合同会社Uluru(ウルル) 山田勝己

合同会社Uluruの代表:山田勝己と申します。愛知県名古屋市が本拠地ですが、これまで東…

合同会社Uluru(ウルル) 山田勝己

合同会社Uluruの代表:山田勝己と申します。愛知県名古屋市が本拠地ですが、これまで東は埼玉、西は大阪まで呼んでいただき、児童虐待など子どもの人権問題、地雷被害の問題、海洋プラスチックなどSDGs関連をテーマに、人権教育・国際理解教育のファシリテーターをさせていただいております。

最近の記事

ウルトラマンから考える その1

 私がこの世に生を受けた1966年は「ウルトラQ」のテレビ放映が始まった年だった。「ウルトラQ」のあと、「ウルトラマン」のシリーズが今も続いている。  「ウルトラマン」の第1話「ウルトラ作戦第1号」の冒頭、小型ビートル機でパトロール中だった科学特捜隊のハヤタ隊員は、怪光を発する青い球と赤い球を発見し追跡するうち誤って赤い球と衝突する。その衝撃で死んだ筈のハヤタ隊員は不思議な赤い空間の中で「M78星雲の宇宙人」と名乗る存在と会い、「私の命を君にあげよう」と告げられ、2人は一心

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    • 「子育て」が「罰」の国:日本 その2

       日本社会で「子育て罰」が出現してきた背景は何だろうか。1960年代以降、子育てにおける「自己責任」が強調され、親が子どもの教育費を負担するのは当たり前とする見方が形成され、「親負担ル-ル」ができあがった。さらに、よい子に育てなければならないといった「理想の子どもイデオロギ-」によって親(特に母親)を追い詰めてきた。「子どものため」と頑張りすぎてしまう親たちの努力に、社会も政治もタダ乗りして「子育て罰」を強いてきた。「子育て罰」社会では子どもに対する投資や消費が「ノルマ」と捉

      • 「子育て」が「罰」の国:日本 その1

         「日本はなぜ親子に冷たい社会になってしまったのか」、「親子にあたたかい日本に変えていくためにどうしたらよいか」であり、それを「子育て罰」というキー概念を軸に論じている。では、「子育て罰」はどういう意味か。「子育てをすること自体に罰を与えるかのような、社会の厳しい冷たさ」という偏った考え方を感じる。「子育て」という人間の育ちに関わる行為、親が子を育てるといった、まさに「育児」「養育」「教育」という営みにも関わる人間の基本的な行為が、現在の日本社会において「罰」になってしまって

        • 伏すこと久しきは、飛ぶこと必ず高し(『菜根譚』より)

           妻から「菜根譚って知ってる?」と質問された。聴いたことはあるが、中国かどこかの言葉だったかなぁくらいにしか思い出せずにいた。妻のLINEに次のようなメッセージが届いていた。 「伏すこと久しきは、飛ぶこと必ず高し。これは『菜根譚』の中の言葉です。長い間うずくまって、力を蓄えていた鳥は、いったん飛び立てば、 必ず天高く舞い上がる、という意味です。」  『菜根譚』は、前集222条、後集135条からなる中国明代末期のものであり、主として前集は人の交わりを説き、後集では自然と閑居の

        ウルトラマンから考える その1

          アボリジニとウルル その2

           22年ほど前のことになるだろうか。当時勤務していた高校でホームステイプログラムを立ち上げることになり、単身オーストラリアのサンシャインコースト大学を訪ね、初回と2回目の引率教員も経験させていただいた。生徒向けのプログラムの中に、アボリジニの方によるブーメラン体験があった。その際、オーストラリアの先住民であるアボリジニについての事前学習が必要だと感じ、帰国後『裸足の1500マイル』という映画に出逢った。それ以降、ホームステイプログラムに参加する生徒たちには必ず事前に見せてから

          アボリジニとウルル その2

          アボリジニとウルル その1

           オーストラリアはイギリス人入植者が中心となって形成された近代国家だが、イギリス人が入植するはるか前から「アボリジニ(Aborigine)」が住んでいた。  オーストラリアがニューギニア島と陸続きだった時期に、アジアから入ってきたと想定されている。考古学的研究によると、アボリジニの起源は4万年前とも5万年前ともいわれている。白人入植当時の人口は約30万人〜100万人(決定的な判断は困難)で、500ほどの言語グループに分かれていた。  親族を基盤とした集団を形成し、狩猟採集

          アボリジニとウルル その1

          普通ってなんだろう? 人権ってなんだろう?

           徳島の人権教育が素晴らしい。徳島県立人権教育啓発推進センター「あいぽーと徳島」では、未来を担う子どもたちが「人権」と向き合い、自分なりに考えるきっかけをつくるため、様々な人権教育を行っている。その活動の一環として、徳島では「人権に関する児童生徒の作品」を毎年県内の児童生徒から募集している。いくつか読ませていただいたが、レベルがすごい。その中でも、高校1年生の女子生徒が書いた文章は圧巻だった。  人権を取り巻く状況は、同和問題や学校での悪質ないじめなど、従来の人権課題に加え

          普通ってなんだろう? 人権ってなんだろう?

          外国人が絶賛した日本の子育て~わたしはこれほどこどもをかわいがる人々を見たことがない~ その2

           「私は、これほど自分の子どもをかわいがる人々を見たことがない。子どもを抱いたり、背負ったり、歩くときには手をとり、子どもの遊戯をじっと見ていたり、参加したり、いつも新しい玩具をくれてやり、遠足や祭りに連れて行き、子どもがいないといつもつまらなそうである。」(高梨健吉訳『日本奥地紀行』)  次の言葉もイザベラ・バードによる。  「父も母も、自分の子に誇りをもっている。見て非常におもしろいのは、毎朝六時ごろ、十二人か十四人の男たちが低い塀の下に集まって腰を下ろしているが、みな

          外国人が絶賛した日本の子育て~わたしはこれほどこどもをかわいがる人々を見たことがない~ その2

          外国人が絶賛した日本の子育て~わたしはこれほど子どもをかわいがる人々を見たことがない~ その1

           イザベラ・バードという名前をどこかで聞いたことがあるだろうか。今から140年も前の1880年に『日本奥地紀行』という本を出版したイギリス人女性である。子どもの頃は病弱でほとんど家から出ずに暮らしていたのだが、ある時医師から「転地療養をしなさい」と勧められた。そこで、20代半ばから旅を始めたのだ。  イザベラが実際に旅を始めてみたら、未知の世界への関心が生まれ、まずアメリカとカナダを旅し、41歳の時にはオーストラリアにも行っている。現代と違って海外へ出かけるには長時間かけて

          外国人が絶賛した日本の子育て~わたしはこれほど子どもをかわいがる人々を見たことがない~ その1

          人権教育は「人」育てる土台

           部落差別の解約をめざし各地で盛んだった「同和教育」が、「人権教育」に姿を変えている。SNSによる誹謝中傷や、新型コロナウイルス感染者への嫌がらせなど、人権侵害の形や種類が多様化したからだろう。ジェンダーや不平等など「持続可能な開発目標(SDGS)」の視点からも克服すべき課題が多くある。今回は3年ほど前のコロナウイルスの蔓延をきっかけに徳島県の小学校や高校で取り組まれてきた人権教育について書いてみる。  徳島県ではないある都道府県の自治体の教員意識調査で、人権学習を進める際

          人権教育は「人」育てる土台

          「木を植える」 イオンのサステナビリティ活動がすごい!

           私が担当している「人と自然環境」という授業で、イオンのサステナビリティ活動を題材にさせていただいた。イオンにはこれまでも個人的な買い物でお世話になってきたのだが、イオンがかなり丁寧で現実的なサステナビリティ活動がこんなにしっかりしているとは知らなかった。ぜひ多くの皆様に知っていただきたく、記事にすることにした。きっかけは4月27日(土)の朝日新聞でイオンの広告に目が留まったからだ。  私の大好きな谷川俊太郎さんがイオンの活動に対して「木を植える」というタイトルの詩を贈ってい

          「木を植える」 イオンのサステナビリティ活動がすごい!

          世界で一番古い動物園はロンドン、日本では上野

           動物園の起源は古代エジプトをはじめとする各国の王侯貴族の娯楽や権利の象徴として個人庭園で動物をコレクションしていたことだそうだ。一般市民にも開かれた最古の動物園は、オーストリアのシェーンブルン動物園で、初めは王侯貴族の娯楽だったが、1765年に市民に公開されるようになった。また、フランス革命後のパリ動物園も一般公開の始まりだといわれている。  王侯貴族のコレクションを起源に持たない近代動物園の一歩目は、1828年に開設したイギリスのロンドン動物園だった。世界各地から動物を

          世界で一番古い動物園はロンドン、日本では上野

          食品ロス・食品廃棄がもたらす地球沸騰化

           国連環境計画(UNEP)は「食品廃棄指標報告2024年版」を発表し、世界で1日10億食以上が廃棄されている一方で、およそ8億人が飢えに苦しんでいると指摘した。それによると、2022年に世界で廃棄された食品は10億5千万トン。家庭や飲食店、小売店などで食品の約5分の1が廃棄されている計算になる。加えて、世界の食品の13%は農場から食卓へ行く途中で廃棄される。合計すると食品の約3分の1が製造過程で捨てられている。  対照的に、世界の人口のおよそ3分の1は食料不安に直面し、7億

          食品ロス・食品廃棄がもたらす地球沸騰化

          名古屋を海外へ導いた渋澤栄一

           日本の資本主義の父とされ、新一万円札に肖像が採用された実業家渋澤栄一(1840一1931)。その渋澤が明治末期に団長を務めた民間の米国視察団「渡米実業団」について、名古屋から参加した伊藤祐民(のちの松坂屋初代社長、1878-1940)の回顧録が見つかったそうだ。過密日程の中で、先進国アメリカから懸命に学ぼうとした伊藤祐民青年の姿がにじむ。  まずは伊藤祐民の先祖について説明する。  1611(慶長16)年、 伊藤家初代祐道が清須越しにて、清須より名古屋本町へ移住。織田家の

          名古屋を海外へ導いた渋澤栄一

          GW西尾フィールドワーク② 西尾城と大給松平家

           西尾市の岩瀬文庫で開催されていた「船頭重吉の484日漂流ギネス記録パネル展」を見学した後、初めて西尾城を訪ねてみた。西尾城を幕末に治めていたのが、大給松平家だ。ちなみに松平家は18もあり、大給松平家は、徳川家康の高祖父松平長親の弟である松平乗元が初代となる。三河国加茂郡大給(現在の愛知県豊田市)を領したことから大給松平家と称する。以下の文章は、西尾市資料館の企画展「大給松平のお殿様と転封」というパンフレットを参考に書かせていただいた。  永禄7(1564)年、4代親乗が長

          GW西尾フィールドワーク② 西尾城と大給松平家

          GW西尾フィールドワーク① 世界最長漂流ギネス記録:小栗重吉

           4月に佐久島へのフィールドワークに出掛けた際、江戸末期に重吉という船頭が遭難に遭い、その漂流期間記録がギネスに認定されたと知った。重吉は佐久島の百姓善三郎の次男として生まれ、尾張半田村百姓庄兵衛の養子となった。29歳のときに廻船督乗丸の沖船頭として乗組員13名とともに師崎から江戸へ航行し、その帰路に伊豆子浦沖で暴風雨に会い、約17ヶ月間、太平洋を漂流した。イギリス船フォレスター号に救助され、アラスカ、カムチャッカを経て5年後に帰国を果たしたが、この間に船員は次々と亡くなり、

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          GW西尾フィールドワーク① 世界最長漂流ギネス記録:小栗…