見出し画像

#2就職、転職、副業。いい仕事に出会う3つの原則

「ジョブ型」の導入で就活・転職はどう変わる?

そもそも欧米流のジョブ型は、採用に「新卒」や「中途」という概念がほぼありません。

ジョブ型企業の採用ステップは以下の通りです。

各職種(ジョブ)に系ツインや新規補充の必要が出る
①社内でその職(ジョブ)を遂行できる人を探す
→社外で適任者を探す
②情報を開示し、希望者の「手挙げ」を募る
→希望者がその仕事をできそうか判断する
→社外で適任者を探す

雇うのはもちろん、そのジョブが入社後すぐにできるという条件を満たす人、あるいはそれに近い人、限定です。

そのため特に欧州ではスキルが未成熟な若年層ほど失業率が高く、社会問題化しているほどです。

一方日本では、スキルがない学生を現場によるOJTで鍛えて一人前に育成するという新卒採用の仕組みが発達しているため、若年失業率が欧米ほど高くありません

また、ジョブ型雇用を導入する企業も、大半が優秀なポテンシャル人材を一気に雇える利便性の良さから、新卒一括採用を完全にやめる気はないはずです。

そこで、今後、「日本式ジョブ型」として定着するであろうと見込まれるのが、メンバーシップ型とジョブ型のハイブリット(混合)型です。

まずは新卒採用を、特定の職務に限定しない「総合職採用」コースと、AIやリーガルなど入社後の職務を限定した「ジョブ型採用」コースの2種に分けます。そして、「総合職採用」で入社した人も、多様な仕事を経験した30歳程度を目安に今後どのジョブを軸にキャリアを形成してゆくかを決定させ、その後はその職務内で昇進してゆくことを目指すスタイルです。

もっとも、このハイブリッド型新卒採用も、いつまで続くかはわかりません。

新卒でも即戦力を求めるという欧米型のジョブ型就活が、日本でも広がる可能性もあります。

実際、日本を代表する企業の一つでほかの日本企業への影響力も強いソニーは既に新卒採用も含めて、完全「ジョブ型」ともいえる採用活動を実現しています。

配属のマッチングを高めるのはもちろんのこと、「ソニーに入りたい」ではなく、「ソニーで何をしたいか」を考えてもらい、就職活動の段階から自分のファーストキャリアを自分自身で選択してもらいたいという意味も込められています。

ソニーは、職種別の採用や中途の積極採用などで、人事の先鞭をつけてきた会社です。ソニーがやるのならわが社もと今後、こうしたジョブ型新卒採用が広がってゆくことは想像に難しくありません。

ジョブ型で開く「転職格差」

一方、ジョブ型雇用が浸透すると、ビジネスパーソンの転職はどう変わるのでしょうか。

結論から言うと、ジョブ型雇用が広がると転職件数も転職者も増えて、転職がより一層活発化することが予想されます。

なぜなら、各仕事の定義やそれができる人の条件が明確になり、業務を切り出しやすくなるからです。

すると、企業は、切り出した各ジョブの適正人数や不足人数を計算しやすくなります。

これにより、社内外から人材不測の仕事に人を募集しやすくもなるし、人材側もまた、自分のできることが明確な人であれば、自分にフィットした仕事に応募しやすくなります。

さらに、各ジョブ(職種)の市場からのニーズが高ければ高いほど、給料や待遇の良い転職が可能になります。

各仕事のジョブディスクリプション(職務記述書:各ジョブの「やること」やその仕事がやれる人の要件定義などが書かれたもの)を満たす人は、よりよい条件を求めて転職し、人材流動化はますます進むと想定されます。

ジョブ型が一般化するとそのほかの職種の一般的な社員の給料も、限りなく市場価値に近づいていくことが予想されます。

なぜなら、どの職種も優秀な人を採用するためには、その人の価値に見合った給料を提示する必要があり、転職者が会社に多数入ってくると公平感の観点から、自然と「社内の人」の給料も適正価格に収れんしてゆくからです。

ジョブ型時代のキャリアパス

もっとも、「ジョブ型」雇用が広がったとしても、働く人がずっと同じ専門の仕事を続けるか、というと必ずしもそうではありません

例えば、自分は一生、貴社をやってくと決めた場合、そのジョブのニーズが存在し、そのジョブが求める仕事を遂行できる限りは、その職を続けることは可能でしょう。

でも、会社がその人を「将来の会社の屋台骨を支える経営人材になってほしい」とした場合、長期的な育成計画の元、戦略的に営業やあるいは経営企画などにジョブローテーションしていくかもしれません。

あるいは、本人が会社に縛られるのではなく、新しい挑戦がしたいとして、別の職種や業種を目指す場合もあるでしょう。

さらには、同じ職種でも、その中身がまるで変っていくことだって十分にあり得ます。

増える「またぎ転職」

一方で、いまだかつてなかった「新しい仕事」も増えています。

例えば、データサイエンティスト、UXデザイナー、カスタマーサクセス、AIエンジニア、デジタルマーケターといった仕事は、5年前は現在ほどの人数はいなかった仕事です。

しかし、いずれの職種も市場のニーズが高まり、その需要を満たすほどの人数が足りず、おのずと売り手市場になっています。

今後もこのように時代の要請に呼応して人材の補給が必要な新職種は続々と増えてゆくでしょう。

さらに、人事や法務といった既存職種でも、時代の変化や各企業の戦略の転換などにより、より人数を補充したい重要な職種とそうではない職種に分かれてゆきます。

すると、人手不足の職種には、各仕事に求められるスキルに近い技能を持つ「周辺職種」から、人材を集めてくるしかありません。だからこそ現在は、職種や業種を「またぐ」転職が増えています。

「またぎ転職」が増えている最大の理由は、前述のように、その仕事の経験者ではなくとも人手が欲しい会社が増えているからです。

若い世代が「またぎ転職」に魅力を感じるのはなぜでしょうか。

新卒一括採用で総合職として入社し、会社主導で配属された結果、その職種にミスマッチを感じた人が、新しいチャンスを探しに行っていることまたや、伸びている業種・職種に移動したほうが、仕事内容が面白いし、新しいスキルも身につくと考える人が多いからということが考えられます。

「ジョブ型」時代のキャリアパス

会社は「経歴」より「スキル」を見る

「新しい仕事」も増え、既存の仕事の内容も変わりました。なおかつ、日本では慢性的な人手不足が続いており、求人ポストの仕事の経験者を雇うのは困難であります。

そのため、企業の採用担当者は、候補者の「前職」より「スキル」を重視する傾向が高まっています。

例えば、旬の職種「カスタマーサクセス」は仕事そのものが新しすぎて、前職もカスタマーサクセスの人はあまりいない。

カスタマーサクセス:
自社サービスを使ってくれているクライアントにサービスのより有効な使い方を指南したり、追加サービスを営業したりする。
求められるスキルが共通する、営業経験者、マーケティング経験者、大規模ストアの店長などの出身者が多いという

その他の「またぎ転職」例としては、転職者のキャリア相談に乗る「キャリアカウンセラー」も塾講師、キャビンアテンダント、営業、新聞記者など前職が様々な人が多い職種の一つです。

ただ、すべて人と接し、相手のニーズや本園を引き出すという意味で、「共通するスキル」が求められる仕事です。

つまり、職種をまたいで活用できる「共通するスキル」(=ポータブル・スキル)があれば、より市場ニーズが高い異職種への転職は十分可能と言えます。

となると重要になるのは、キャリアの初期で、ほかの職種や業種にポータブル(持ち運び)可能な技能や経験を蓄えておくことが重要です。

そのスキルは世の中が変わろうが、今所属している会社がなくなろうが、だれにも奪われることはありません。

キャリアは自分で創る時代

「ジョブ型社会」の浸透に伴い、自分の職業人生を自分で決める時代になりました。

終身雇用が前提だと、社員は一つの会社でキャリアを積んでいくことになるため、労働市場での自分の価値を高めるよりも、社内人脈を作る、社内政治を駆使するなど能力アップ以外の別ゲームに熱心になりがちです。

しかし、これでは社員全体の能力の底上げにはなりません。

ましてや、どの企業も右肩上がりではなく、今後のビジネスモデルをどうすべきかを模索している時代です。

例えば商社なら、これまでは炭素を含む資源投資が稼ぎ頭でしたが、環境配慮やサステナビリティ(持続可能な社会)などの文脈から「脱炭素」が問われるようになり、三菱商事をはじめ、多くの使用者が炭素ビジネスからの撤退を決めている。

だからこそ、三井物産が動画広告事業に進出するなど新しい領域に種をまきながらビジネスの創出を試みています。

これまでの延長線上で事業を行うことが困難になり、時代はますます正解がない世界になってきています。

そう考えると個人のキャリア形成も、企業戦略と同様に自分は何を専門にしてキャリアの土台を作り、その後は、どの分野にどれだけのリソースを投入してゆくか、といった将来に向けての「構想力」が求められるといえます。

翻って、ただ上司や会社から言われたことを「なんでもやります」という指示待ち社員は、今後、事業のスピードについていけず、苦戦を強いられる可能性が高いです。

つまり、キャリア・オーナーシップ(自らの仕事は自分で考え自分で決める当事者意識)が、強く求められています。

20代で専門を作り、30歳以降は「広げる」

人材マネジメントの世界では、よく「T字型人材」が最強と言われます。

T字型人材:
自分の下地となる専門が深いうえで、横に広がる得意領域を持つ人材

では、なぜ「初期に専門を深める」とキャリア展望が開けるのか?

ワークス研究所によると、キャリア初期に専門を深めた人のキャリア展望が高い要因は、確たる専門性があるからこそ、仕事の進め方ややり方を自分で決められることだといいます。

その意味で、キャリアの初期のうちに自分の専門性を深められる環境に身を置くこと、さらに言うなら、自分で物事を決められる、裁量の大きい仕事や職場を見つけることも大切なことだといえます。

副業・兼業はジョブをお試しで変えるチャンス

確たる専門性ができれば、その後のキャリアとして副業・兼業がしやすい。

最近では、リクルートやソフトバンク、新生銀行やユニ・チャーム、ロート製薬など社員の副業を許可する会社が増えてきました。

最近の副業の傾向としてよく見られるのが以下の2パターンです。

1.何らかのプロ人材が「ご意見番」として何社かで”複業”するケース
2.ジョブチェンジ(職種変え)に挑戦したい人が「お試し」で副業するケース

1.の場合、正社員として人材を採用することが難しい職種、たとえばCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー:最高マーケティング責任者)などは、候補者となる人材が少ないため優秀な人材の取り合いとなり、結果として非正社員の「パートタイムCMO」として雇い入れるケースが増えています。

また、ヤフーやユニリーバ、福岡市などのように副業者を受け入れて、組織を変えるアイデアや新サービスのプランなどを意見してもらう会社もこのパターンに相当するでしょう。

自身の高い専門性や高い仕事完遂能力を持つ人は、ゆくゆくは、副業兼業、独立、起業などの様々な選択肢が開かれ、自分のライフスタイルや価値観にあった自由な働き方ができるようになっているといえます。

2.の場合、本業から少しスライドさせた仕事に副業で挑み、その仕事のノウハウを実践で身につけてゆくパターンです。

副業の方がより自分の得意や価値観に合うと思えば、副業を本業に変える人もいます。

最近は、自分のスキルなどプロフィールを書き込めば、それに見合った副業を紹介してくれるWebサービスも増えています。

転職というといかにもハードルが高いが、まずは副業で、自分の興味がある仕事に挑戦しやすい土台は整いつつあります。

仕事選び3原則

新卒入社を含め、キャリアの初期にはどのような点に留意して仕事を選べばいいのだろうか。

1.得意が活かせる
2.価値観が合う
3.将来性が高い

これらを兼ね備えることで、「よい仕事」と言える。

なぜこの3つが重要なのでしょうか。

まず強調したいのは、その人にとっての「良い仕事=適職」は人によってバラバラであり、違うということです。

そもそも職業に優劣はありません。あるのは、その人にとって合うか合わないかだけです。

その「合う」にも3つの方向性があります。

方向性1:自分の得意なことと、その仕事で求められるスキルセットとの適応
方向性2:その仕事をする意義や目的に共感できるか(自分の価値観と合うか)

この2つを満たすだけでも十分、適職と言えますが、もしその仕事が将来的に消滅してしまうといった危険性があると、心配になります。

その仕事の将来性が高い、あるいはその職業経験が将来につながりやすいと、末広がりのキャリアが開けていく可能性が高いといえそうです。

こうした理由から、以下の3拍子がそろった仕事が、その人にとっての「いい仕事」と言えるのでしょう。

1.得意が活かせる
2.価値観が合う
3.将来性が高い

自分の得意を棚卸しする

では、自分の得意なことは、どのように発見し、仕事と接続したらよいのでしょうか。

自分はなにができるかを1年に1回書き出してみる

「自分ができること」を棚卸しする5つの効果

1.今日まで自分はなにをしてきたかが再確認できる
2.「今日まで」を俯瞰・客観視することで、自身のキャリアにおける強み・弱みが自覚できる
3.自分が目指すポジションやジョブ(職)に、今の自分の能力が満たすかどうかがわかる
4.次に何を目指せばよいのか、「明日から」身に着けるべきスキルや注力するべき仕事がわかる
5.クールダウンして、やる気がでる

自分だったら、今の自分を雇うかと自問しながら考えてみる行為こそが、キャリアの主役を「会社」ではなく「自分」にし、主体的になるための第一歩です。

自分の価値観を知る

一方、自分の価値観と合った仕事をすることが、なぜ重要なのか。

なぜなら、仕事に明確な目的を持った時、人の能力は最大化するからです。

仕事をやり切るモチベーションは、「現状(の自分)」と「ビジョン(ありたい姿)」とのギャップが明確であればあるほど高まります。

では、現状の自分とビジョン、そしてその間にあるギャップ(=動機の源)を知るためにはなにが必要なのか。

重要なのは、自分が日ごろどのような価値判断をしているかを知ることです。

我々の価値判断(=価値観)の前提には過去の「経験」から味わった「感情」が結びついてるといいます。

人が思考し、何らかの行動を選択している背景には、必ず「感情」が存在しています。

つまり、自身の感情に敏感になればなるほど、自分の価値観を知ることに近づくということです。

つまり、自分にとってなにより重要なのは「自由」であることだと思ったときに、「自分は自由を尊ぶ価値観なのだ」と終わらせるのではなく、なぜ自分は自由を求めるのかと、その根拠となる経験やその時に感じた感情を思い起こしてみましょう。

すると、かつて職場の上司に型通りの仕事を強いられた経験があり、悔しい思いをしたといった感情を思い出すかもしれません。

こうした違和感や怒りに注目することが、自分の価値観を知るうえで重要になります。

適職に出会うためには、価値観との一致も重視したいポイントです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?