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村上頌樹のストーリーが始まった場所【10/28 対バファローズ戦○】

生まれて初めて日本シリーズを見に行った。ドーム前千代崎駅の改札を出てエスカレーターを上がると、すでにたくさんのお客さんがいた。まだ試合開始まで1時間半近くあったのに、京セラドーム大阪の周囲は人混みを避けながら歩かないと進めないくらい混雑している。

外周の壁に「SMBC日本シリーズ」とある。相手はペナントレース3連覇のオリックス・バファローズだ。もうすぐしたら今年の日本で1番強いプロ野球チームを決める戦いがはじまる。これから始まる試合のことを想像したら緊張してきて、少しえずきそうになってしまった。

先発の村上頌樹が投げているときにスコアボードを見ると、今シーズンの成績が表示されている。

防御率1.75
10勝6敗1ホールド

1つのホールド。たった1つだけ記録されたこのホールドは、村上が開幕ローテーションに入っていなかった証拠だ。
4月1日。村上はリリーフとしてマウンドに上がった。先発の秋山拓巳がベイスターズ打線に打ち込まれ、乱打戦の最中に村上が投入された。村上は先頭の桑原将志に2ベースヒットを打たれピンチを背負うも、後続を抑えて0点に抑えた。最後のアウトはストレートで見逃し三振を奪った。

そして、この試合は京セラドーム大阪で行われた。その後の先発にまわった村上の大活躍は、多くの野球ファンの知る通りだ。
だから、今年の村上のストーリーはこの京セラドームから始まったのだ。

日本一の投手・山本由伸と投げあって勝ち投手になった。
この日の村上のすごさを言い表すには、この一文で十分だと思った。

スコアボードの球速表示を見るたびに絶望する速さのストレート。見逃し三振を奪われて立ち尽くすタイガースの選手たち。投球に呼応して盛り上がりが増してきた観客席。そんな山本の投球と互角に渡り合った。山本が打者を圧倒している一方で、村上もまたバファローズ打線を圧倒していた。味方が試合を動かすまで耐えた。昨シーズンまで2軍暮らし、今年になってようやくプロ初勝利したピッチャーが、日本で最高の投手と投げ合い、勝った。

「いい球を投げていると報告はあったけど、1軍に来るとどうしても本来の実力が出せなくなったんですよね」
昨年までタイガースの投手コーチをしていた金村暁はオープン戦で村上のことをこんな風に解説していた。

もうおそるおそる投げていた村上はいない。5回のピンチを抑えて声を上げた村上を目の当たりにして、僕は確信した。

見たか。これがウチの”エース”だ。

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