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熱き投球が甲子園の全てを変えた【11/1 対バファローズ戦○】

野球の試合で"流れ"は確かに存在する。甲子園球場でこの日の試合を見た人なら共感してくれるはず。
僕は確かにこの目で見たのだ。試合の流れが大きく動いた瞬間を。

「ピッチャー、湯浅」の名前がコールされた瞬間、驚きと歓声が球場を包んだ。あのとき確かに、試合の雰囲気はタイガースに傾いた。湯浅の名前が呼ばれただけで、球場の雰囲気が一変したのだ。

8回の守り、島本浩也が1アウト2,3塁のピンチを抑えた。実戦では久々の守備機会だったはずの糸原健斗が難なくゴロをさばいた。
2アウトとなったところでマウンドに選手が集まる。次は右の中川圭太。おそらく投手交代だろう。2アウトになったとはいえ、大ピンチなことには変わりない。ヒット1本が出れば勝ち越しだ。

僕が座った1塁側のアルプス席からは、ブルペンの様子をのぞこうとしているお客さんの様子がよく見えた。右打者のところで投手交代なら加治屋蓮だろう。ただ、島本が出てきたときよりブルペンをのぞいている人が多い。様子がおかしい。ピッチャーが加治屋ならここまでざわつかないはず。

てことは。まさかそんな。
甲子園で久しぶりに湯浅京己の名前が呼ばれた。

湯浅の名前が呼ばれて投球練習が終わるまで、ものすごく長く感じた。
それはまるで、湯浅が甲子園に流れる時間を支配しているようだった。湯浅が両手でボールをニギニギとこねて、右手を高々と上げる。投球前に行ういつもの動作だ。今年はもう見られないかもしれないと思っていた。

決着はすぐについた。中川圭が湯浅の初球を打ち上げ、内野フライに倒れた。セカンドの中野拓夢が捕球体勢に入ったのを見て、湯浅は力強く拳を握った。
湯浅が軽やかな足取りでベンチに帰っていく。甲子園は湯浅コールがこだました。

6回も7回も8回も、バファローズの先頭打者が出塁した。試合の終盤は守っている時間が長くて、常にピンチを迎えているような気持ちだった。
でも湯浅の名前が呼ばれて、彼が乗っているリリーフカーが現れたとき、明らかに声援の質が変わった。
この雰囲気の変化は、きっとテレビ越しでは感じられなかっただろう。今までたくさんの試合を見てきたけど、そのどれにも当てはまらない異様な雰囲気だった。
きっとファンの思いと湯浅の気持ちが1つになって、この雰囲気を作り出したのだろう。

おかえり、湯浅。

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