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南紀熊野 奇岩巡り⑥ 「神倉神社」

「那智駅」の次に向かったのは、新宮市の「神倉神社」。
「熊野速玉大社」の境外社で、源頼朝が寄進したと伝わる、500段を越える石段を上った先にある巨石「ゴトビキ岩」がご神体です。
ここからは縄文時代の祭祀跡が見つかっており、パワースポットとしても知られています。

私は三度目の参拝になるのですが、やはり石段はかなり手ごわく、ことに上り始めの傾斜の厳しさと、踏み石のばらばらな角度には難儀しました。
ひどい巻き爪に悩まされている次男は途中で断念し、一人で「熊野速玉大社」の方へ。何事も無理は禁物です。

そんな石段の途中、平坦な踊り場のような場所で一息ついていると、アザミの花にアサギマダラがやってきました。長距離移動をする旅の蝶で、花にとまったまま、繊細な模様の翅を開いたり閉じたりしています。
「アサギマダラが来ていますよ」
石段を通りかかった人に私たちが声をかけ、またその人が別の人に声をかけ……息を切らして上る幾人もの人に、アサギマダラは小さな福を分けてくれました。

アザミにとまるアサギマダラ

上り切った石段の先には澄んだ青空。そしてその下にずしりと横たわるゴトビキ岩。見上げていると、じんじん大気が震えているような感じが伝わってきます。

ゴトビキ、とはカエルのことだそうです。確かに、大きなカエルが坐っているよう。
この岩の奥から、縄文時代の祭祀跡が見つかったとのこと。

ゆっくりとお社に参拝し、祭祀跡の岩にも手を合わせ、手水鉢のところまで戻ってくると、またふわりふわりとアサギマダラが。漂うように私たちのまわりを飛んで、木々の向こうへと消えてゆきました。

手水鉢の下のサワガニ。
手水鉢の脇にはナンバンギセルが。
アサマリンドウ。昨日まではまだ咲いていなかったそうです。

手水鉢の足元にはサワガニの姿とナンバンギセルの花。斜面にはアサマリンドウも咲き始めていて、貴重な自然に恵まれた参拝となりました。


急な石段を、今度は用心深く下ってゆく途中、不意に「あきらめない」という言葉が心の中に浮かび、ふと、参拝をあきらめた次男のことを思いました。次男の巻き爪は何度も再発を繰り返し、本人も私たちも、無意識のうちに完治をあきらめているようなところがあります。
何だかそれを、もったいない、と神様に示されたような気がして、
「神倉神社の神様、どうか次男の巻き爪が治りますよう、よろしくお願いいたします。今度は家族四人そろって石段を上り、お社へお礼参りをさせていただきたいです」
下りの石段の危うさにどきどきしながらも、私は心の中で願掛けをしました。
いつか先の日に願いが叶い、今度は次男も一緒に、再び神倉神社に参拝できる日が楽しみです。

(~「花の窟(いわや)神社」へ続きます)


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