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2023年3月31日の日記

 23時をまわると、この狭いワンルームをにわかに焦燥感が襲う。くたびれたベッドの上、ブラウンの毛布が少し甘ったるくも感じるような春の始まり。1日に1篇だけ読み進めている短編集を閉じて机の上に置き、キッチンへ向かう。

 冷凍庫にはパックに半分ほど残されたカチカチの豚肉。このままでは使えないから電子レンジで解凍する。私の家はなぜか、電子レンジがついている間はWi-Fiが機能しない。何やら電波が干渉し合っているのだろうか。電子レンジには「あと6分」の表示。
 仕方がないから閉じたばかりの短編集をまた開く。さっき読み終えた1篇のストーリーがもう思い出せない。

 2,3行ほど目を滑らせたところで、冷蔵庫に他に何か食材があるか気にかかった。明日は金曜日、そして土曜日と日曜日は家を空けるから、ここらで冷蔵庫の在庫を調整しなければならない。また短編集に栞を挟んで、冷蔵庫を開けた。

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 職場と家の往復にだけはなるまいと、家にいる時間はなるべく自分をドラマチックに演出してみようとするが、所詮モブは第1話止まりなのである。早いもので、気づけばこの部屋にやってきて1年が経とうとしている。スピーカーから流れてくる音楽も、特に変わり映えがない。

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