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愛する人との別れや心残りがある時に


私自身が大切な人との別れを受け入れられなかった時期がありました。
『 何故?どうして?』ってずっとその想いに囚われて完全に自分を見失っていました。

毎日、胸が苦しくて、どう生きていけばいいかわからなくなっていて、このまま自分の感情が執着に繋がるのは嫌だと思った時に、友人から教えてもらった詩があります。その詩を読んだ時、心が軽くなり、執着心が雪解けのようにゆっくり、優しく解き放たれていったのでした。

その詩の作者は今から50年以上前に、病により41歳の若さで、1冊の詩集「動物哀歌」を残してこの世を去ったのでした。

今、大切な人との別れ、愛している人や家族と会えないなど、愛することに心痛めてる方がいらしたら、何か伝わればと思い書かせていただきました。

村上昭夫さんの詩集より


『 航海を祈る 』


それだけ言えば分ってくる
船について知っているひとつの言葉
安全なる航海を祈る

その言葉で分ってくる
その船が何処から来たのか分らなくても
何処へ行くのか分ってくる

寄辺のない不安な大洋の中に
誰もが去り果てた暗いくらがりの中に
船と船とが交しあうひとつの言葉
安全なる航海を祈る

それを呪文のように唱えていると
するとあなたが分ってくる
あなたが何処から来たのか分らなくても
何処へ行くのか分ってくる
あなたを醜く憎んでいた人は分らなくても
あなたを朝焼けのくれないの極みのように愛している
ひとりの人が分ってくる

あるいは荒れた茨の茂みの中の
一羽のつぐみが分ってくる
削られたこげ茶色の山肌の
巨熊のかなしみが分ってくる

白い一抹の航跡を残して
船と船とが消えてゆく時
遠くひとすじに知らせ合う
たったひとつの言葉
安全なる航海を祈る

1967年 村上昭夫氏
動物哀歌」より



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