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【2023年】阪神タイガースまとめ

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2023年に行われたタイガースの試合について書いたnoteをまとめます。選手ひとりを取り上げることが多いです。あなたのお気に入りの選手から読んで、ほかに気になったnoteがあった… もっと読む
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7年前、大山悠輔がドラフト指名された直後の僕へ【12/31 試合なし】

……おーい。 …………おーい、聞こえてるかーい? 君だよ君。ドラフト会議の中継を見ている7年前の僕。ちょっと言いたいことがあってね。少し先の未来からやってきたよ。 そっか、いま1巡目の指名が全部終わったんだ。それで田中正義が福岡ソフトバンクホークス、佐々木千隼は千葉ロッテマリーンズに決まったかー。くじ引きも盛り上がったね。まあ僕のいる2023年の冬にはもう2人とも別のチームに移籍しちゃってるんだけどね。 問題はそこじゃないって?まあ、そうだよね。タイガースが指名した選手、

馬場皐輔はタイガースの最終防波堤だった【12/8 試合なし】

去年と同じ午後5時。各メディアから現役ドラフトで指名された選手と移籍先がこぞって発表される。何の前触れもなく選手がひとりチームを去るこの瞬間には、当面慣れそうにない。 馬場皐輔が読売ジャイアンツに移籍した。 日本一を祝したパレードにも、後日行われたファンフェスタにも参加していた馬場が、来年は違うチームのユニフォームを着る。もうタイガースの選手ではなくなる。 困った。馬場がどんな活躍をしたか思い出したいのだが、「ここぞ」というシチュエーションが出てこない。プロ3年目の202

僕たちが青柳晃洋をエースと呼ぶ理由【11/5 対バファローズ戦○ 日本一】

7戦目までもつれた日本シリーズの先発に青柳晃洋が抜擢されると決まったとき、「やっぱりこのチームは超変革と共にある運命なのだな」と思った。 当時の金本知憲監督がタイガースを再建するために掲げたスローガンが「超変革」。金本監督が就任して初めて関与したドラフトが2015年だった。この年ドラフト5位で指名されたのが青柳である。ちなみに今日バッテリーを組んだ坂本誠志郎もこの年のドラフト2位で指名された。 制球に課題はあれど、強い球を投げられる青柳に金本監督は可能性を見いだした。荒削

人として かっこよく生きていたい 阪神タイガースが好きだから【11/4 対バファローズ戦●】

バファローズの山本由伸に抑え込まれ、これで3勝3敗になった。どうやら今年もまた、この曲に勇気をもらうことになりそうだ。 SUPER BEAVERの「人として」。昨年から近本光司の登場曲に採用された。今年は各打席で登場曲を変えるようになったけれど、おなじみC&Kの「ドラマ」とこの「人として」は今シーズンも継続して使われている。 そうなんだよ 信じ続けるしかないじゃないか 愛し続けるしかないじゃないか 近本はつらそう感じや悔しそうな顔をめったに見せないし、どちらかというと飄々

史上最高のコト起こし 糸原健斗【11/2 対バファローズ戦○】

11月1日に行われた日本シリーズ第4戦、まだ湯浅京己の名前が呼ばれる前の回だ。打順の兼ね合いで佐藤輝がベンチに下がる中、背番号33が急ぎ目でキャッチボールをしているのが見えた。7回表の途中、ボール回しを終えた糸原健斗が阪神甲子園球場のグラウンドに現れた。最後に守備に就いたのがいつだったか思い出せないくらい、シーズン中では見なかった光景だ。 テレビ中継で観戦していた友人から聞いて後から知ったのだが、佐藤輝明がベンチに下がるシーンはCMの放送中で映っていなかったらしい。 8回表

熱き投球が甲子園の全てを変えた【11/1 対バファローズ戦○】

野球の試合で"流れ"は確かに存在する。甲子園球場でこの日の試合を見た人なら共感してくれるはず。 僕は確かにこの目で見たのだ。試合の流れが大きく動いた瞬間を。 「ピッチャー、湯浅」の名前がコールされた瞬間、驚きと歓声が球場を包んだ。あのとき確かに、試合の雰囲気はタイガースに傾いた。湯浅の名前が呼ばれただけで、球場の雰囲気が一変したのだ。 8回の守り、島本浩也が1アウト2,3塁のピンチを抑えた。実戦では久々の守備機会だったはずの糸原健斗が難なくゴロをさばいた。 2アウトとなっ

【日本シリーズ初めて見る人向け】阪神タイガースの選手紹介:野手編

2023年は野球好きにとって楽しいニュースが多い1年でした。侍ジャパンのWBC世界一奪還。二刀流・大谷翔平のさらなる進化。普段はプロ野球を見ない人でもテレビ番組や動画配信などで野球を楽しんた人も多かったのではないでしょうか。 さて、今日から日本シリーズが始まります。2023年の日本シリーズはオリックス・バファローズと阪神タイガースが対戦します。バファローズは大阪府、タイガースは兵庫県のチーム。関西地区の盛り上がりもすごいことでしょう。 僕は幼い頃からのタイガースファンです

村上頌樹のストーリーが始まった場所【10/28 対バファローズ戦○】

生まれて初めて日本シリーズを見に行った。ドーム前千代崎駅の改札を出てエスカレーターを上がると、すでにたくさんのお客さんがいた。まだ試合開始まで1時間半近くあったのに、京セラドーム大阪の周囲は人混みを避けながら歩かないと進めないくらい混雑している。 外周の壁に「SMBC日本シリーズ」とある。相手はペナントレース3連覇のオリックス・バファローズだ。もうすぐしたら今年の日本で1番強いプロ野球チームを決める戦いがはじまる。これから始まる試合のことを想像したら緊張してきて、少しえずき

坂本誠志郎が主役になった日【10/20 対カープ戦○ CS突破】

打球が鋭く三遊間を抜けていった瞬間、このクライマックスシリーズの主役が坂本誠志郎であることを確信した。 4回裏の攻撃、S.ノイジーのタイムリーヒットで同点に追いついた直後だ。カープの先発・床田寛樹が立ち直る隙を与えない初球打ち。おそらく内角の直球を狙っていた。読み通りの球が来て確実に仕留めた。1塁に走り出しながら「やってやったぞ!」と言わんばかりにベンチを指差した。 試合は中盤に同点になるも、坂本が2本目のタイムリーを放って再び勝ち越した。2度目の勝ち越し打に、ベンチと観客の

お前が決めろ!指差す先に込めた思い【10/19 対カープ戦○】

すべては大山悠輔のツーベースから始まった。 長打になるか微妙な当たりだったけれど、いつも全力で走る大山なら必ず2塁まで行けると思った。膠着していた試合が一転、サヨナラ勝ちのチャンスに変わる。 佐藤輝明は打ち取られ、S.ノイジーは勝負を避けられた。2アウト1,2塁で7番の坂本誠志郎が打席に入る。甲子園球場の声援がますます大きくなる。 ピッチャーはカープのクローザー・栗林良吏。初球はインコース低めに外れた。2球目も高めに外れる。坂本の表情は変わらない。外低めに投じられた3球

坂本誠志郎が秘める熱さと、常に備える冷静さと【10/18 対カープ戦○】

"普通"にやれた試合で、あの場面の坂本誠志郎だけが"普通ではなかった"。 5回の裏、1アウトから坂本誠志郎が死球で出塁する。カウント2ボール2ストライクからの5球目。打ちにいこうとした坂本の右腕にボールが直撃した。坂本は一塁に向かって少し歩いてから、手に持っていたバットを強く放った。打席でこんな感じの振る舞いをする坂本を僕はほとんど見たことがなかったから、少し驚いた。 メディアのニュースでは「温厚な坂本が怒りをあらわにした」みたいな風に書かれていた。けれど、坂本が温厚かと

いちばんじゃないといや【10/4 対スワローズ戦●】

タイガースで毎年恒例となったゴールデンウィークのこどもまつり。スコアボードの名前がひらがな表記になるほか、選手の子ども時代にまつわるエピソードが紹介される。今年のテーマは子どもの頃の口癖だ。「パパ、ママ」や「キャッチボールしよう」のような微笑ましい言葉にほっこりさせられたが、ひとつだけ印象に残る口癖があった。 「いちばんじゃないといや」。 タイトルにも使ったこの口癖は、中野拓夢が幼少期に発していた言葉だ。本人はあくまで昔の口癖として取り上げたつもりなのだろう。だがこの言葉

生で見た門別啓人はスゴかった【9/30 対カープ戦●】

何気なく取ったチケットだったのに、ものすごいことになってしまった。 予告先発:門別啓人 優勝が決まった後の試合とはいえ、昨年のドラフトで入団した高卒1年目の投手が先発する。しかも、その日の試合のチケットを持っている。彼の能力からして今後素晴らしい投手になることは間違いないが、プロ初先発は後にも先にも1回しかない。1軍の舞台で第一歩を踏み出す瞬間を目の当たりにできる。こんなのワクワクしないはずがない。 北海道出身の門別啓人は東海大札幌高からドラフト2位指名されたサウスポー

佐藤輝明はもう立派な先輩になっていた【9/29 対ベイスターズ戦●】

チャンスで空振り三振に倒れた森下翔太がタオルで顔を覆っている。顔を上げると目が充血して真っ赤に腫れていた。泣くのを必死に抑えようとしているのが伝わった。抑えたくても止まらない、自分でコントロールできなくなってしまっているようだった。 J.ミエセス、近本光司、中野拓夢の3連打で作った無死満塁の大チャンス。1点でも入れば同点となる場面で森下に打順が回ってきた。初球のボール球を空振りし、ストライクゾーンの球には手が出ない。良かったときの打席の内容とは程遠かった。5回、タイガー