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締め切りは守らんにゃあ

 早いもので八月も今日で終わり。

 台風が近づいている影響か空模様はイマイチである。

 よくある話だが夏休みの宿題に追われている子どもも多い事かと思う。

 私も全力で遊び惚ける少年時代を過ごしたので宿題はギリギリまで手を付けなかった。

 一応毎朝十時までの学習時間は取っていたのだが、その時間には鉛筆を細く削ったり消しゴムのカスを集めて紙にコースを描いてゴルフごっこをしたりしていたのでちっとも捗らなかった。

 そんな日々を過ごしていてお盆が過ぎる頃になるとじんわりと焦りを感じるようになる。

 しかしまだ二週間もあるという油断からか熱心に机にかじりつくことは無かった。

 本気でマズいと思い出すのは休みの残りが三日位になったあたりでさすがに気持ちに余裕がなくなってくる。

 ドリルは膨大な量があり簡単には片付かなかったし夏休みの宿題はそれ以外にもたくさん出ているので大ピンチだった。

 読書感想文はあとがきだけ読んでほぼそのまま写してでっちあげていた。

 自由研究は父や祖父の助けを借りてほぼ丸投げでお願いしていた。

 手先の器用な祖父と凝り性の父にかかると小学生の技量をはるかに越えた工作などを作ってくれるのでありがたいけどもうちょい子どもらしい仕上がりにしてほしいなと贅沢な事を考えていた。

 後は絵を描くという物もあったのでリンゴやバナナといった果物をテーマにザザザッと速度命で仕上げたものである。

 どうにもこうにも間に合わない時は開き直って素直に先生にまだ全部やっていませんと謝った。

 宿題を未提出の子どもは早く出すように急かされた。

 私も下校するとすぐに残りの宿題にヒィヒィ言いながら取り組んだ。

 ああ、こんな事なら来年こそは前倒しで片づけるぞと思うのだが残念ながらその誓いが守られることは無かった。

 そんな夏休みの宿題に追われている時はご飯を食べる時間も惜しかったので母におにぎりを握ってもらってそれを食べながらペンを走らせた。

 おにぎりの具は梅干しと鮭というスタンダードな物だったが普段あまり食べる機会が無いので新鮮な気持ちで口にする事が出来た。

 母は勉強は苦手だったので手伝ってくれることは無かったが色々な面でサポートしてくれた。

 毎回宿題をしていなくて焦る私に苛立つ父を説得して手伝ってくれるようにお願いしてくれるのも母の重要な役目だった。

 そんな事を思い出しながら今日はおにぎりを握ろうと思い立った。

 私は手先があまり器用ではないので三角に結んだつもりが丸くなってしまう。

 具材は買いに行くのが面倒なので梅と昆布にする。

 まずは何はともあれご飯を炊いていく。

 その間におかずをちょいちょいと作る。

 紫蘇を巻き込んだ卵焼きとブロッコリーのサラダを拵えた。

 そのうちにご飯が炊けるので熱々を握って真ん中に梅を詰めて海苔で巻いたら一丁上がり。

 梅は種を取っておくほうが食べやすい。

 昆布は佃煮なので満遍なくおにぎりで包むことを意識して握る。

 これも海苔を巻くだけで完成。

 汁物が欲しいので赤だしを作った。

 さぁて出来たぞと言いながら居間にご飯を運ぶ。

 おにぎりはやっぱり丸くなってしまったがなぁに大した問題ではない。

 頂きますをしておにぎりをモグッと噛むと海苔の風味と塩味のシンプルな味わいが広がる。

 具に辿り着くまでの素朴なお米の味がたまらない。

 もう一口噛むとようやく梅に到達する。

 梅のすっぱい味が甘みのあるお米とスイングして抜群のコンビネーションである。

 梅おにぎりを食べたら次はおかずに手を付ける。

 紫蘇入りの卵焼きは爽やかな後味が魅力的である。

 ブロッコリーはレンジでチンをして胡麻ドレッシングをかけただけだがこれまた食べやすくてなかなかいい仕事をしている。

 合間に赤だしをズッと啜って再びおにぎりに戻る。

 お次は昆布のおにぎり。

 満遍なく包んだのでハムッとかじると佃煮の甘じょっぱい味が口中に広がる。

 おう、これこれと馴染みのある味わいに思わず膝を叩きたくなる。

 今日はおにぎりご飯だったのでお酒はお休み。

 熱いほうじ茶を淹れてふうふうしながら飲んだ。

 たまにはこんなシンプルな晩ご飯があっても良いなと思った。

 さぁて明日から九月、どんな美味しいものが待っているかな。

 本日もごちそう様でした。

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