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春にはみんなサクラサケ。

 昨日の昼下がりに車を運転していたら中学生の集団が歩いているのを見かけた。

 その顔つきがなんとも晴れ晴れしておりとても楽し気な雰囲気だったので何かいいことがあったのかなと思ってその場は通り過ぎた。

 それから何気なく地元のラジオを聞きながら移動していると今日は県内の公立高校の受験日ですねという話をしていた。
 
 ははぁ、なるほどさっき見た学生さんは受験終わりの帰宅道だったんだなと思うとさぞかし緊張した一日だったのだろうなと思った。

 思えば私が高校受験をしたのははるか昔の事である。

 これでも小学生の頃はそれなりに勉強が出来ていたので親からも将来を期待されていた。

 私自身も自分は賢いんだという思いがあったが中学校に入学して最初の中間テストで数学で三点という衝撃の数字を叩き出して自惚れは木っ端みじんに砕かれた。

 何だかそのテストで心が挫けてしまい勉強に対する熱意を失ったまま時間だけが過ぎていった。

 やがて中三になり受験という初めての選抜試験がリアルの迫ってきてからもさっぱり成績の上がらない私に業を煮やした父の一言で塾に放り込まれた。

 それまでろくに復習もしてこなかったので一年生から覚えなおさなければならず大変効率が悪かった。

 春に入塾して春期講習、夏期講習、受験合宿、秋季講習、冬期講習、直前合宿と学校以外であれほど勉強に追いまくられたのは人生で初だった。

 その効果があってか私の学力はカタツムリが這うペースでゆるゆると上昇していった。

 今思えば普通の塾の月謝に期間講習の授業料など親にはかなりの金銭的な負担をかけてしまった。

 あの頃は毎日の勉強が苦痛な気持ちが先に立ってそんな事を考えもしなかったが何ともありがたい話である。
 
 私の地元だと公立高校の方が私立高校に比べると学力が上で私立はあくまで公立に不合格だった場合の滑り止めだった。

 先に私立高校の受験があり、一年間みっちり勉強した私には拍子抜けするほど問題が簡単だった。

 帰宅して自己採点をしてみると余裕で受かるなと思ってほんの少し気持ちに余裕が出たものである。

 それから一か月していよいよ本命の公立高校の受験に臨んだ。
 
 その日は三月にしてはとても寒い日で窓際に座った私は隙間風に震えながら必死で試験問題を解いた。

 あっという間に五教科のテストが終わった時はもうこれでしばらく勉強しないでいいんだと思って開放感に浸ったものである。
 
 それから一週間後に合格発表があった。

 ドキドキしながら自分の受験番号を見つけたときは心底ホッとした。

 まだ携帯電話の無い時代だったので学校の受付にある公衆電話から母に電話した時の高揚感は忘れられない。

  合格後の春休みは開放感に浸り遊びまくった。

 そんな浮かれ気分で高校に入学してからまた勉強に苦しめられるのだがそれはまたいずれ語りたい。

 昨日中学生を見て、ああ何だか青春だなぁと思って懐かしい気持ちになったので中学時代に好きだった母の手料理を再現することにした。

 そうと決まればまずは買い物に行きつけのスーパーにGO。

 あれこれと食材を買い込んで帰宅。

 家に帰ってから早速料理に取り掛かる。

 豚肉の脂身を筋切りして少し薄くなるまで包丁の背で叩く。

 ちょっと強めに塩コショウをして小麦粉をまぶしてよく溶いた卵にくぐらせる。

 後は目の粗いパン粉をしっかりつけて熱した油でじっくり揚げる。

 こんがり揚がったらキッチンペーパーの上でしっかり油を切る。
 
 付け合わせは春キャベツの千切り。

 副菜は冷凍してあるポテトサラダを耐熱容器に入れてチーズをたっぷりかけてトースターで焦げる直前までよく焼いて仕上げにパセリを散らす。

 後はスーパーで買った菜の花のお浸しを添えて晩御飯の完成。

 さぁて熱いうちに食べるぞーと居間に運んで妻と一緒にいただきます。

 口開けのお酒はやっぱりビール。

 いつも飲んでいる安定の銘柄のプルタブをピッシュと起こしてグラスに注ぐ。

 妻はレモンサワーを作っていたので二人で乾杯。
 
 キュキュキューッと飲むと喉の奥からヨロコビがやってくる。

 ううん、たまらんと思いつつまずは焼きポテサラを食べる。

 アツアツのこんがり焼けたチーズが香ばしくて温まったポテサラの味が広がる。

 母が良く作っていたリメイク料理だがちょうどいいおつまみになる。

 ちょこちょことつまんで二本目のビールを開ける。

 ぐびぐびと飲みながらメインのトンカツにターゲットを絞る。
 
 マヨネーズとケチャップを混ぜ合わせた即席オーロラソースをたっぷりつけて頬張ると衣のザクザクと豚肉のジューシーな脂のコンビネーションにイチコロである。

 このソースは子どもの頃から実家でトンカツを食べる時の定番で母のアイデアだった。

 ずいぶん久しぶりに食べてみたがやはり舌に馴染んだ味というのは安心感がある。

 妻も美味しいねぇと言いながらパクパクとトンカツを食べていた。

 食事の時のトークテーマはお互いの受験事情について。

 いやだぁ、あれから何十年も経ったんだぁと言っておセンチになっている妻の目じりのしわが愛おしかった。

 二人でお腹いっぱいになるまで食べてご馳走様。

 片づけをしながらやっぱり試験にはカツだよなと改めて思った。

 いやはや、久しぶりの揚げ物で身も心も大満足。

 受験生の皆様お疲れ様でした。

 

 

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