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ルールメイカーでもない限り

事業とお金の悩みは表裏一体である。
思ったほど稼げなければ資金繰りを気にするし、思いのほか稼いでしまったら税金の負担を気にする。経営は利益を出すために行っているのに、利益が出ることも出せないことも悩みの種となる。

個人的には、法人で利益が出るような素晴らしい経営をしているならば、人件費としての還元以外には過度な節税などせず税金を納め、残りを剰余金としてためていけばよいと思っている。上場企業ではそうはいかないかもしれないが、閉じた企業では純資産が厚い分には不利な扱いを受けることはない。

税金を納めることには抵抗があるかもしれない。それは、何に使われるかわからないのに利益の一部をキャッシュで納めねばならないからだろう。
税金を納めるくらいなら余ったお金で車や不動産でも買って利益を圧縮した方がよいと思うのは、対価や満足感としてわかりやすいからというのは納得ができる(なお、固定資産の費用化には数年かかることは言うまでもない)。

それでも税理士の皆様は、顧客から「税金が高い」「手当や給付金にまで課税されるなんておかしい」などと、税制やその他制度の弱点を文句としてぶつけられたり、限りなく黒に近いものを白っぽく見せようとする屁理屈に付き合わされたりしたことがあるのではないだろうか。
私は一度や二度ではなくある。
そのたびに、どう反応することが正解か思い悩む。
お客様を差し置いて税務当局や政治家の肩をもつことなどしてはいない。前述のように過度な節税をするくらいならというのはあくまで私見で、お客様がしたいと思うことには知恵を工夫して実現できるよう経営者の味方でいるつもりである。
ただし、制度は制度として今の私に変える力がない。その状況において、必死で稼いだお金に税金がかかることに抵抗があり、そしてそれに対して文句をわざわざ税理士に対して言いたくなるという気持ちに寄り添えないことが心苦しいと思っている。
リスクを負って事業を行っていることの見返りとして、メリットだって認められているはずだ。そこに目を向けず、デメリットや負担ばかりに声を荒げるような経営者とはいずれ付き合えなくなるかもしれない。

自分の、税理士としての器の狭さにもあきれてしまう。

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