19/05/10 悲しみのハードル
目の前で男の子が転んだ。
くしゃっとした顔、目に涙が浮かぶのを見たが、その涙は流れることはなく、男の子はすぐに立ち上がった。
男の子のお母さんは言う、泣かなくて偉いね、強くなったね。
転んだ時の衝撃と、痛みと、悲しみは今も昔も変わらない。
知らないうちに悲しみのハードルが上がっている。
大人は口々に言う、滅多に泣かなくなったな。
小さい青い豚のキーホルダー。小学生の時大事にしていた物。チェーンが切れてどこかで落としてしまった。悲しくて、悔しくて泣いた。
今の私は、お気に入りの帽子をなくしても、頭がぐるぐるするだけで、涙がこぼれることはない。
悲しみのハードルを上げないで。
巷には涙を誘うテレビ番組。
100回泣ける。というキャッチコーピーの小説。
本当はそんなもの必要ないはずなのに。
他人のエピソードでしか泣けない私たち。
転んで、びっくりして、痛くて、泣く。
失くして、つらくて、悔しくて、泣く。
喉の奥が痛くなったら、目頭が熱くなったら、
自然に流れる涙を、頰を伝う感触を、
ただ感じでいれば良いんだと思う。
凄く、凄く、嬉しいです。ペンを買います。