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読書日記230【もういちど村上春樹にご用心】

内田樹うちだたつるさんの作品というか批評本。思想家としてすばらしい本をたくさん出版しているのだけど、村上春樹さんが好きで、批評というかファンとして書いている。いいのか?というくらい高い評価をしているので、他の批評家の本とは相違あいちがえる。


村上春樹さんの長編というのはビルドゥングスロマン(成長小説)という。簡単に表現すると。
1.主人公は普通の生活をしている。
2.不意に邪悪なもの(或いはこと)が主人公を襲う
3.邪悪なものを主人公の潜在的ポテンシャルで追い払う
4.世界は一定の安定を取り戻す

「羊をめぐる冒険」「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」「ねじまき鳥クロニクル」「1Q84」などがそれにあたるんだけど、その構造がしっかりしているためにディテールが細かく表現されている。と著者は村上春樹さんを評価する。


今は文庫本は絶版になってしまっているんですね……


良く書かれている。フィッツジェラルドの「グレートギャッツビー」をレイモンド・チャンドラーがリメイクして「ロング・グッドバイ」を書いた。それをリメイクして「羊をめぐる冒険」が書かれたらしい。確かに両方の作品を村上春樹さんは翻訳している。

著者は「風の歌を聴け」を読んだ時の世界観が谷崎潤一郎の「細雪」を読んだときに想像した芦屋の風景だったと思ったという。

どうもこの人の書く物には独別な関係があるのではないかという疑念はその次の『1973年のピンボール』でさらに強化された。この物語は「僕」とその友人が渋谷で起業した翻訳会社が舞台の一つになっている。そして、ご存じのように、私はこの小説の舞台になった同じ時代に、同じ渋谷で平川克己くんと翻訳会社を始めていた。そのときに学生時代の友達が集まって始めた翻訳会社なんて渋谷にはうちしかなかった。平川くんはその後あちこちで「あれは平川さんの会社がモデルなんでしょう?」と訊かれたそうである。

内田樹著「1Q84」読書中

それなら、モデルとしてその翻訳会社で働く著者を村上春樹は見ていたかもしれないなと思えてくる。


村上春樹さんと仲のよい柴田元幸さんとの対談の記されていて、その中で村上春樹は”hit the nerve"だという。

内田さんが提唱する村上春樹は「心の琴線に触れる」と書いているのを英語でとなるらしいのだけど、アメリカのポストモダンの文学に刺激を受けて、学生運動から勉学をあきらめさせられた時代の小説家である村上春樹さんを象徴する言葉であると対談の中で話している

学生運動があって、大学が閉鎖してまともに勉強ができなくなった時代。アメリカにもベトナム戦争からヒッピー風俗は流行り、カウンターカルチャーは世界中に拡まっていく。

大学生なのに学歴を象徴できなくなって世間に放り出され、その中で生活優先の生活が始まり、やっとゆとりができて文学を紡いだ村上春樹が世界中で売れたのはその閉鎖的な暗さの時代にあると、内田さんは対談の中で語っている。

なんかコロナ禍の今ににている。学校に通えなくて学力で劣勢を背負わないといけない「負の時代の人」から素晴らしい文学や普遍的な感動をよぶ文学が生まれてくるのかもしれないとふと思う。


話しが変わって、批評や書評って難しい。「読書日記」を書いてきてもう200冊を超えているのにまだ書き方はわからない。呼び方としても「読書感想文」「ブックレビュー」(レビューも多い)「書評」「批評」など色々呼び方もある。

映画みたいな時期があるものはレビューを書いてもらったり、今ならTikTokやYouTubeなどで宣伝をしてもらったりとかはあるけど、そういうのを宣伝に使っている感じは本だけにはない。

個人的に勝手にYouTubeなどの動画に投稿する人が増えているけど、出版社がというのはあまり聞かないしバズってもいない。本のレビューも勝手にアマゾンとかに載せているだけで個人的な投稿レベルである。

雑誌とかに書かれる本紹介とかは正直に雑誌を買って読む前提なので販売促進として機能していない。こんな商業文化って本や書籍しかない気がする。


本のレビューを自分で書いていて「いいね」をたくさんもらったものを自分で分析すると何点かでてくる。

  1. そもそもしっかりと文章が書けている

  2. 引用を使っている

  3. 本以外のことを書いている

となる。最初から説明していくと、文章としてしっかりと書けているなと思ったものは、正直にいいねが多い。あまり書き込めてなくても最初のうちは書いたものは公開していたのもあってそれは露骨にあらわれていた。

引用がうまく使えているときはそれだけで「いいね」が多い。感想文を書いてる人にはそれはそうかなと納得いく部分は多いと思う。

以外なのだけど、本以外の著者の出版された本の話や、それ以外のうんちくを書いているのも「いいね」が多い。

こういうことがわかってきても中々かけないでいる。

書くって不思議な部分があって調子が悪い時でも書いているといい文章がかけるときもある。頭がスッキリしていないほうが後で読んでみて面白く書けることなんかがすごく多い気もする。

とりあえず文章を読んでものを考える人はこの本を一読してもいいかも。(あんまりまとまっていないですいません)




 

 

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