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なんてたって春フェス【神戸SONO SONO 2024】



 街に待ちに待った春、なんてたって春。冬と春の切り替えがこれほどにうまくいったのは久しぶりではないか。そしてそれを待っていたかのように、春フェスが始まった。


はじめに

 最近の音楽フェスというのは、出演アーティスト陣に加えて「ロケーション」や「出店」の良さをも求められている気がする。まぁ大規模な音楽フェスをやれる場所なんて、必然的にだだっ広い自然の中とかになるから、ロケーション面については多くがクリアされているようにも感じる。
 各フェスに出店しているお店も、地域の祭りのテキヤみたいなものじゃなくて、有名なスパイスカレー屋さんの出張出店や、B級グルメのグランプリを制したような有名店、さらには新進気鋭のクラフトビールメーカーなど、より深みを増してきたように感じる。少なくとも、私が高校生の頃に行ったロックフェスにはこんなものはなかった気がする。
 食事だけでなく、たとえば古着屋や雑貨屋、変わり種でいうと似顔絵を描いてくれるサービスや、Tシャツのハンドメイドプリントなど多様性に富み、もしかしたらアーティストのライブよりも刺激的な体験ができるようになったかもしれない。

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 神戸市というと、この私の生まれた街。それはさておき、神戸のロケーションといえば国際港を擁する海洋と、その海岸線に迫る六甲山脈の、青と緑のコントラストが想起される。
 しかし見渡してみれば、広大な神戸市のうち海に面してるのは南部だけであり、中部から北部はわけいってもわけいっても山である。山ではあるが拓かれた地域も多く、メーカーの工場などが集積するテクノパークや、自然公園、ゴルフコースなども多く点在する。

 今回の神戸SONO SONOも、そんな山あいの自然公園で開催されたフェスだ。場所は神戸市北区大沢(おおぞう)にある、フルーツフラワーパーク。神戸市の幼稚園に通っていた私は幼い頃に一度行ったことがあるので、神戸市民なら名前くらいは知っていると思う。
 アクセスはそれほど良くなく、神戸市の中心駅であるJR三ノ宮駅からは、神戸電鉄線で有馬温泉の更に奥地、三田市(さんだ)あたりまで行かなければならない。ジロリアンの諸君、「みた」ではなく、「さんだ」だ。
 大阪から向かうことになった私は、大阪駅からJR宝塚線を北上していき、伊丹や宝塚を通って神戸市の最北三田市へ。ここからシャトルバスに揺られ件の公園を目指す。

 三田駅で降りて、郵便局にお金を下ろしに行っている間に会場直通のシャトルバスが1本行ってしまい、もう1本待つことに。三田は地元にいたころによくドライブで訪れていたが、電車で来るのは初めてかもしれない。

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会場に到着

入口

  フルーツフラワーパークに着いた。まるでヨーロッパのお城のような、立派な門と建物がお出迎え。隣接している遊園地からは黄色い声が響き、沿道に咲いている桜がその声に優しい色をつける。

タイムテーブル

【開演】

 あらためてタイムテーブルを見る。いやぁ、アツい。
 個人的に気になるのは幽体コミュニケーションズ、Summer Eye、浦上想起・バンド・ソサエティ、そしてKIRINJI。幸いにも今回のフェスはほとんど入れ替え制のようなスタイルなので、見たいアーティストががっつり被ることはなさそうだし、会場もそこまで大きくないので、演奏の間にご飯を買いに行ったり出店をまわることも出来るだろう。初めて見るアーティストも多い、ワクワク。

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 張り切ってはいたものの、開演時間には間に合わずトップバッターのグソクムズを見られなかった、すいません。到着したらちょうどLaura day romanceが始まるところだった。
 ここで初めてメインステージを眼前に捉え、改めてそのロケーションの良さに感動した。観覧席は広く余裕があり快適、演奏ステージの背後にはヨーロッパ風のホテルが建っており、アーティストがより映える構造。お日柄も良く風も穏やか、最高だ。

 Laura day romance(以下ローラ)は見るの2回目だと思う。去年の心斎橋で開催されたとあるフォーマンライブでローラのライブを初めて見た。ボーカルの井上花月さんのけだるい感じの歌い方が好きで、この日も腰に手を当てたりしながら彼女らしい歌い方をしていた。個人的にはSweet Vertigoという曲が好き。

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  空腹に耐えられそうになかったので、とりあえず飯を食うことに。出店店舗一覧を見ていて目に留まったのが、「ニューヤスダヤ」の文字。このお店は神戸にて営業しているスパイスカレー屋さんで、神戸にいたころに何度か行こうと試みたが行けなかったお店。まさかここでお目にかかれるとは。
 カレー、とても美味しかったです。

スパイスカレー

 さて、腹ごしらえをしてメインステージに戻ると、Homecomings(以下ホムカミ)のリハが始まっていた。快晴の空に心地よいギターの音が溶けていくようだった。
 ホムカミはつい最近、ドラムのメンバーの脱退が発表されたばかりで、この日は先ほど出演したローラのドラムの人がサポートで入っていた。私はホムカミにそこまで詳しくないのだが、ボーカル畳野さんの声に酔いしれながら、少し眠りそうになっていた。

 ホムカミが終演すると間髪入れず、横のサブステージのほうで奇妙礼太郎の演奏が始まった。ギター1本で弾き語り。ラフないで立ちでアコースティックギターをかき鳴らしながら伸び伸びと歌う彼の姿はとても良かった。お客さんとコール&レスポンスなどで交流しながら楽しんでいる感じが昼下がりの雰囲気にとても良い。

 名残惜しいが途中でステージを移動し、少し離れたところにあるモンキーステージに向かう。事前に配布されていた会場マップと若干表記が違い、ステージを探すのにちょっと苦労したがなんとか到着。私がずっと気になっていた幽体コミュニケーションズだ。去年の9月に行ったりんご音楽祭で見ることができなかったのでリベンジというワケ。
 会場は暗いステージで、明るいところから急に暗所に行ったので目が追い付かなかった。座ってゆったりと彼らのパフォーマンスを見る。ギター2本にキーボードの構成、ドラムやベースは打ち込みで鳴らしている。バンド名の意味がなんとなくわかるような、不思議な演奏だった。

【遊園地へ】

 幽体コミュニケーションズを見終えて、実体コミュニケーションをしたくなった私は、少し会場の外に行ってみることにした。このフェス会場の横には遊園地があり、これらすべて含めてフルーツフラワーパークとなっている。2会場の行き来は自由であり、ちょっとした気分転換にも良い。
 遊園地に行く。最近の遊園地にはないような、一昔前の雰囲気を感じる。俗な言葉で言うならレトロ感とでも言おうか、子供の頃よく行っていた遊園地を思い出し、少しノスタルジーな気持ちになった。小さな子たちがはしゃいでいるのを見るととても微笑ましい。

【後半戦】

 さて会場に戻る。
 お次は、先ほどの暗いステージでSummer Eyeを見る。Summer Eyeこと夏目知幸さんは、2020年に解散してしまったシャムキャッツというバンドの元ボーカル。私もシャムキャッツ時代のライブは何度か見たことがある。解散後は名義を変えてソロアーティストSummer Eyeとして活動をしている。
 
 Summer Eyeはバンド編成や弾き語りではなく、バックでトラックを流しながら歌うスタイル。会場に入った瞬間ほぼ満席でびっくりした。なんとか座れるところを見つけ、ライブを見た。
 20メートルケーブルのおかげで自由に動き回り、客席に立ったり踊ったり、かなりフリーダムなライブをしていた。運よく、私の真横にも来て下さり楽しい時間を過ごした。握手もしてもらった。私は「失敗」という曲が好きで、軽快なダンスチューンに会場は大いに揺れて盛り上がった。

 さて、興奮冷めやらぬままメインステージに戻る。行ってみると、トータス松本の演奏真っ最中だった。いわずと知れたウルフルズのメインボーカル。今回は単身弾き語りでの出演。MCを聞いていて思い出したが、彼は兵庫県の西脇というところの出身。神戸には大型のフェスがあまりないので、故郷のこんなロケーションのいいところで歌えるのはとても気持ちいいだろうなと思った。
 途中からの参加だったが、ラスト1曲は名曲「バンザイ」。まさか生でバンザイが聴けるとは思わず感極まった。

 時刻は17時、日が少し傾き始めた。サブステージでは浦上想起・バンド・ソサエティの演奏が始まった。今回一番見てみたかったアーティストだ。
 曲自体は聴いていたが、生で見るのは初めて。ステージにはサングラスをかけた男性が4人、ボーカルの浦上想起自身は白いコートのようなものを着ていてなんか医者みたいというか実験者みたいというか、彼の楽曲「芸術と治療」という曲にあるように、どこかエクスペリメンタルな世界に引き込まれるようだった。
 実験的で近代的で、芸術的で写実的、なんかそんなワードが脳内に溢れるがうまくまとまらない。美術館の誰もいない回廊を歩いている気分になる。浦上想起という名の美術館。私の好きな「新映画天国」という曲を聴けて良かった。

 またメインステージへ。お次はBialystocks(ビアリストックス)。私はほとんど聴いたことがなかったので、とても楽しみにしていた。
 なるほどこういう感じかと聴いていると、ベースを弾いているサポートメンバーの方が、元カラスは真っ白のオチ・ザ・ファンクさんだと気づいた。Twitterを調べると確かBialystocksのサポートをやっているようだった。私はカラスは真っ白の大ファンだったので、まさかここで演奏を聴けるとは思わずほっこり。サンセットに映えるライブだった。

 いよいよサブステージのトリ、Yogee New Wavesの角館健悟さん。現在ヨギーはメンバーが2人となり、バンドとしての活動は少なくなっているので、角館さんのソロ活動が増えている。名曲Climax NightやSISSOUを聴けて嬉しかった上白石萌音に提供した「光のあと」をセルフカバーしてくれたのだが、私がずっと聴きたいと思っているのが、角館さんが私立恵比寿中学に提供した「さよならばいばいまたあした」という曲。これのセルフカバーをいつか聴きたい、角館さんよろしくお願いします。

【大トリ】

撮影OKでした

 いよいよKIRINJIの出番。現在のKIRINJIは、堀込兄弟の弟が抜けて兄高樹のソロプロジェクトとなっている。そのときどきでバンド編成時のメンバーは流動的だ。この日は、コーラス&キーボードにオダトモミを初め、シンリズムや千ヶ崎学さんなど、そうそうたるメンツで迎え撃ってきた。
 KIRINJIのすげぇ~って思うところが、この人たちにしか表現できない世界をこの人たちにしか思いつけない言葉選びで作り出していること。そして音数の多さも相まって、浮遊感ある近未来的でシティな世界観を体現している。まるでKIRINJIという街みたい。とにかくすごかった。

 春フェス1発目、良い感じでした。これから暖かくなって、先々のフェスの予定が楽しみになってきた。今年もよろしくお願いします。



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