーい。 え?カシスオレンジ?おっ早速個性出してきたね。 いや、良いんだよ。個性は大事だからね。 一杯目はビールだなんてメディアが与えたイメージだよ。票数が多いからみんなビールでいいよね?なんておかしな話だよ。良いよカシスオレンジね。 ビール5つとカシスオレンジください。 まあ、とりあえず自己紹介でもしようか。 じゃあ僕から。 B男です。25歳で〇〇っていう会社で働いてます。あ、そうそうよくCMでやってるやつね。 趣味は、

            19/05/10 悲しみのハードル

            目の前で男の子が転んだ。 くしゃっとした顔、目に涙が浮かぶのを見たが、その涙は流れることはなく、男の子はすぐに立ち上がった。 男の子のお母さんは言う、泣かなくて偉いね、強くなったね。 転んだ時の衝撃と、痛みと、悲しみは今も昔も変わらない。 知らないうちに悲しみのハードルが上がっている。 大人は口々に言う、滅多に泣かなくなったな。 小さい青い豚のキーホルダー。小学生の時大事にしていた物。チェーンが切れてどこかで落としてしまった。悲しくて、悔しくて泣いた。 今の