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“許せないこと”を大切に

どうなりたいか。が明確でない時、大切な指標になるのは、”許せない事”だと思う。

私は入社して一ヶ月で会社を辞めた。
プライベートの自分の目標みたいなものはあった。ただ、会社におけるやりたい事や目標がなかった。自分の目標と会社における目標を繋げることもできなかった。

入社したばかりの頃、と言ってもとても最近のことだけれど、私は偽りの希望や夢を大いに語った。相手の夢にも称賛し、目を輝かせ、同じものを見ているフリをした。

このまま軌道に乗れば、きっと私もそう思えると思っていた。それと同時に、のめり込めるようになるまで、この会社のために何を頑張ればいいんだろう。とも思っていた。

それでも自分のキャリアのために、この仕事を頑張ろうという気持ちで毎日仕事をしていた。近い未来、わたしは絶対に強くてカッコいい人間になっている。そう言う希望を持っていた。

人は皆、何かのために行動する。時には、周りも見えなくなるくらい、何かを変えたい。と奮起する。
私は、会社を通してそれらを夢見る事ができなかった。だからどうしたいかも分からないんだと思った。

でも、それでもまた朝が来て、朝が来て、月曜日が来て、仕事をする。
少しの達成感と疲労感だけが、頑張れているのかもしれない、明日にはみんなが見ているものが見えるかもしれない、と思える証だった。

仕事は楽しかった。沢山の事を任せて貰えたし、知らなかった事も教えてもらった。上司もとても気持ちの良い人ばかりだった。たまに休日に仕事をしたり、朝まで仕事する事もあったけどそれはそれで楽しかった。

この仕事を頑張って、人間としてまた一つパワーアップしよう。という気持ちをもって、毎日頑張っていたと思う。たくさん考えて、たくさん泣いたりもしたけれど、それでも仕事が辛いからと言って辞めようなんて一度も思ったことはなかった。

だけど、1つだけ、どうしても許せない事があった。
それは言葉だ。人を傷つける言葉が聞こえる職場だったこと。そんな人の元で働きたくないと切に思った。

常に、錆びたナイフを、力任せに突き刺されたようた感覚だった。

怖くて自分の意見を言えない時もあった。
ギザギザに切られ、傷ついた皮膚は、なかなか治らない。

自分に対して発せられた言葉でも、誰かに対して発せられた言葉でも、そのナイフの効果は絶大だった。

中学生や高校生の時、たまに教室に流れる不穏な空気と同じような物を感じた。

大人になった今では、他人の言葉で誰かの評価を変えることは少なくなったけどそんな言葉が存在する職場で働くことは、とても辛いことだった。

怖くなり、逃げたくなった。早く逃げようと思った。

人を傷つける言葉。それが私の許せない事だ。
そういう言葉を聞くたびに、私は明るく笑い、批判するように意見した。私の言葉の意味が伝わることがないなんて、分からなかった。

世の中を渡るに為に。と身につけたはずの処世術が、自分の身を締め付けている。相手に向ける笑顔や言葉、それらが結局、自分のためにならなかった事に、絶望した。

自分が一番なりたくない人間になってしまったと思った。悲しかった。

そしてその深い悲しみの中に、ふつふつとマグマのように湧き上がる怒りがあった。
私はそういう、人を傷つけるような言葉達を、その言葉達と戦う意志を持てなかった自分を、どうしても許せなかった。

パワハラやモラハラ、セクハラなど、最近はいろんなハラスメントが、たった4文字で表されている。
私は、いろんなハラスメントを、傷ついた気持ちを、傷つけた人間を、たった4文字で収めてはいけないと思う。
そんなもの、圧力なんかではない、それを力として認めていけない。

川沿いにいる虫の大群のようなものだ。その場を去らなければずっと顔の周りに煩く居続ける。そんなようなものだ。
そんなもの、手で振り払ってしまえばいい。

もちろん相手にも都合があったはずだ、人を従えるなんてとても難しい事だと思う。今の自分では到底分かるはずもない。私は弱かった。

少し、嫌なことがあっただけで辞めてしまうなんて、と思われるかもしれない。

戦わずに放棄した、と言われるかもしれない。

それは事実だ。間違ってない。

逃げるように辞めることになってしまったけれど、
それでも、これからもずっと、社会の荒波に揉まれ続けなければならない。

逃げても逃げても、また、何かが待ち受けているに決まってる。

だからこそ、これからの私の為に、私は私の許せない気持ちを一番に優先した。
今現在、自分が出せる手札の中で一番挑戦的な選択をした。これから目の前に現れる、沢山の理不尽や、沢山の辛いことをきちんと乗り越えられるように。

何かから逃げる時、何かに抗う時、一つだけ、許せない事を見つけるのがいいと思う。

許せない事の為に行動すれば、錆びたナイフが命中するのを、かすり傷くらいにする事だって出来る。自分のなりたくない人間になる事もないだろう。

そして、許せない事のために行動したことを、後悔する必要なんて絶対にない。

周りになんて言われようと、何て思われようと、許せない気持ちに忠実になれた事を誇りに思うのだ。

凄く、凄く、嬉しいです。ペンを買います。