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思い出の白龍園【京都】

一年前に撮った紅葉の写真が「この日の思い出」として、Googleフォトから届きました。撮影地は京都市北部の「白龍園」。水の守護神「貴船神社」、天狗伝説で有名な「鞍馬寺」の少し手前、二ノ瀬の安養寺山に広がる庭園です。

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白龍園を訪ねたのは昨年12月初旬。暖かな初冬の、お天気に恵まれた日でした。光に透けた紅葉と苔むした石段が美しく、この構図をもとに露出を変えて、何枚も写真を撮ったことを覚えています。

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白龍園が開かれたのは意外に新しく、昭和半ばとのこと。
パンフレットによると、この安養寺山は古来よりの霊域だった由。ただ、時の流れと共に山は荒れ果て、一時は竹藪が生い茂るばかりとなっていたそうです。
1962年(昭和37年)、京都のアパレル会社・青野株式会社がこの地を購入。安養寺山のいわれを知った創業者の故青野正一氏が山の整備を始め、ご祭神「白髭大神」と「八大龍王」(仏教を守護する八体の龍王)の祠をたててお祀りし、それが白龍園の始まりとなったそうです。

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パンフレットには当時の作庭作業の白黒写真も載っているのですが、つるはしやスコップを持った人たちが溝を掘り、人力で石を担ぎ、手作業で石垣を積み……高低差がある山の中ゆえのたいへんな作業を丁寧に行っていた様子がうかがえます。
燈籠や四阿山(あずまや)も設けられ、今は周囲の山並みを望める美しい庭園です。

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ここから先に、「白髭大神」と「八大龍王」の祠があります。紅葉の庭園の華やかさとは少し違う空気感です。

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清流沿いの参道を歩いてゆくと丹の橋があり、その橋を渡った先に祠が鎮まっていました。なぜかここだけ風が吹き渡り、高い枝からたくさんの散り葉が。ざわめく雑木森の底には、穏やかで静かな存在感。
直接カメラを向けるのは遠慮しました。

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自然の山の力なのか、白龍園の紅葉は生命力にあふれていました。つややかな幹に勢いのある枝がしゅんしゅん伸びています。
「さあ、これから余計なものを落として冬に備えるぞ!」
と、落葉樹の明るい宣言を感じます。

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庭園として整えられた場とは思えないくらい、木々は奔放。愛情をもってお世話されているからだろうな、と思いました。

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散紅葉の間から顔をのぞかせた、野の竜胆(りんどう)。短い丈も色褪せた花びらも、自然にあるものはとても美しいです。

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数年前まで白龍園は予約制で、1日100人という入園者数の枠がありました。1300円の入園料(2019年12月の金額です)が必要なこともあり、
「ちょっと敷居の高い場所だな~」
というのが、最初に白龍園を知った時の正直な気持ちでした。
でも、庭園から望んだ遠くの山並み、紅葉と空の鮮やかさ、りんどうの色、祠の空気感……今、写真を見直しながら記憶をたどれば、ここにしかない貴重な風景を見ることができたのだと、改めて感じています。訪ねて良かったと思える、大切な場所のひとつとなりそうです。

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白龍園の最寄り駅、叡山(えいざん)電鉄「二ノ瀬」は、小さな無人駅。駅から白龍園までは徒歩7分ほどでした。
向こうの山の先には貴船神社や鞍馬寺があります。

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「二ノ瀬」の駅舎の脇にも見事な紅葉。この日は京都で二人暮らしをしていた大学生の息子たちと三人で訪ねたのですが、この駅舎でおにぎりを食べてお昼ごはんとしたのも懐かしい思い出です。
コロナ禍が収まり、以前と同じように、何の心配もなく、また京都を訪ねられる日を願うばかりです。

白龍園の公式サイトによると、2020年の紅葉特別観覧は12月3日で終了しています。そして12月現在、土砂崩れの影響で、叡山電鉄が「二ノ瀬」駅の手前までしか運行していない様子。叡山電鉄ファンとしては応援するしかありません~!)

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