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人生初めての飛び込みと海亀〜八丈島旅行④〜

「ねぇ、お父ちゃん、お散歩行こうよ」
息子達からの提案がきたのは午前6時。
この日も変わらず我が家の朝はしっかり早い。妻だけは寝ている。

外に出る準備をして3人で静かに部屋から出た。ホテルのロビーから外に出ると、日差しは厳しいが日陰はひんやりしているし、爽やかな海風も吹くので過ごしやすい。
島の朝晩はしっかりと涼しくなるので、一昔前のメリハリのある夏のようで嬉しくなった。
ホテルの周りをひと回りした。熱帯地方独特の草花が至る所に咲いていて、異国感が漂っていて歩いているだけで楽しくなった。

ホテルに戻る頃には朝食会場が開く時間になっていた。妻を起こすために部屋に戻り、朝ごはんを食べに向かった。
今日もバイキングだが、微妙に内容が変わっていた。
亀の手という食べ物が味噌汁コーナーに置かれていた。甲殻類の一種らしいが見た目はまさに亀の手そのものだ。以前家の近くのスーパーで珍味として売られていたのを見たことはあったが食べたことはなかった。せっかくなので食べてみた。魚介類独特の旨みが詰まっていて美味しかった。

その日は子ども達が待ちに待っていた海に行く日だった。天気も文句なしの晴れ予報だった。朝食を終えるとすぐに出かける準備をして海遊びができる底土海水浴場へと向かった。

駐車場に着くと、いくつかの車がすでに停まっていた。島に旅行に行くといつも思うのだが、ミラーを畳んでいる車がほとんどいない。きっと駐車場が余裕ある広さのものが多いからだと勝手に思っている。八丈島も例に漏れずしっかりミラーが開いたままの車がほとんどだった。

海は沖縄に負けないくらいの綺麗な青色をしていた。太陽の光が入るとはっきりと海の中がクリアに見える。
早速子ども達と海に入って遊び始めた。ゴーグルをかけて潜ってみると鮮やかな色をした魚がすぐ近くを泳いでいた。箱眼鏡でも用意しておいて子ども達と見ればよかったと思ったが、海に入っているだけで楽しそうなのでそれはまたいつかの機会にとっておくことにしようと自分の中で納得した。

しばらくすると堤防から飛び込みを楽しむ子ども達の姿が目に入った。息子達もちょうど同じようなタイミングでそのことに気がついたらしく、

「お父ちゃん、あれ何やってるの?」

と長男が聞いてきた。説明してあげると

「大吾みたいなやつか!」

と言っていた。彼の中で飛び込みのイメージが千鳥の大吾になっていることに笑った。
しばらくその様子を見ていたので何気なく

「やってみたい?」

と聞いてみると

「お父ちゃんが先にやってみて!それ見てできるか考えてみる!」

そんなことを言われてしまったらやらずに終えることはできないではないか…
変なプレッシャーを感じながら海面をみる。意外と高さがある。
こうゆう時に妻が

「やめとけば?もう歳なんだから」

と気の利いたことを言ってくれれば良いのだが

「大吾飛びやるの!?やってみて!」

とむしろ焚き付けてくる始末だった。
大吾飛びってなんだよと思いながら意を決して防波堤のアスファルトから足を離した。
ほんの少しの浮遊感の後に生ぬるい海へ落ちていった。飛び込みの高揚感と海水温の気持ち良さが相まってすっきりした気分になった。これは楽しい。

「気持ち良くて楽しいよ!お父ちゃんが下で待ってるからやってみれば?」

と伝えると

「わかった!やってみる!」

と言って少しの間の後、意を決して長男が飛び込んできた。彼の人生初めての飛び込みだ。なかなか思い切りが良かった。

「どうだった?」

「楽しい!最高!」

と満面の笑みを浮かべていた。
その後は何回も一緒に飛び込みをした。妻は一度だけチャレンジするだけでやめていた。次男は

「また今度来た時にやろうかな」

やんわり拒否していて可愛かった。

お昼になったので近くに来ていたキッチンカーで軽く食事を食べた。
お腹が落ち着いて来たところで次の目的地に向かおうとすると、
「海亀がいる!」
という声が防波堤の方から聞こえて来た。
この海岸では運が良いと海亀が見れると聞いていたがまさに今近くに来ているらしい。
妻はちょうど着替えに行っていたので息子達と防波堤に向かった。

その声の主にどこにいたか聞いて教えてもらい、海面を3人で必死に探した。
すると茶色い影が海の中から上がって来た。海亀が息継ぎをする瞬間に立ち会えた。一瞬の出来事だったが、確かに野生の海亀を息子達と見ることができた。すぐ後に写真を撮ったが上手く写っていなかった。
でも3人の記憶にはしっかり焼きついたから良しとしよう。
妻は1人だけ見れなくて残念そうにしていた。

またいつか来た時は4人で見たいと強く思った。


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