20190813_note_カバー

オンラインサロン「シンガポール入門」一部紹介

弊社、シンガポールの会計事務所CPAコンシェルジュオンラインサロンを始めて、先月で丸3年が経ちました。

当サロンのそもそものコンセプトは、「タイムリーに、実務家が正しい実務情報を皆様にお届けする。」というシンプルなものです。

インターネットビッグバンにより私たちは凄まじい量の情報を入手できるようになりましたが、そういった情報は、制度改正により古くなった情報や一部の結果のみに基づく誤った全体情報、それから、伝言ゲームにより歪んで伝わった噂話、ポジショントークによる偏った情報を大量に含んだままインターネットの海に漂っています。さらに悪いことには、インターネットを探してもどれが正しい最新情報かを読者が判断することは実質的に不可能で、専門家である会計事務所や法律事務所が出版する「シンガポール進出本」ですら、出版され、読者が手に取った時には情報が古くなっていることもありますし、情報をアップデートして改訂版を出版するためには膨大な時間がかかるので、「基本的に古い情報しか読者の手元に届かない」というのが現状といえます。

先日Googleが、新しい情報を優先的に表示する、というアルゴリズムの変更を発表したようですが、「常に最新の実務情報を届ける」というのは、実は我々のような士業サービスの使命なのではないかと思うわけです。当時、シナプスという会社(その後、DMMに買収されて2019年2月にDMMサロンに統合されてサービス終了したようです)が立ち上げた、オンラインサロンという、いかにも怪しげなサービス名称ではありましたが、調べてみたところ、これは使える!と思い、興奮してすぐに開設申し込みをしたのが当サロン「シンガポール入門」の始まりです。

3年前に始めてから何度かサービスの建付けを変えて今の姿に落ち着いていますが、当時、海のものとも山のものとも分からない中、有料にもかかわらず参加してくださった皆様のため、「ルール変更の場合でも既存会員には絶対に不利にならないようにする」ということだけを肝に命じて3年間続けてきました。

とまあ、こんな想いの乗せてひっそりと3年間続けてきたオンラインサロンですが、最近、クラウド会計ソフトXeroのコミュニティサイトや、子会社で別モデルのサービスを展開したり、シンガポール和僑会の会長を拝命したりと、まあ色々とワクワクする活動を手掛ける中、「オンラインサロンってどういうことやってるんですか?」というお問合わせを(特に既存の本業のお客様から)いただくことが増えてきましたので、いくつかサンプルを公開しておきたいと思い、初めてnoteを書いております。

今後、もっとプロジェクトものもやっていきたいと思いますが、過去にオンラインサロンでお届けている情報は、シンガポールの生活面(不動産事情や病院、住み込みメイドや生活費、教育実情、運転免許証の取り方、電気代を安くする業者変更などなど)をさらっとで、メインはビジネス関連です。例えばシンガポールの個人所得税の概要や、日本とシンガポールの税務上の居住性の違い、シンガポール法人の年間スケジュールやビザの話、それからもちろん法人税や会計制度、典型的な国際税務論点や政府の電子申告アカウント、給与計算や労務、法人の設立や閉鎖に関する話、シンガポールで脱サラ起業するステップや、私のお気に入りのワイン屋の決算書分析、などなど、といった感じです。

今回、一つだけではありますがサンプル記事をご紹介しておきます。現在すでに制度自体廃止されたPICという制度についてちょうど1年前の2018年7月にサロン内で配信したものですので、今は使えない情報ですのでお気を付けください。

以下、2018年7月にサロンで掲載したものです

【PIC】

~前略~

さて、引き続き法人税についていくつか見ていきます。

今回のタイトル「PIC」、ご存じの方もいらっしゃるかとは思いますが、もうすでに廃止されているこの制度、あえてまだ取り上げようかと思います。その理由は、
 
「廃止されたといっても、過去、期限内に発生したPIC対象の費用はまだ使えるから」

です。タイミングといいますか、会社の決算日によってどこまでの期間の費用に対して使えるかが違いますので、具体的に説明しますと、YA2018までの費用が対象ですから、3月決算の会社なら2017年3月31日まで、12月決算の会社なら2017年12月31日までのパソコン購入や研修費用などが対象になります。

また、400%損金算入も40%キャッシュバックも、どちらもYA2018としてはまだ生きています。つまり、上記の期限前に発生したPIC対象の費用について、400%損金算入を選択するのであればこの2018年11月に申告期限がくる法人税申告で、40%キャッシュバックを選択するなら2018年11月末までに申請すればまだ使えます。
 
ご自身で法人税申告やPIC申請などされている方はあまりいらっしゃらず関係ないかもしれませんが、会計事務所からあがってきた法人税申告にPICが記載されている場合はそういうことですし、資金がギリギリ苦しい場合に過去に40%キャッシュバックの対象になるものあったの忘れてた、みたいなのがあれば、埋蔵金として使えるかもしれませんので、そんな方のために補足まで。
 
PICという制度について、ご存じない方のため、下記に簡単に概要を記載しておきます。

PIC(ピーアイシー)とは、正式にはProductivity and Innovation Credit Schemeといいます。シンガポールは国土が狭いので、いかに少ない人口で効率よく経済を回すかが永遠の課題です。少子高齢化は進み国民だけでは人口が先細りではあるものの、外国人へのビザはこの国にとってウェルカムな人間、端的に言うと所得の高い外国人と低所得の肉体労働者ぐらいにしか出しません。ですので、レストランや美容院など、シンガポール人がやりたくない業種は恒常的に人手不足になっており経営者とシンガポール政府を悩ませています。
 
そういった「人手不足だけど外国人は受け入れさせない、かといってシンガポール人もやりたくない。」という状況を打破するための政策がPIC(といっても過言ではない)です。要するに
 
「人手がかからずに稼げるような体制づくりにお金を使ったら政府が補助金をくれる。」
 
これがPICです。
 
内容は下記の二つ。
①払った金額の4倍を法人税計算で損金にできる
②払った金額の40%を政府がキャッシュをくれる
 
というものです。①か②の選択になります。①はつまり、儲かっている会社の法人税が浮きます。英語ではEnhanced Deductionとか言いますが私は400%損金算入と呼んでます。
 
②は直接的に政府がお金をくれるもので、会社が儲かってなくてもくれます。英語ではCash Payout(頻出単語。テストに出ます)と言い、私は40%キャッシュバックと呼んだりしてます。
 
上記①②は選択式なので、ではどちらが得かというと、法人税率17%だとすれば①の方がかなりお得(2016年8月改正後)になります。ただし、そもそも法人税17%を払っている企業は30万ドル超の利益が出ている企業だけですし、税金が少なくなるという効果は2年後とか3年後にやってきて遅い(②は結構早く補助金くれます)ので、②の方を選ぶ会社も多いです(特に赤字の会社は)。ただし、②には条件があります(①はほぼ無し)。
 
簡単にいうと、
 
「シンガポール人か永住権保持者を3人、3か月連続で雇っていること」
 
これが40%キャッシュバックの条件です。

ここまでをちょっとまとめてみますと、シンガポール人を3人雇っている場合、「人手がかからずに稼げるような体制づくり」にお金を使ったら政府が4割の補助金をくれる。ということになりますね。
 
では、「人手がかからずに稼げるような体制づくり」とは何か。
6つのカテゴリに分かれています。
 
A) 社員研修(一人の人間の生産性が上がる)
B) IT・自動化設備(労働力が不要になったり生産性が上がったり)
C) 知財(無形の権利保有により世界中から権利使用料を取る)
D) 知財の登録費用(同上)
E) 研究開発(新たに付加価値の高いものを創造する)
F) デザインプロジェクト(デザインという無形の付加価値)

 
上記6つのうち、ほぼ全ての会社に日常的に関係があるのはA)とB)かと思います。
 
A)は、外部の専門家や機関が提供する研修費用はほぼ全て(とはいえ内容による)対象となりますが、会社内部で行う研修については、監督機関認可の研修プログラムなどの一定の研修(の人件費や施設利用料など)に限定されます。
 
こちら参照→Training Expenditure that Qualifies for PIC
 
B)は、パソコンの購入代金や、ウェブサイトの初期制作費用、プリンターや業務用のソフトウエアなどの日常的なものから、例えば(ここからは予想ですが自信あり)トリQの自動ヤキトリ焼き機や、イケイケ丸のテーブルにある注文タブレット、マクドナルドの入り口にあるオーダーメイドハンバーガー注文機や、自動販売機、フェアプライスのセルフレジあたりも対象になると思われます。
 
こちら参照→Overview of PIC IT and Automation Equipment
 
以上、ざっと要点のみですが、一番シンプルな例としては「パソコン買ったら政府が4割の補助金をくれる。ただしシンガポール人を3人雇っていないといけない。」ということになります。これは活用せざるを得ませんね(≧▽≦)
 
申請の上限金額や3か月連続雇用の判定、中小企業特例など、細かくは他にもいろいろとありますので上記は概要だけということでご理解ください。また、シンガポール人を3人雇用しているように見せかけた40%キャッシュバックの不正受給などに関しては重い罰則(最大で不正受給の4倍の罰金に加えて5万ドルの罰金と5年間の懲役)がありますのでお気をつけあれ。
 
繰り返しですが、決算日によって今から適用できるものとそうでないものと分かれますので要注意です。


PICの説明資料こちら

ーー以上、引用終わりーーー

とまあ、こんな感じで、週に2回ほどの頻度でシンガポール関連の情報を配信したり、飲み会をやったりしているのがオンラインサロン「シンガポール入門 最新実務編(オンライン)」であります。


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