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家族という呪い

1歩踏み出した先に

1歩って?
それは1年生が2年生になるみたいに、突然契約終了を言い渡されるみたいに、強制的に1歩を踏み出す1歩。
多くの人が中学校を卒業すると高校に行くように、学校卒業すると就職するみたいに、選ぶことができるのにエスカレーター式にそれが当たり前なんだと思って「気づいたら選んでた」なんて言う呪いのような抗えない1歩もある。
耐えられないから辞める、どうしようもないから働くなんていう「仕方がないな自分に言い聞かせる」屁理屈的な1歩もあれば、新しいことに挑戦したいから辞める、この子を育てたいからと働くなんていう「ポジティブ最高!」的な1歩もある。
そして、「ここに踏みとどまる」と言うことを覚悟する動かない1歩もある。どれにしても1歩を踏み出すと言うのは、決断である。

私の最近の『エイヤァ!!』と気合を入れて始めた1歩は、父との関係性だ。
私は、とにかく父が苦手だ。どのくらい苦手かというと、カウンセリングに通うほど苦手だ。結構ガチな苦手なのだ。父は声が大きいので私は声が大きい人が怖い。父は、自分の機嫌を自分で取ることができないので、嫌なことがあると不機嫌という空気を撒き散らし、周りの人に気を遣わせる。そして彼は、「周りがわからないからそうしてやった」と思っていてそのことが悪いと思っていない。人のことを馬鹿にしてどうにか自分を保とうとするし、うまくいかないと大きな声で怒る。私は、自分をコントロールできない父を見てとにかく怖かった。自分勝手なら放置すればいいと思うのだけれど、父は自分に自信がないので独占欲が強い。なので構ってあげないともう手がつけられなくなってしまうのだ。
このように私が父のことを分析できているのも、カウンセリングの力を借りたからで、それまではそんな分析すらできなかった。苦手なことにすら気づかなかったのだから。

そんな父と一緒に暮らす母を大切にしたい。
こんな父なので子育てらしい事は何もしていない。父に翻弄される母を見て育ってきた。父を理由に、母に親孝行ができないなんて事はしたくない。そう思い家族旅行をすることにした。それは、私の父への気持ちが少しでも変わればという期待もあった。

まずは、母に旅行を誘う。母に家族旅行に行かないかと誘う。そして父に聞いてもらうよう話をする。
そこで父の問題が湧き上がった。父は、自分に相談がこなかったことが面白くないのだ。日にちを決めて相談すると「その日は都合が悪いかもしれない。」などと予定がないのに言うのだ。すでに始まる前から私はため息をついた。
母は、父の機嫌をとりながら時間をかけて説得する。せっかくの母への親孝行なのに、母が心を砕く。うまくいかない物である。
目標は、母と旅行に行くこと。そして父も一緒でないと、母と二人で行くことにしてしまうと、きっと父は母に嫌がらせをするのは目に見えている。だから母を思って父も連れていくのだ。目標は、母への親孝行。
そう自分に言い聞かせて、やめようと思う気持ちを踏みとどめる。

母がどうにか父をなだめて旅行は決行された。後から聞くと母は、父にどうしても行きたいと泣きついたそうだ。本音なのか演技達者なのかは聞かないことにした。母に対して申し訳ないなと思いながら、その分沢山一緒に思い出を作ろうと思った。
旅行に行っても、父は相変わらずの状態。私が運転するのが気に食わない様子で機嫌が悪い。旅行中父の嫌なところは、明確になるばかりで余計に嫌いになった。せっかく1歩踏み出したのに、嫌い度が増したのだ。

「この1歩間違いだったかもしれない。」そう思っていた頃にあるラジオを聞いた。
「家族だからって仲良しだとは限らない。」
ラジオでそう言っていた。ラジオに出てきた家族は、「私たち家族は、それぞれが簡単に離れることができてしまうのがわかってる。だから家族のそれぞれが繋がる努力をしている。」という話だったのだけれど逆もまた然りである。私は、家族だからといって我慢する必要もないし、家族だからといって一緒にいる必要もないのだ。
「大切な人は、家族でないといけないというのは呪いなんだ。」
と思った。家族であったとしても、人間が集まって生きていく以上何かしら努力をしなければならない。つまり努力しないと一緒にいる事は、難しいのだ。
私が思ってる呪いの家族との距離感をもう少し遠くしよう。
家族だからと言う理由を少し少なくしよう。
家族なんだからと思うことを、でも別の人格なのだからと許容しよう。嫌とは言えないのなら、距離を取ろう。
そして私のことを考えてくれる人、その人のことを思って私が萎縮することなく話ができる人、それが私にとって大切な人でその人に心を砕こう。

私にとっての1歩踏み出すと言うのは、「両親と旅行に行く」だと思っていたけれど実は、「家族という呪いから放たれる」と言うことだった。
それは、旅行に行ったことで気づくことができた。
まるで高校に行くように、就職するように、当たり前だと言う呪いで繋がっていた家族の形が私の中で変わっていく。
その1歩踏み出してみて、今はその1歩で溺れそうである。
頭ではわかっているのだけれど、どうしても今までの呪いからは簡単に離れられない。世の中の当たり前に反する事は難しい。まるで私がとても悪いことをしているかのように感じてしまう。
それでも私は、その1歩を踏み出した。
母が可哀想な気持ちを封印して、家族と仲がいい子を演じるのを封印して。家族との距離を、私が父を嫌いにならない程度の距離感を探している。

踏み出した1歩は、今間違ってないと信じている。そうすることでもっと大切な人を大切にすることができる。世の中は呪いでいっぱいなのだから、うまく折り合いがつかないこともあると思う。
それでも私は、1歩前に進む。
でももし間違っていれば、その時また違う1歩踏み出せばいいだけだ。私の挑戦は続く。新しい関係性。新しい家族との距離感。その先には一体何があるのだろう。



#一歩踏みだした先に

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