見出し画像

「いのち」の姿を描く


 「死」と「生」を一直線で結び、「いのち」のあり方を示した「城崎にて」は、絶品でした。


 命拾いをした主人公が静養した城崎で。あまりに普段の生活に、そして素朴な出来事に出会う。
 蜂の死、串鼠、さらにイモリの死に様。平生であれば気にも止まらない出来事が、フェーテルの世界で彼にリアルさを眼覚させる。私は串鼠の描写に心を打たれた。小動物の動きを通じ、いきおい人間の「生の尊さ」を、問いかけられた。
 贅肉の無い美文は、近代文学最高峰の短編小説と位置づけたい。他の作品も、志賀直哉ならではの語り口です。しかし、「城崎にて」を読むがために買い求めても、読者を満足させてくれます。私は、何時か暗唱したいと思い、繰り返し読み続けています。(Amazon書評に加筆)

かわせみ💎

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?