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番外編:サミュエルの誕生日
麗らかな春の陽光は、日増しに眩さを増していた。太陽の熱に浮かされた草花の香りが、風に乗って窓から優しい香りを運んでくる。
サミュエルは、午後の鍛錬を終えると、一人自室に戻っていた。非番とはいえ、鍛錬を欠かしては、ルシアの近衛としてお話にならない。いつ何時、彼女の身に何が起こるかわからないのだ。
サミュエルは、窓辺の鉢植えに水をやろうとして、ふと、机に置かれた見知らぬ封筒の存在に気がついた。
番外編:ルシアの誕生日
日が落ちて、夏の熱気は、幾分か和らいでいた。仄かな熱を残した月のない夜は、雲ひとつなく澄み渡っている。
ランプの明かりで煌々と照らされた部屋の中は、オレンジ色の光で溢れていた。慌ただしさから離れて、辺りは、水を打ったように静まり返っている。
ルシアは、煌びやかなドレスを脱いで、白いナイトドレスに着替えると、窓辺に設えられたソファーに、ゆったりと身体を預けた。
心地良さを通り越した疲労
020_貴方の為のセレナーデ
澄み渡る蒼穹が、眩い夏の日を彩っていた、湧きあがる入道雲の向こう側で、晩夏の陽光は、地面に影を落としている。
夏の盛りを過ぎた王宮の裏庭には、心地よい風が吹いていた。
草花の薫香は、夏の熱気で、ふわりと立ち上っている。
木陰に設えられたティーテーブルに着いたルシアは、緑の香りを深く吸い込んだ。
まだ、彼女は、これから起こることを知らない。
ルシアに気取られないように、サミュエ